「社員のランチ代、会社で少し出してあげたいな」。小さな会社の社長なら、一度は考えますよね。もちろん社長自身の昼ごはんも、ここには入ります。
この食事補助、ルールを守れば給与扱いにならず、税金がかからない制度があります。しかも、令和8年4月1日以後の食事から、その上限が月3,500円から月7,500円に引き上げられました。ところが「渡し方」を間違えると、ぜんぶ課税。今日は、そこを笑いながら押さえます。
先に結論:2つの条件を、両方満たすこと
- 本人が、食事の価額の半分以上を負担していること。
- 会社の負担額(食事の価額から本人負担を引いた額)が、月7,500円以下(消費税を除く)であること。
どちらか1つでも欠けると、会社が負担した額の全額が給与として課税されます。「7,500円を超えた分だけ課税」ではないところが、地味に怖いポイントです。
数字で見てみる:お弁当1食、いくらなら大丈夫?
お弁当を会社が購入して、月20日分を支給するとします。
- ケースA:1食700円(税抜)。月20食で14,000円。本人が半分の7,000円を負担すると、会社負担は7,000円。7,500円以下なのでセーフです。
- ケースB:1食1,000円(税抜)。月20食で20,000円。本人が半分の10,000円を負担すると、会社負担は10,000円。7,500円を超えるので、10,000円の全額が給与扱いです。
- ケースB’:同じ1,000円のお弁当でも、本人が12,500円(約63%)を負担すれば、会社負担は7,500円ちょうど。これはセーフ。
つまり、「会社が出す額」を月7,500円に収めるのが、最大のコツです。
- 1食事の価額を、消費税を除いた金額で出す
- 2本人負担が半分以上かどうかを確認する
- 3会社の負担額が月7,500円以下かどうかを確認する
- 4両方OKなら、給与にせず食事補助として処理する
「現金で渡す」と、台無しになる
ここが最大の落とし穴です。食事そのものを渡さず、現金で「食事手当」を出すと、原則として全額が給与課税になります。「ランチ代として月5,000円を給与に上乗せ」は、残念ながらただの給与です。
ちなみに、深夜勤務の人に夜食を出せないとき、現金で補助する場合は1食650円(税抜)以下なら課税されない、という例外もあります。ただし、あくまで例外です。
- お弁当を会社が購入して支給する
- 社員食堂や仕出しを利用する
- 本人が半分以上を負担している
- 会社負担が月7,500円以下
- 現金で食事手当を渡す
- 会社負担が月7,500円を超えている
- 本人負担が半分未満
- 領収書や記録が何も残っていない
お弁当を毎月ふつうに頼むなら
制度を使うなら、誰がいつ何食、いくらの食事を頼んだかの記録が必要です。月末にまとめて、「食事の価額」「本人負担」「会社負担」を1枚の表にしておきましょう。小さな会社ほど、この1枚が効きます。
残業や宿日直のときに支給する食事は、無料で出しても給与課税しなくてよい、とされています。通常のランチ補助とは別扱いなので、混ぜないように記録しましょう。
出社日数別:食事代がいくらまでなら両方クリア?
「本人が半分以上を払う」と「会社の負担は月7,500円以下」は、セットで考えると簡単です。本人が半分を払えば、会社の負担は食事代の半分。つまり、食事代(税抜)×出社日数÷2が7,500円以下なら、両方クリアです。社会保険の入り方は、社長1人の会社の社会保険の記事で整理しています。
- 月10日出社 → 食事代は1食1,500円(税抜)まで
- 月15日出社 → 1食1,000円(税抜)まで
- 月20日出社 → 1食750円(税抜)まで
- 月22日出社 → 1食およそ680円(税抜)まで
出社日数が多い会社ほど、1食あたりの上限は下がります。会社負担を「1食いくら」と先に決めておくと、月末に慌てずに済みます。
よくある質問
Q. 税込のお弁当代は、どう税抜に直す?
A. 持ち帰りのお弁当は消費税8%が多く、税込648円なら税抜は600円です(648÷1.08)。10%の場合は、税込660円で税抜600円です。領収書の税率の欄で確認しましょう。
Q. パートさんやアルバイトさんも対象?
A. 基本的には、従業員として同じ考え方です。「正社員だけ」「特定の人だけ」と偏らせず、全員に同じ形で出すほうが説明しやすくなります。
Q. 社長(役員)の分も、会社が補助していい?
A. 役員の取り扱いは変わる場合があるので、顧問税理士に確認しておくと安心です。
Q. 本人負担分は、給料から天引きしてもいい?
A. 給料から引くときは、労使協定などの手続きが必要になることがあります。まずは、本人がその場で(または月ごとに)お金を払う形のほうが、手続きはシンプルです。
社内ルールは、紙1枚でいい
制度を始めるときは、短いメモを作って全員に配り、会社でも保管しておくと安心です。
◯◯には、先の早見表で決めた金額を入れてください。いつから始めたかが分かる書類が残っているだけで、あとで見直すときにも助かります。
ミニ事例:従業員3人の会社の、ひと月の食事補助
- お弁当は1食700円。会社が半分の350円、本人が350円を負担します。
- 各自、月20日出社なら、会社の負担は350円×20日=7,000円。月7,500円以下なので、条件を満たします。
- 3人分だと、会社の支出は月21,000円。年にすると252,000円です。
もし1食1,000円のお弁当を同じように半分ずつにすると、会社負担は500円×20日=10,000円。月7,500円を超えるので、この条件は満たせなくなります。金額は、お弁当の値段と出社日数の「かけ算」で決まるのがポイントです。
「本人が半分以上払った」を、どう残す?
- 給与から、お弁当代の本人負担分を天引きする(給与明細に残る)
- 毎月、本人負担分を集めて、メモを残す
- お弁当業者さんの請求書に、会社分と本人分の内訳を書いてもらう
やり方はどれでも構いませんが、「半分以上を本人が負担した」ことが、あとから見てわかる形にしておくのが大事です。会社名義で住まいを借りる場合は、社宅のしくみの記事で計算の考え方を整理しています。
まとめ:渡し方で、同じ7,500円が天国にも地獄にも
ランチ補助は、小さな会社でもすぐ始められる福利厚生です。「お弁当で渡す」「半分は本人負担」「会社負担は月7,500円まで」の3つだけ覚えて、お昼を少し豊かにしましょう。
※一般的な解説です。個別のケースは顧問税理士などの専門家にご相談ください。