広告配信、クラウド、ソフトウェア。海外の会社に払うサービス料は、いまや多くの会社の経費です。「海外だから消費税はかからないよね?」「リバースチャージって聞いたけど、何それ?」。そんな疑問に答えます。
先に結論:申告が必要なのは、ごく一部の会社だけ
- 国外の事業者から受ける事業者向けの電気通信利用役務(ネット経由のクラウド、ソフトウェア、広告配信など)は、特定課税仕入れとされ、受けた側の国内事業者に納税義務が生じます。この仕組みをリバースチャージ方式といいます。
- ただし当分の間、次の課税期間は、特定課税仕入れが「なかったもの」とされます。
- 一般課税で、課税売上割合が95%以上の課税期間
- 簡易課税が適用される課税期間
- つまり、リバースチャージの申告が必要なのは、一般課税で、課税売上割合が95%未満の事業者に限られます。
「なかったもの」とされる場合は、申告も不要な代わりに、その分の仕入税額控除もできません。
課税売上割合って、なに?
ざっくり言うと、売上のうち、消費税がかかる売上が何割かという数字です。商品を売る、サービスを提供する会社なら、ほぼ100%に近くなります。住宅の家賃や受取利息など、消費税がかからない売上が多いと下がります。
- 課税される売上9,800万円、消費税がかからない売上200万円 → 98%(95%以上)
- 課税される売上900万円、消費税がかからない売上200万円 → 約82%(95%未満)
ふつうに商売をしている小さな会社は、ほとんど95%以上です。
- 1自社が「一般課税」か「簡易課税」か、免税事業者かを確認する(消費税の申告書を見る)
- 2一般課税なら、課税売上割合が95%以上かを確認する
- 395%未満なら、海外サービス代を特定課税仕入れとして申告に入れる
- 4迷ったら、使っている海外サービスの一覧を顧問税理士に渡す
- 一般課税で、課税売上割合が95%未満
- 海外のサービスを事業者向けに利用している
- 一般課税で、課税売上割合が95%以上
- 簡易課税を選んでいる
海外の会社の請求書に、日本の消費税が書かれている場合など、ケースによって扱いが違うことがあります。サービスごとに、どちらの扱いになるかを、税理士さんと確認しておくと安心です。
まず、請求書の「請求元」を確認する
同じサービスでも、請求元が日本の会社か海外の会社かで、扱いが変わることがあります。
- 請求元が日本法人で、請求書に日本の消費税が書かれている:ふつうの国内の仕入れと同じ扱いが基本です。
- 請求元が海外の会社で、日本の消費税が書かれていない:この記事で説明している、リバースチャージの話に関わるかもしれません。
- 海外の会社でも、日本のインボイスの登録番号が書かれている:国内の取引と同じように、仕入れとして扱えることがあります。
請求書は、1枚ずつ、請求元と税の記載を見るのが近道です。「海外サービス=全部同じ」とは限りません。
よくあるサービスの例
広告配信、クラウドサービス、ソフトウェアの月額利用料、オンライン会議ツール、ドメインやサーバーの利用料など、ネット経由で提供される事業者向けのサービスが、主な対象です。ただし、請求元によって扱いが違うので、サービス名だけで判断しないようにしましょう。
なお、モノを海外から輸入する場合は、通関のときに輸入消費税がかかる、別の話です。
課税売上割合が下がりやすい会社
家賃収入や利息など、消費税がかからない売上が大きい会社は、課税売上割合が95%を下回りやすくなります。たとえば、不動産の賃貸が中心の会社や、貸付けが大きい会社です。ふつうの商売をしている小さな会社は、ほとんど95%以上ですが、副業的に不動産の収入がある場合は、一度計算して確認しておきましょう。
よくある質問
Q. 免税事業者でも、申告が必要?
A. 免税事業者は、消費税の申告そのものが原則ありません。リバースチャージの対象にもなりません。
Q. 毎年、判定が変わることはある?
A. あります。課税売上割合は、課税期間ごとに計算するので、売上の内容が変わった年は、確認し直しましょう。
Q. 迷ったら、どこに相談する?
A. 顧問税理士か、税務署の相談窓口です。請求書を見せながら聞くと、話が早く進みます。
ミニ事例:課税売上割合を、実際に計算してみる
課税売上割合は、「課税売上 ÷(課税売上+非課税売上)」で出します(輸出などの免税売上は課税売上側に含めます)。例を2つ見てみましょう(金額は例です)。海外に売ったときの消費税は、輸出免税の記事で解説しています。
- A社:課税売上800万円、非課税売上400万円。800÷(800+400)=約66.7%。95%未満なので、リバースチャージの対象になりうる。
- B社:課税売上950万円、非課税売上30万円。950÷(950+30)=約96.9%。95%以上なので、当分の間、リバースチャージの申告は不要。
非課税売上には、たとえば預金の利息や、土地の譲渡、住宅の家賃などがあります。事業の売上のほとんどが課税売上の会社は、95%以上になりやすいです。
海外サービスの一覧を、決算前に1回つくる
海外のサービスは、気づかないうちに増えがちです。決算前に、次の項目で一覧にしておくと、確認が一度で済みます。海外販路の支援先の選び方は、コミッターズのコラム「海外販路開拓の支援先比較」で比べています。
- サービス名(広告、クラウド、ツールなど)
- 月額(または年額)
- 請求元は、海外の会社か、日本の会社か
- 事業者向けか、消費者向けか(請求書の表記で確認)
一覧にしておけば、顧問の税理士さんに見せるだけで、「これは対象、これは対象外」と仕分けてもらえます。自分で全部判断しようとしないのが、いちばんらくなやり方です。
まとめ:まず「自社の方式」を知る
海外サービス代の消費税は、自社が一般課税か簡易課税か、課税売上割合がどのくらいかで決まります。大半の小さな会社は「当分の間、何もしなくていい」側ですが、この「当分の間」の取扱いは、制度の見直しで変わる可能性があるので、定期的に確認しましょう。
※一般的な解説です。個別のケースは顧問税理士などの専門家にご相談ください。