会社員なら、退職金が出る会社も多いですよね。でも社長には、誰も退職金を用意してくれません。そこで使えるのが小規模企業共済です。「社長の退職金を、自分で積み立てる制度」と思ってください。
先に結論:掛金は全額、所得から引ける
- 掛金は月1,000円〜7万円(500円単位)で選べます。
- 掛金は全額が「小規模企業共済等掛金控除」として、所得から差し引けます。
- 受け取るときは、一時金なら退職所得控除、分割なら公的年金等控除が使えます。
この制度は、会社の経費ではなく、社長個人の所得控除です。倒産防止共済(会社の経費)とは、そこが違います。
数字で見る:月7万円を掛けると
月7万円 × 12か月 = 年84万円が、社長個人の所得から引けます。たとえば、所得税の税率が20%、住民税が10%の人なら、84万円 × 30% = 約25万円の税金が軽くなる計算です。あくまで目安で、実際の税率は人によって違います。
加入できる人の条件
- 常時使う従業員が20人以下の個人事業主(商業・サービス業は5人以下)
- 同じ従業員数の条件を満たす、会社の役員
1人社長や、小さな会社の役員なら、入れるケースが多いです。ただし条件は変わることがあるので、中小機構の公式情報で、最新の内容を確認してください。
解約のタイミングで、損することもある
- 廃業などの共済事由なら、加入6か月以上で、掛金以上の共済金を受け取れるとされています。
- 老齢給付(65歳以上、かつ180か月以上加入)は、退職所得の扱いです。
- 任意解約は、一時所得の扱いになります。加入から20年(240か月)未満だと、返戻金が掛金総額の80〜100%にとどまり、元本割れすることがあります。
- 長く掛け続けられる(20年以上)
- 所得が多く、税率が高い
- 退職金代わりに、長期で積み立てたい
- 数年で解約する可能性がある
- 毎月の資金繰りに余裕がない
- 掛金を途中で何度も減らす(将来の受取額に影響)
- 1自分が加入できる条件(従業員数・役員)を確認する
- 2毎月払える額を決める(まず少なめでもOK)
- 3掛金は、あとから増減できると知っておく
- 4原則、長く掛け続ける前提で始める
倒産防止共済は会社の経費、小規模企業共済は社長個人の所得控除。どちらも、使い方と解約のタイミングが大事です。両方を使う場合は、会社と個人の税金を合わせて考えましょう。
受け取り方で、税金が変わる
共済金の受け取り方は、一括(一時金)と分割(年金のように受け取る)、その組み合わせがあります。一括なら退職所得、分割なら公的年金等の扱いになり、それぞれの控除が使えます。
退職所得控除は、掛けた年数が20年以下なら「40万円×年数」、20年を超えると「800万円+70万円×(年数−20)」が目安です。たとえば、月7万円を20年掛けると、掛金の合計は1,680万円(7万円×12か月×20年)。退職所得控除は800万円なので、課税の対象になる退職所得は、概算で(1,680万円−800万円)÷2=440万円です。
実際の共済金は、掛金の合計より増えるのが一般的で、他の退職金を受け取る場合は計算が変わります。受け取る時期が近づいたら、顧問税理士に確認しましょう。
加入していると、借りられる制度もある
小規模企業共済には、掛金の範囲内で、事業資金などを低い金利で借りられる貸付制度があります。急に資金が必要になったとき、銀行以外の選択肢になります。借りた分は返済が必要で、条件も細かいので、使う前に中小機構の最新の案内を確認してください。
所得が少ない年は、控除の効果も小さい
所得控除は、所得が多いほど、税金が減る金額も大きくなります。社長の所得が少ない年は、控除しきれないこともあります。報酬の額と、掛金の額を、セットで考えるのがコツです。
よくある質問
Q. 掛金が払えなくなったら?
A. 掛金を払えない状態が長く続くと、解約として扱われることがあります。無理のない金額から始めて、必要に応じて減額も検討しましょう。
Q. 会社の経費にはならない?
A. なりません。掛金は、社長個人の所得控除です。会社の経費にしたい場合は、倒産防止共済など、別の制度を見ることになります。
Q. 家族従業員でも加入できる?
A. 条件を満たす個人事業主・役員が対象です。家族の加入条件は細かいので、中小機構に確認してください。
どのくらいの金額から始めるか
掛金は月1,000円から7万円まで、500円刻みで選べます。増やすことも減らすこともできるので、最初から上限に合わせる必要はありません。
おすすめの考え方は、「毎月の固定費として払っても、資金繰りが苦しくならない額」から始めることです。たとえば、売上が安定しない月がある会社なら、まず月1万〜2万円で始めて、決算で利益が見えた年に増やす。そんな使い方でも、続ければ立派な積み立てになります。
会社の備えと、社長個人の備えは別もの
倒産防止共済は「会社が取引先の倒産に巻き込まれたとき」の備えで、小規模企業共済は「社長が事業をやめたとき」の備えです。目的が違うので、どちらか一方を選ぶのではなく、両方を並べて考える会社が多くあります。
- 会社の資金繰りが不安 → まず手元資金と倒産防止共済
- 社長個人の老後や退職後が不安 → 小規模企業共済
- どちらも気になる → 毎月の掛金を小さく、両方で始める
続けるほど、使い道が広がります
共済は、長く続けるほど解約時の受け取りが増える仕組みです。短期で解約せず、10年、20年と続ける前提で金額を決めておくと、後から慌てずに済みます。社長の給料の決め方は、役員報酬の決め方の記事も参考になります。
共済のほかに、資産の置き場所を広げて考えたい方は、系統用蓄電池を扱う「ENERGY BANK」の系統用蓄電池とは、収益モデル、メリット・リスクのページもあわせてご覧ください。
まとめ:長く続けるほど、うれしい制度
小規模企業共済は、社長の将来の備えを、節税しながら作れる制度です。ただし、短期の解約は不利になりがち。「長く掛ける」ことを前提に、無理のない額から始めましょう。
※一般的な解説です。個別のケースは顧問税理士などの専門家にご相談ください。