年末が近づくと、「福引をやってみよう」と思い立つ店主は多いはずです。一等は温泉旅行、二等は家電、三等は商品券。景品が豪華なほどお客様も盛り上がるだろうと、賞品選びのカタログをめくる時間は、ちょっと楽しいものです。
ところが、福引の賞品には上限があります。くじや抽選で当たりを決める景品は、景品表示法で「懸賞」と呼ばれ、賞品1本あたりの最高額と、賞品全体の総額の両方に制限がかかります。どちらか一方を守っただけでは足りません。
この記事では、福引の景品の上限が、自分の店だけで行う福引と、商店街でそろって行う福引で、どう変わるのかを、消費者庁のページで確認できた範囲で整理します。また、「もれなく配る景品」や「残念賞」の扱いも書きます。
野村證券のリテール営業で全国約7,000名中1位を4度。いまは代理店開拓で中小企業の販路をつくる会社「コミッターズ」を経営しています。川口です。
福引の景品の上限、先に結論:自店は「20倍」と10万円、商店街は30万円
くじや抽選で景品の相手や価額を決める方法は、景品表示法の「懸賞」に当たります。懸賞は、自店だけで行う「一般懸賞」と、複数の事業者で行う「共同懸賞」に分かれます。
自店だけで行う福引(一般懸賞)の上限は、次のとおりです。
- 取引価額が5,000円未満:賞品の最高額は、取引価額の20倍
- 取引価額が5,000円以上:賞品の最高額は、10万円
- 賞品の総額:懸賞に係る売上予定総額の2%以内
商店街がそろって行う福引(共同懸賞)の上限は、一般懸賞より高く設定されています。
- 賞品の最高額:取引価額にかかわらず30万円
- 賞品の総額:懸賞に係る売上予定総額の3%以内
- 商店街が行う場合は、中元や年末などの時期に、年3回を限度に、年間で通算70日以内
福引の景品の上限に出てくる言葉
ここで出てくる言葉を、先に整理しておきます。まず、「取引価額」は、福引に参加する条件になった買い物の金額です。購入者を対象にして、購入額に応じて景品を出す場合は、その購入額が取引価額になります。また、「売上予定総額」は、福引を行う期間中の、対象になる商品の売上の見込みです。
つまり、最高額と総額の両方を守る必要があります。最高額に収まっていても、当たりの本数が多くて総額が超えれば、制限に引っかかります。限度を超える景品を出すと、消費者庁長官から、景品類の提供に関する事項を制限され、または提供を禁止されることがあります。
福引の景品の上限の計算例:買い物の条件で、最高額が決まります
最高額は、「何を買った人が参加できるか」で決まります。まず、消費者庁のよくある質問にある例で見てみましょう。
- 1,000円の商品を買った人を対象にした抽選なら、取引価額は1,000円です。最高額は、20,000円(1,000円の20倍)です
- 期間中に合計5,000円以上(レシート合算)買った人が参加できる福引なら、取引価額は5,000円です。5,000円の20倍で10万円になり、一般懸賞の最高額は10万円です
- 買い物を条件にせず、来店した人に抽選で景品を出す場合は、取引価額は原則として100円です。最高額は、100円の20倍である2,000円です。ただし、その店で通常行われる取引の中で最低のものが100円を超えるときは、その額を取引価額にできます
そのため、来店者向けの福引は、賞品が小粒になります。豪華な賞品を出したいなら、購入額の条件をつけるのが基本線です。
賞品の価額は、市価で数えます
賞品の価額の数え方にも、決まりがあります。まず、景品と同じものが市販されているなら、お客様がそれを通常買うときの価格で数えます。仕入れ値ではありません。つまり、仕入れ値が安くても、店で普通に売っている値段で数えます。特に、最高額に近い賞品は、市価で計算し直してください。
福引の景品の上限と総額を決める手順
総額を決める手順は、次のとおりです。
- 1福引に参加できる条件(対象商品、購入額)を決める
- 2取引価額から、賞品1本の最高額を計算する
- 3期間中の売上予定総額を、前年の同じ時期の売上などから見積もる
- 4売上予定総額の2%を、賞品の総額の上限にする
- 5賞品の価額(市価)を足し合わせて、最高額と総額の両方に収まるか確かめる
売上予定総額は、根拠のない金額では使えません。前年の同じ時期の販売実績や、同じような企画を行ったときの実績などをもとに合理的に見積もっていれば、結果として実際の売上が予定を下回り、賞品の総額が売上の2%を超えても、すぐに問題にはならないとされています。
モノ商材の仕入れや売り方についての相談は、令和の総合商社で受け付けています。 お問い合わせページからご相談ください。
「もれなく」と「くじ」の分かれ道:残念賞も数えます
福引でよく迷うのが、「全員に配る分」と「くじで当たる分」の線引きです。
くじを使わず、買った人や来店した人に「もれなく」渡す景品は、懸賞ではなく「総付景品」です。上限は、取引価額が1,000円未満の場合は200円まで、1,000円以上の場合は取引価額の10分の2までです。
この点について、別のサイトのポチっと雑貨店長(ニコニコデスク)のコラム「2026年末の法人向け贈答品・ノベルティ、選び方と予算の決め方」では、お客さまへの購入に付けて、もれなく渡すような品物は、景品表示法の「総付景品」にあたる場合があると書かれています。
出典:ポチっと雑貨店長「2026年末の法人向け贈答品・ノベルティ、選び方と予算の決め方」
