個人事業主にとって、青色申告特別控除は毎年の税額を左右する大きな数字です。その青色申告特別控除に、新しい区分が加わるという報道が出ています。
いまの最高は65万円です。ところが、2026年9月28日の税務通信や、日経クロステック Activeの資料紹介では、令和9年分から最大75万円になると書かれています。
この記事では、いまの区分(令和8年4月1日現在の国税庁の案内)と、報じられている変更を分けて整理します。75万円の細かい要件は、国税庁などの公式の資料で確かめる前提で読んでください。
野村證券のリテール営業で全国約7,000名中1位を4度。いまは代理店開拓で中小企業の販路をつくる会社「コミッターズ」を経営しています。川口です。
青色申告特別控除、先に結論
まず、先に結論を並べます。つまり、いまの控除と、報じられている変更は別の話として分けて見るのがコツです。
- まず、いまの青色申告特別控除は、55万円、65万円、10万円の3区分です
- 一方、令和9年分から、最大75万円になると報じられています
- また、65万円は、電子帳簿保存かe-Taxのどちらかが条件です
- さらに、報じられている75万円は、e-Taxに加えて電子帳簿保存などが条件とされています
- なお、令和9年分(2027年分)より前の申告は、いまの区分のままです
また、青色申告特別控除は所得税の制度です。会社(法人)の法人税ではなく、個人事業主や不動産所得のある人の話になります。
さらに、対象者は、国税庁の案内で「青色申告者」とされています。つまり、白色申告のままでは、この控除は使えません。たとえば、今年から青色申告に切り替えたい人は、先に税務署への手続きの案内を確かめておくと安心です。
青色申告特別控除の、いまの3区分
まず、いまの区分を国税庁のタックスアンサー(令和8年4月1日現在法令等)で確認します。国税庁は、所得金額から55万円(一定の要件を満たす場合は65万円)または10万円を控除する制度、と説明しています。
55万円控除の要件
55万円の控除を受けるには、次の3つがそろう必要があります。
- 1不動産所得または事業所得を生ずべき事業を営んでいること
- 2取引を正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)で記帳していること
- 3貸借対照表、損益計算書、所得の金額の計算に関する明細書を、確定申告書に添付して提出すること
提出の期限は、その年分の確定申告期限(翌年3月15日)です。なお、現金主義による所得計算の特例を選んでいる人は、55万円の控除を受けられません。
65万円控除に足す条件
次に、65万円の控除です。55万円の要件を満たしたうえで、次のどちらかに当てはまる必要があります。
- 仕訳帳と総勘定元帳を、電子帳簿保存で保存している
- 確定申告書、貸借対照表、損益計算書などを、e-Taxで送信している
ただし、電子帳簿保存で65万円を受けるときは、優良な電子帳簿の要件を満たし、届出書を確定申告期限までに出す必要があります。また、e-Taxで送る場合も、イメージデータでの送信はできないとされています。
10万円控除と、控除の上限
一方、10万円の控除は、55万円と65万円の要件に当てはまらない青色申告者が受けられます。つまり、複式簿記で記帳していない青色申告者は、ここに入ります。
さらに、控除には上限があります。たとえば、不動産所得と事業所得の黒字の合計が55万円より少ない年は、その黒字の額までが控除の限度です。
令和9年分から青色申告特別控除に75万円、と報じられています
次に、報じられている変更です。税務通信の2026年9月28日の記事では、令和8年度税制改正により、令和9年分の所得税から、青色申告特別控除の最大控除額が75万円になるようです、と書かれています。
この記事は、「ようです」と断定を避けた書き方です。そのため、筆者もここでは、決まった話ではなく報道として書きます。なお、対象になる事業者は2027年から新ルールに対応する必要がある、とも紹介されています。
青色申告特別控除の75万円、報じられている条件
日経クロステック Activeの資料紹介には、次の内容があります。ただし、この紹介は要約で、続きは会員登録が必要なため、筆者は全文を確認していません。最高控除額として75万円が新設され、2005年分の申告に最高65万円が適用されて以来、約22年ぶりの引き上げになる、という説明です。
続けて、10万円控除以外はe-Taxでの電子申告が必須になり、75万円控除はe-Taxに加えて電子帳簿保存などの要件を満たすことが条件になる、とも書かれています。
帳簿の整え方:土台は日ごろの記帳です
別のサイトの控除さがし探偵団のコラム「個人事業主の経費の考え方を質問と答えで整理」では、「記帳は、売上げなどの収入金額、仕入れや経費について、取引の年月日、相手方の名称、金額などを帳簿に記載するものです」と書かれています。
出典:控除さがし探偵団「個人事業主の経費の考え方を質問と答えで整理」
つまり、控除の区分が変わっても、土台は日ごろの記帳です。青色申告特別控除の55万円も、複式簿記での記帳が前提だからです。
帳簿と領収書の記録をそろえる
まず、記帳の元になるのは、領収書や請求書の記録です。会食や出張の領収書を、あとで使える形で残す方法は、こちらの記事にあります。
会食と出張の領収書を、次の商談につなげる記録に変える保存版メモ術
また、会計ソフトを使っている人は、そのソフトが電子帳簿保存に対応しているかを、ソフトの案内で確かめてください。
報道の段階で、気をつけたい点
特に、報道の段階の話を、決まった前提で動くのは危険です。次の点に注意してください。
- まず、75万円は、令和9年分からと報じられている段階の話です
- さらに、条件の細部(電子帳簿保存の範囲など)は、公式の資料で確かめる必要があります
- なお、国税庁のタックスアンサーには、令和8年4月1日現在、75万円の記載はありません
- ただし、控除の額が増えても、記帳が複式簿記でなければ55万円以上は受けられません
- 税額への影響は、所得や他の控除で変わります
特に、「e-Taxが必須になるなら、紙の申告はもう無理だ」と先走る必要はありません。いまの65万円は、電子帳簿保存でも受けられるからです。変わるのは、令和9年分からと報じられている部分だけです。
なお、個別の判断は、顧問税理士や所轄の税務署に確認してから進めてください。
青色申告特別控除、今日からできる最初の一歩
まず、最初の一歩は、自分がいま何万円の控除を使っているかを確かめることです。次の3つを、年内にひとまとめのメモにしてみてください。
- 1去年の確定申告書で、青色申告特別控除が55万円、65万円、10万円のどれだったかを確認する
- 265万円の場合、その条件が電子帳簿保存かe-Taxかを書き出す
- 3e-Taxを使える状態か、会計ソフトが電子帳簿保存に対応しているかを確認する
青色申告特別控除の準備を、営業の数字づくりにつなげる
さらに、帳簿が整うと、月ごとの売上と経費がすぐ出せるようになります。つまり、控除の準備は、営業の振り返りにも使える数字づくりと同じ作業です。たとえば、どの取引先からの売上が伸びているかを、毎月見る習慣につなげてください。
営業や販路を考える材料として、まず帳簿の数字を整えます。その流れを、こちらのコーナーの案内にもまとめています。
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運営元:コミッターズ
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参考(外部サイト):国税庁、www.zeiken.co.jp、active.nikkeibp.co.jp
※一般的な解説です。個別のケースは顧問税理士・社会保険労務士・弁護士などの専門家にご相談ください。
