年末が近づくと、事務所の引き出しや段ボールに、何年分もの領収書がたまっています。大掃除のついでに、シュレッダーの前で手が止まった社長もいるはずです。「これ、もう捨てていいのかな」。
法人の場合、領収書の保存期間の基本は「7年」です。ただし、数え始めるのは決算日ではなく、確定申告書の提出期限の翌日です。しかも、赤字の年は「10年」と長くなります。さらに、メールやネットで受け取った領収書は、紙に印刷しても、データのほうを消してはいけません。
この記事では、国税庁の案内(令和8年4月1日現在の法令等)をもとに、領収書の保存期間のほか、帳簿の保存期間、数え方、捨てる前の確認、メールで届いた領収書の扱いを整理します。
野村證券のリテール営業で全国約7,000名中1位を4度。いまは代理店開拓で中小企業の販路をつくる会社「コミッターズ」を経営しています。川口です。
領収書の保存期間、先に結論
法人は、帳簿と、取引に関して作成または受け取った書類を、その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間、保存しなければなりません。つまり、領収書は、この「書類」に入ります。
- 帳簿の例:総勘定元帳、仕訳帳、現金出納帳、売掛金元帳、固定資産台帳
- 書類の例:棚卸表、貸借対照表、損益計算書、注文書、契約書、領収書
ただし、青色申告書を提出した事業年度で赤字(青色繰越欠損金)が出た年は、10年間になります。
個人事業主の青色申告は7年か5年
別のサイトの控除さがし探偵団のコラム「個人事業主の経費の考え方を質問と答えで整理」では、個人事業主の青色申告の保存について、「帳簿書類を原則7年間保存することとされ、書類によっては5年間でよいものがあります」と書かれています。
出典:控除さがし探偵団「個人事業主の経費の考え方を質問と答えで整理」
また、個人事業主の青色申告でも、原則は7年で、請求書や見積書のように5年でよい書類があります。一方、法人には、この5年の区分がありません。領収書の保存期間も、帳簿と同じ7年です。
領収書の保存期間「7年」はいつから数える?
まず、起点は、決算日ではありません。確定申告書の提出期限の翌日です。
法人税の確定申告書の提出期限は、原則として事業年度終了の日の翌日から2か月以内です。提出期限が土曜日・日曜日・祝日にあたるときは、その翌日が期限になります。つまり、実際の保存期間は、決算日から数えるより、2か月ぶんほど長くなります。
よくある会話は、こんな感じです。
「社長、この箱は去年の決算の分ですよね。もう捨てていいですか」
「決算は終わったからいいんじゃない?」
「いえ、申告期限の翌日から数えて、まだ何年も先です」
決算が終わった時点では、まだ捨てられません。さらに、保管箱を事業年度ごとに分けているなら、ふたに「この日以降は処分できる」という日付を書いておくと、翌年以降の自分が迷いません。なお、請求書、見積書、契約書も、領収書と同じ書類として、同じ期間を数えます。
領収書の保存期間は、赤字の年だけ「10年」になる
青色申告の法人は、赤字(欠損金額)を、あとの事業年度の黒字と差し引くことができます。国税庁のタックスアンサーでは、開始の日前10年以内に開始した事業年度で、青色申告書を提出した事業年度に生じた欠損金額が対象とされています。そして、この繰越控除は、その事業年度に係る一定の帳簿書類を保存している法人が受けられるものです。
つまり、あとで赤字を使うかもしれない年の書類は、長く持っておく。そう考えると、10年の意味がわかりやすくなります。
捨てる前の確認は、次の順番で十分です。
- 1その書類が、どの事業年度のものかを確認する
- 2その事業年度に、青色の赤字が出ていないかを確認する(出ていれば10年)
- 3申告期限の翌日から、7年(または10年)がたっているかを数える
- 4迷ったら、その箱は捨てずに、顧問税理士に聞く
メールで届いた領収書は「データが原本」
特に、ここは、年末の片づけで事故が起きやすいところです。令和6年1月から、メールやネットで受け取った領収書・請求書は、保存要件に従った電子データで保存する必要があります。
国税庁の案内では、次のようなものが対象です。
- メールの本文や添付ファイルで、請求書や領収書に相当する情報をやりとりした
- ネットで備品を買い、領収書に相当する情報が、サイト上の画面にしか出ない(PDFやスクリーンショットでの保存も可)
