「経費になって、しかも貯金できる」。そう聞くと、夢のような制度に思えます。倒産防止共済(経営セーフティ共済)のことです。ただし、よく聞いてください。「経費になる」と「税金が消える」は、同じではありません。
先に結論:掛金は経費、でも戻ると所得になる
- 掛金は月5,000円〜20万円の範囲で選べて、会社の経費(損金)にできます。
- 掛け続けられる累計の上限は800万円です。
- 解約すると、40か月以上掛けていれば、解約手当金として掛金の100%が戻ります。
- ただし、戻ってきた分は会社の所得(益金)になります。つまり、税金が「消える」のではなく「先送り」になる仕組みです。
数字で見る:月20万円を掛けると
- 月20万円 × 12か月 = 年240万円が、その年の経費になります。
- 累計800万円に達するまでは、40か月(3年4か月)です。
- 利益が大きい年に掛けると、その年の利益が240万円減り、税金も減ります。税率が仮に30%なら、約72万円の軽減になる計算です(実際は会社によって違います)。
- でも、解約して戻った240万円は、その年の所得に加わります。
つまり、利益が出ている年に掛けて、利益が少ない年に解約して戻すと、税金の時期をずらせます。これが「先送り」の使い方です。
グレーだった使い方は、改正で封じられた
以前は、解約してすぐ再加入して、また掛金を経費にする、というくり返しで、利益をずっとずらし続ける使い方が可能でした。令和6年10月1日以後は、解約後2年以内に再加入して払った掛金は、経費として認められなくなりました。「制度の穴」を使った節税は、もう通用しないということです。年に一度の見直しは、10月の5つのチェックにまとめています。
- 利益が出ていて、数年は資金を寝かせられる
- 取引先の倒産リスクがある
- 将来、利益が減りそうな時期が見えている
- 資金繰りがきびしい(掛金で手元の現金が減る)
- 40か月たたずに解約する予定がある
- 節税だけが目的で、仕組みを理解していない
- 1今期の利益の見込みを出す
- 2手元の現金を確認し、毎月払える額を決める
- 3解約する時期(利益が少ない年)を、あらかじめ想定する
- 440か月以上は掛け続ける前提で始める
この制度は、取引先が倒産したときに、連鎖倒産を防ぐための共済です。必要なときには、共済金の貸付を受けられます。節税の話ばかりが目立ちますが、「万が一の備え」という本来の価値も、頭に置いておきましょう。
加入できるのは、どんな会社?
加入の目安は、1年以上、継続して事業を行っている中小企業者です。個人事業主も対象になります。業種や従業員数などの細かい条件があるので、加入前に、運営している中小機構の案内で確認してください。
いざというときの「貸付け」
取引先が倒産して、売掛金などが回収できなくなったとき、共済から無担保・無保証人で借りられる仕組みがあります。借りられる額の上限は、掛金の累計に応じて決まります。ただし、借りた分に応じて、あとで解約したときの戻り(解約手当金)が減る仕組みです。貸付けの条件は細かいので、実際に使う場面では、最新の案内を確認しましょう。
40か月より前に解約すると?
掛金を40か月以上掛けていれば、解約手当金は掛金の100%戻ります。一方、それより短い期間で解約すると、戻りは100%ではなく、掛けた期間に応じて減ります。1年未満の解約では、戻らないこともあります。「利益が出ているうちに掛けて、少ない年に解約する」という使い方は、最低でも40か月は続ける前提で考えましょう。
始める前の、3つの質問
- 毎月の掛金を、無理なく払えるか:掛金は、会社の現金が確実に減ります。経費になっても、現金は戻ってきません。
- いつ解約するつもりか:解約すると、その年の利益になります。赤字や、利益が少ない年と重なるように計画します。
- 取引先に、倒産のリスクがあるか:売掛金が大きい会社ほど、本来の目的に近い使い方になります。
よくある質問
Q. 掛金は、あとから増やしたり減らしたりできる?
A. 掛金の額は、条件の範囲で変更できます。ただし、減額には条件があるので、最初から無理のない額を選ぶのがおすすめです。
Q. 解約したあと、すぐに再加入していい?
A. 令和6年10月1日以後は、解約後2年以内に再加入すると、再加入後の掛金が経費にできなくなりました(前に説明した改正です)。解約のタイミングは、慎重に決めましょう。
掛金は「取引先の大きさ」から逆算する
掛金は月5,000円から20万円まで、5,000円刻みで選べます。積み立てられる総額は800万円までです。決め方のコツは、「取引先1社が倒れたとき、どれくらい回収できなくなるか」から逆算すること。たとえば、1社あたりの売掛金が数百万円になる会社と、月に数十万円程度の会社では、必要な備えの大きさが違います。
貸付けは、積み立てた額の10倍まで
取引先の倒産で売掛金が回収できなくなったとき、共済から貸付けを受けられます。上限は、回収できなくなった額と、積み立てた掛金総額の10倍のどちらか少ない方です。つまり、掛金を多く積むほど、いざというときに借りられる額も大きくなります。担保や保証人は要りません。
「貯金箱」として使うなら、出口を先に決める
解約して受け取ったお金は、会社の収入として扱われます。利益が出ない年にまとめて解約する、役員退職金を出す年に合わせる。そんなふうに、出口の年を決めてから掛けると、使い勝手が大きく変わります。社長の退職金づくりは、小規模企業共済の記事で解説しています。
共済のほかに、資産の置き場所を広げて考えたい方は、系統用蓄電池を扱う「ENERGY BANK」の系統用蓄電池とは、収益モデル、メリット・リスクのページもあわせてご覧ください。
まとめ:税金の時期を選べる、貯金箱
倒産防止共済は、利益が多い年に掛けて、少ない年に戻す、という使い方で効果を発揮します。「経費になるから得」とだけ考えず、いつ戻すかまでセットで考えることが、いちばん大事です。
※一般的な解説です。個別のケースは顧問税理士などの専門家にご相談ください。