ロゴを作ってくれたデザイナーさんに、5万円を払う。ふつうは「5万円振り込めばOK」と思いますよね。でも相手が個人のときは、ちょっと待ってください。報酬から税金を天引きして、会社が代わりに納める必要があるかもしれません。これが「源泉徴収」です。
今日は、デザイン料を例に、「引くべき人」と「引かなくていい人」の線引きを説明します。
先に結論:相手が個人で、決まった種類の報酬なら、源泉徴収が必要
- 原稿料、デザイン料、講演料など、決められた種類の報酬を個人に支払うとき、会社は源泉徴収をして納付します。
- 相手が法人なら、原則として源泉徴収は不要です。
- 税率は、100万円以下の部分で10.21%(復興特別所得税を含む)が一般的です。
報酬の種類によって、対象になるかが変わります。たとえばシステム開発(プログラム作成)は、原則として対象外のことが多いなど、内容による差があります。迷ったら、依頼内容を書き出して、税理士さんか税務署に確認しましょう。
数字で見てみる:ロゴ制作5万円の場合
個人のデザイナーさんに、ロゴ制作(本体5万円、消費税5,000円、請求額5万5,000円)を依頼したとします。
- 請求書に消費税の額が区分して書かれている場合:源泉徴収の対象は本体の5万円だけ。5万円×10.21%=5,105円。支払う金額は、5万5,000円-5,105円=4万9,895円です。
- 消費税の区分がない請求書(税込5万5,000円とだけ書いてある)の場合:5万5,000円全体が対象になり、5万5,000円×10.21%=約5,615円(端数は切り捨て)になります。
つまり、請求書に消費税を区分して書いてもらうだけで、源泉の金額が変わります。この一言を、依頼のときに添えておくとスムーズです。
- 1相手が個人か法人かを確認する
- 2報酬の種類が、源泉の対象かを確認する
- 3請求書で、消費税が区分されているかを確認する
- 4報酬から源泉税を引いて支払い、原則、翌月10日までに納付する
- 個人のデザイナーへのデザイン料
- 個人のライターへの原稿料
- 個人への講演料
- 法人(株式会社など)への支払い
- 商品の仕入れ代金
- 対象外の種類の報酬(内容による)
「引き忘れ」が、いちばん怖い
源泉徴収は、引き忘れて全額を払ってしまうと、会社が納付する責任を負うのが原則です。相手から、あとで差額を返してもらうのも、気まずいものです。だから、最初の依頼のときに「源泉徴収をして、差し引いた金額をお支払いします」と伝えておくのがコツです。
源泉徴収をした報酬は、年が明けてから、支払調書(誰にいくら払い、いくら源泉したか)を税務署に提出する対象になることがあります。支払った記録は、1年分まとめて残しておきましょう。
個人か法人か、どうやって見分ける?
請求書だけでは判断がつかないことも、よくあります。次の点を確認すると、見分けやすくなります。
- 請求書の名義:「株式会社」「合同会社」などが付いていれば法人です。個人名だけなら個人です。
- 屋号に注意:「◯◯デザイン事務所」といった屋号だけでは、法人とは限りません。個人事業主が屋号で請求していることがよくあります。
- インボイスの登録番号:番号の「T」のあとが、その会社の法人番号と一致していれば、法人の可能性が高いです(目安のひとつです)。
迷ったときは、依頼のときに「個人か、法人か」を一言聞いておくのがいちばん確実です。
納付は、原則「翌月10日」まで
引いた源泉所得税は、原則として、支払った月の翌月10日までに税務署へ納めます。給与の源泉のように、半年ごとにまとめて納める特例の対象にならないことがあるので、デザイン料などを払ったときは、納付の期限を早めに確認しておきましょう。
よくある質問
Q. 交通費を、別で実費精算したときは?
A. 報酬とは別に、請求書で交通費などの実費が明確に区分されていて、通常必要な範囲のものであれば、源泉徴収の対象に含めなくてよい場合があります。区分がない請求書だと、全額が対象になりやすいので、依頼のときに区分をお願いしておきましょう。
Q. 金額が小さくても、源泉は必要?
A. 対象の報酬であれば、金額が小さくても必要です。1回の金額が少ないからといって、省略はできません。
Q. 相手に「源泉は引かないで」と言われたら?
A. 相手が希望しても、引く義務があるときは、会社が引いて納めるのが原則です。個人の方への依頼のときは、最初に源泉の話をしておくと、トラブルになりません。
ミニ事例:同じ月に、3か所へ発注したら
ある月に、次の3つを発注したとします。金額は、請求書で消費税が区分されている前提の例です。個人に仕事を頼むときのメールの書き方は、フリーランス法の記事で整理しています。
- 個人のデザイナーAさん:ロゴ制作 本体5万円+消費税5,000円=請求5万5,000円
- 個人のライターBさん:原稿料 本体3万円+消費税3,000円=請求3万3,000円
- 法人のC社:ホームページ修正 本体10万円+消費税1万円=請求11万円
源泉徴収は、次のとおりです(対象になるかどうかは、仕事の内容によります)。
- Aさん:5万円×10.21%=5,105円。支払いは55,000−5,105=49,895円
- Bさん:3万円×10.21%=3,063円。支払いは33,000−3,063=29,937円
- C社:法人への報酬は原則、源泉徴収の対象外。支払いは110,000円
国に納めるのは、5,105円+3,063円=8,168円です。「誰に払ったか」を月末に一覧にしておくと、引き忘れも納付漏れも防げます。「業務委託」でも労働者と見られる場合があります。くわしくは労働者かどうかの記事で。
まとめ:お願いするときに、ひと言添える
個人の方に報酬を払うときは「源泉徴収の対象か」「請求書に消費税が区分されているか」の2点を、依頼のときに確認しておく。これだけで、支払いのときにあわてなくて済みます。税率や対象は変わることがあるので、最新の内容は国税庁の案内もあわせて確認してください。
※一般的な解説です。個別のケースは顧問税理士などの専門家にご相談ください。