デザイナーさん、ライターさん、カメラマンさん。個人の方に仕事をお願いするとき、「じゃあ5万円でよろしく」と、口頭やチャットの一言で済ませていませんか。
2024年11月から、いわゆるフリーランス法が施行され、仕事の条件を、きちんと文字で伝えることが求められるようになりました。大きな会社だけの話ではなく、小さな会社が個人に仕事を頼むときにも関わります。今日は、その最初の一歩だけを説明します。
先に結論:条件は「メールでOK」、でも必ず文字で
- 従業員を使わない個人や、一人社長の会社に業務を委託するとき、仕事の内容・報酬の額・支払期日などの条件を明示することが求められます。
- 明示の方法は、書面でも、メールやメッセージなど(電磁的な方法)でもOKです。契約書をしっかり作らなくても、メールで足ります。
- さらに、従業員を雇っている会社などが発注する場合は、報酬の支払期日(受け取った日から60日以内)や、報酬の不当な減額などの禁止行為のルールも関わってきます。
以下は、ざっくりしたイメージです。細かい要件は、公正取引委員会・厚生労働省の資料で確認してください。
メールに何を書く? ライターさんに5万円で頼む場合
- 仕事の内容:「商品紹介記事(3,000字)1本の執筆」
- 納期:「10月31日まで」
- 報酬:「5万円(税別)」。税込か税別かも書いておく
- 支払期日:「納品を受け取った月の翌月末」
- 支払方法:「銀行振込」
このくらいなら、メールの5行で終わります。大事なのは、相手に何をいつまでにお願いして、いくら、いつ払うのかが、あとから見て誰でもわかることです。
- 1依頼のメールに、仕事の内容・納期・報酬を書く
- 2支払期日と支払方法を書く
- 3相手の返信(OK)をとっておく
- 4変更があったら、また文字で残す
支払期日の「60日」ってなに?
報酬は、仕事の成果物を受け取った日から60日以内の、できるだけ短い期間で支払う、というルールがあります(従業員を使う会社などが発注する場合)。「月末締め翌月末払い」なら、おおむね収まる形です。ただし日付の数え方は「受け取った日」からなので、締め日がずれる場合は確認しましょう。
- 仕事の内容と範囲
- 納期
- 報酬の額(税込か税別か)
- 支払期日と方法
- 修正の回数や範囲
- 「ちょっと直して」の無限修正
- 報酬の追加・減額の口約束
- 支払いの時期があいまい
- 納品物の使い方の範囲
契約書をいきなり整えるのは大変です。まずは、仕事を頼むときのメールの型(テンプレート)を1つ作って、毎回コピーして使うだけで、トラブルがぐっと減ります。
明示する項目の一覧
メールに書く項目は、おおまかに次のとおりです。国の資料(公正取引委員会・厚生労働省)に沿った、ざっくりした整理です。
- 発注する側と、お願いされる側の名前
- 仕事をお願いした日
- 仕事の内容(何を納めてもらうか)
- 納める期日と、納める場所
- 検査をする場合は、その期日
- 報酬の額と、支払期日
- 現金以外で払う場合は、その方法
先ほどの「5行メール」に、名前・依頼日・納品場所を足すと、ほとんどの項目をカバーできます。細かい要件は、最新の資料で確認してください。個人に払うときの源泉徴収は、デザイン料の例の記事で解説しています。
従業員を使う会社が気をつける「禁止行為」
一定期間以上の仕事を頼む場合は、次のような行為が禁止されています。うっかりやってしまいがちなものを、日常の場面で並べてみます。
- 受領拒否:納品されたのに「やっぱりいらない」と、受け取らない。
- 報酬の減額:理由なく「予算が厳しいから」と、あとから減らす。
- 返品:受け取ったあとに、理由なく返す。
- 買いたたき:相場より著しく低い報酬に決める。
- やり直しの強要:発注内容にないやり直しを、無償でさせる。
ほかにも、購入や利用の強制などがあります。「頼んだ側が強いから許される」わけではない、ということを覚えておきましょう。
よくある質問
Q. 相手が法人(会社)でも対象?
A. 相手が、従業員を使わない一人社長の会社などなら、対象になることがあります。従業員を雇っている会社が相手の場合は、別のルールの話になります。
Q. LINEなどのチャットで、条件を送ってもいい?
A. 相手が受け取れて、あとから見返せる形で残るなら、電磁的な方法としてOKとされています。大切なのは、あとから確認できることです。
Q. すでに契約書がある場合は?
A. 契約書に、上の項目が足りているか確認しましょう。足りない項目は、メールなどで補えば大丈夫です。
メールのひな形:コピペして、空欄を埋めるだけ
条件の明示は、メールで構いません。次のような形をテンプレにしておくと、毎回ゼロから書かずに済みます。
- 件名:【ご依頼内容の確認】○○の制作について
- 依頼内容:バナー画像3点の制作(サイズ・用途は別紙のとおり)
- 納品物と納期:PNGデータを、○月○日までに
- 報酬:30,000円(税別)
- 支払期日:納品を受け取った日から60日以内の、○月○日
- 支払方法:銀行振込(振込手数料をどちらが負担するかも書く)
最後に「内容に相違があれば、ご連絡ください」と一言添えると、お互いの確認になります。
途中で条件が変わったら、変更もメールで残す
やり取りの途中で、「ページ数を増やしたい」「納期を1週間延ばしたい」など、条件が変わることもよくあります。そのときは、口頭やチャットで済ませずに、変わった点だけを短いメールで送っておきましょう。「追加分:バナー1点、報酬5,000円増、納期は変更なし」のように、変更点だけ書けば十分です。あとから「言った・言わない」にならず、報酬の支払いもスムーズになります。「業務委託」でも労働者と見られる場合があります。くわしくは労働者かどうかの記事で。
まとめ:条件の明示は、お互いを守るもの
フリーランス法は「発注する側を縛るもの」というより、「頼む側も受ける側も、あとで困らないための決まり」です。次に個人の方へ依頼するとき、メールに5行だけ、条件を書いてみてください。
※一般的な解説です。個別のケースは顧問税理士などの専門家にご相談ください。