もれなくでも、懸賞になる場合
もれなくでも、懸賞になる場合があります。消費者庁のよくある質問では、来店した人全員に景品を渡す場合でも、価額に差がある景品を用意し、お客様がどれをもらえるか選べないときは、くじで価額を決めていることになるため、一般懸賞の規制の対象になると説明しています。
また、残念賞も同じです。抽選に外れた人にポケットティッシュなどの粗品を渡す場合、当たった賞品と粗品とで価額に差があるなら、粗品は末等と同じ扱いになります。つまり、粗品の価額も、賞品の総額に足す必要があります。
ダブルチャンスと先着順の扱い
「ダブルチャンス」の企画にも注意が必要です。一回目に外れた人を対象にした二回目の抽選でも、最高額は同じ取引価額で数えますが、総額は一回目と二回目の賞品をすべて合わせて、売上予定総額の2%以内に収めます。
なお、先着順で景品を渡す方法は、懸賞には当たりません。ただし、総付景品などの別の規制を受けることがあります。
ノベルティや景品は、配る相手を決めてから品物を選ぶ話が土台になります。こちらの記事にあります。
ノベルティ数百個より、配る相手を決めた1人。名刺1000枚で学んだこと
商店街の福引:共同懸賞にできる条件
商店街の歳末福引は、条件を満たせば共同懸賞にできます。ただし、上限が高くなる分、条件はきびしめです。
- 商店街振興組合が主催する懸賞は、「一の商店街」の共同懸賞として扱われます
- 組合が主催しなくても、小売業者やサービス業者が30人以上近接して商店街を形成している場合や、30店舗以上が入っているテナントビルなどは、「一の商店街」と認められます
- 参加者は、その地域の小売業者・サービス業者の過半数で、通常は共同懸賞に参加する者の大部分である必要があります(相当多数)
- 中元や年末などの時期に、年3回を限度に、年間で通算70日以内で行います
モノ商材の仕入れや売り方についての相談は、令和の総合商社で受け付けています。 お問い合わせページからご相談ください。
商店街の店舗が30未満でも、一律に共同懸賞にできないわけではありません。そのため、地域の実情をふまえて判断されます。
共同懸賞にできない場合
次のような場合は、共同懸賞にできません。
- 参加資格を、売上高などで限定したり、特定の団体の加入者や特定の事業者の取引先などに限ったりする
- 経費の負担、宣伝の方法、抽選券の配分などで一部の店だけ不利に扱い、実際には参加できないようにする
福引の景品の上限を、自店と商店街で合算するとき
自店の独自福引と、商店街の共同福引を同時に行う場合は、合算の考え方に注意してください。消費者庁のよくある質問の例では、どちらも期間中に合計5,000円以上買うことが条件で、両方に当選する可能性があります。この場合、取引価額は5,000円なので、一般懸賞の最高額は10万円(5,000円の20倍)です。共同懸賞の最高額は、30万円から一般懸賞で提供した景品類の額を差し引いた額になります。
例外・注意:見落としやすい3つ
福引を企画するときに、見落としやすい点が3つあります。
1つ目は、「カード合わせ」の禁止です。異なる種類の札を集め、特定の組み合わせを見せた人に景品を出す方法の懸賞は、告示で禁止されています。
抽選の運用で見落としやすい点
2つ目は、抽選の運用です。抽選の方法そのものに決まりはなく、店の判断で決められます。ただし、事前に告知した抽選の方法と別の方法で当選者を選ぶと、参加者に疑念を抱かせます。告知した当選者数に実際の当選者数が足りないときは、取引条件に関する不当表示として、景品表示法違反のおそれがあります。
3つ目は、「オープン懸賞」との違いです。購入や来店を条件とせず、はがきやウェブサイトなどで誰でも応募できる抽選は、景品規制の対象外で、提供できる金品に具体的な上限額の定めはありません。ただし、「購入した人だけ」「来店した人だけ」を対象にした途端、取引に付随する景品として規制の対象になります。
福引の景品の上限を確かめる、今日からできる最初の一歩
福引を企画するなら、まず紙一枚に、次の5項目を書き出してください。
- 参加条件(何を、いくら以上買った人か)
- 取引価額と、賞品1本の最高額
- 売上予定総額と、その2%(総額の上限)
- 賞品の一覧と、それぞれの市価
- 自店だけか、商店街の共同か
さらに、賞品を地元の取引先の商品にそろえれば、福引が仕入れ先への小さな販促にもなります。取引先に「年末の福引の賞品に使いたい」と声をかけるのは、新しい取引の入口として、悪くない切り出し方です。
モノ商材の仕入れや売り方についての相談は、令和の総合商社で受け付けています。 お問い合わせページからご相談ください。
なお、この記事は消費者庁の「景品規制の概要」とよくある質問、告示と運用基準を読んで書いています。商店街の共同懸賞にできるかどうかは、地域の実情で判断される部分もあるため、迷ったときは消費者庁の表示対策課に確認してください。
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運営元:コミッターズ
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参考(外部サイト):消費者庁、消費者庁(2)、消費者庁(3)、消費者庁(4)、消費者庁(5)、消費者庁(6)
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