- 受け取った場合だけでなく、送った場合も保存が必要
そして大事な点です。国税庁の案内には、「令和6年1月からは消さずに保存する必要がある」と書かれています。それまでは、プリントアウトしたらデータを消しても差し支えありませんでした。つまり、いまは、電子データが原本です。紙に出して、メールを削除するのは危ない処理になります。
電子データで保存するときの条件
保存するときの条件は、おおまかに次のとおりです。
- 不当な訂正や削除を防ぐための事務処理規程を決めて守る(専用のシステムがなくても可)
- 日付・金額・取引先で探せるようにする(ファイル名に「日付・金額・取引先」を入れるルールを決める方法でもよいとされています)
- パソコンなどで、すぐに表示できるようにしておく
準備が間に合わないときの救済
準備が間に合わないときの救済もあります。保存のルールに従えなかったことに、税務署長が相当の理由があると認める場合で、税務調査のときに、データのダウンロードと、プリントアウトした書面の提示の求めに応じられるなら、データを保存しておくだけで足ります。なお、ここでも、データを消さないことが前提です。
ただし、ここに注意してください
- 令和8年4月1日以後に開始する事業年度から、関連者との取引に関する新しいルールが加わりました。取引に関する書類に、対価の額を算定するのに必要な事項(資産や役務の提供の明細など)の記載がないときは、それを明らかにする書類を申告期限までに用意し、起算日から7年間保存します。関連者の範囲や細かい扱いは、国税庁の案内か顧問税理士で確認してください
- 感熱紙のレシートは、時間がたつと文字が薄れることがあります。そのため、紙の原本は捨てず、念のため写真も撮っておくと安心です
- 電子帳簿保存法の細かい要件は、会社の売上の規模や、使っているソフトで変わる部分があります。この記事では、基本だけを書いています
- 紙の領収書をスキャンして、原本を捨てる「スキャナ保存」には、別の要件があります。そのため、満たさないまま原本を捨てるのは危ない処理です。やる場合は、国税庁の電子帳簿保存法の案内か顧問税理士で、要件を確認してからにしてください
- なお、領収書の保存期間の7年や10年は、税金の面からみた期間です。契約や労務など、ほかの決まりで、もっと長く持つ書類もあります
領収書の保存期間、今日からできる最初の一歩
領収書の保存期間を踏まえて、年末の片づけを、次の順番で進めてみてください。
- 1紙の領収書の箱を、事業年度ごとに分ける
- 2ふたに「処分できる日(申告期限の翌日から7年、赤字の年は10年)」を書く
- 3メールで届く領収書を、1つのフォルダに集める。ファイル名は「日付・金額・取引先」の順にそろえる
- 4データを消す前に、「これは電子取引にあたるか」を一度だけ確認する
実は、営業の目線でも、領収書は宝の山です。会食や出張の領収書に「誰と会って、何を話したか」を一行足しておくと、次の商談の記録になります。やり方は、こちらの記事にあります。
会食と出張の領収書を、次の商談につなげる記録に変える保存版メモ術
捨てていいかどうかの判断が難しい書類は、顧問税理士に、箱ごと見せるのがいちばん早いです。また、個別の判断は、顧問税理士に確認してから進めてください。
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お金の学び(ウハウハ高等学校):副業で確定申告するなら、ふるさと納税のワンストップ特例はどうなる?
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筆者の記事:川口忠大のnote
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導入先を比べる:系統用蓄電池の低圧・高圧比較|法人が費用と接続条件で選ぶ方法
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情報サイトのトップ:ENERGY BANK(系統用蓄電池の情報サイト)
運営元:コミッターズ
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参考(外部サイト):国税庁、国税庁(2)、国税庁(3)、国税庁(4)、国税庁(5)、国税庁(6)
※一般的な解説です。個別のケースは顧問税理士・社会保険労務士・弁護士などの専門家にご相談ください。
