現場が終わり、一人親方から請求書が届きました。金額は、工事代金そのままの請求です。ここで、経理担当の手が止まります。源泉徴収は必要か、迷うからです。
まず、答えの方向はシンプルです。工事を完成させる請負への支払いは、原則として対象に挙がっていません。ただし、同じ請求書に対象の報酬が混ざると、話は変わります。また、働き方の実態しだいで、別の扱いもありえます。
たとえば、元請との間で入金額が合わない場面があります。引いた側と、引かれていない前提の側で、金額がずれるためです。原因はたいてい、要否を決めないまま支払ったことです。逆に、最初に境目を決めた現場では、この行き違いは起きにくくなります。
この記事では、源泉徴収と一人親方について、要る仕事と要らない仕事の境目を整理します。さらに、対象になったときの税率と納付日も確認します。なお、根拠は国税庁のタックスアンサーです。同ページは、令和8年4月1日現在法令等と書かれた版です。
野村證券のリテール営業で全国約7,000名中1位を4度。いまは代理店開拓で中小企業の販路をつくる会社「コミッターズ」を経営しています。川口です。
源泉徴収と一人親方、先に結論
まず、源泉徴収と一人親方の結論を3つに分けます。次に、1つずつ確かめていきます。
1つ目は、工事代金です。工事の完成を約束する請負への支払いは、対象の代表例に入っていません。2つ目は、対象の報酬です。原稿やデザインなど、決められた報酬は対象になります。3つ目は、実態の確認です。契約の名前より、仕事の中身と働き方を見ます。そのため、請求書を1行ずつ分けて読む姿勢が大切です。実態の判断が割れる支払いは、顧問税理士に確認します。
源泉徴収が要らない仕事
では、要らない側から見ていきます。国税庁のNo.2792は、対象になる報酬・料金等を限って挙げています。そこに、一般の工事代金は挙がっていません。
工事の完成を約束する請負が中心です
たとえば、大工工事を一人親方に任せたとします。代金は、建物や内装が仕上がることへの対価です。この対価は、報酬・料金等の列挙には入っていません。したがって、原則として引かずに支払います。一方で、材料費が含まれる請求でも、まず見るのは仕事の中身です。材料の買い方だけで、源泉の結論は決まりません。
材料や道具の扱いは、契約の段階で分けます
実態を見るときは、契約書と現場の運用が材料になります。たとえば、材料を支給するのか、相手が持ち込むのかです。また、道具を誰が用意するのかも、運用の違いを表します。さらに、ほかの現場を受けられる自由度も、材料の1つです。どれか1つで決まる話ではありません。そのため、契約の段階で、工事の範囲と材料の扱いを書き分けます。書き分けた記録が、後の判断を助けます。
相手が会社なら、扱いはさらに変わります
次に、相手が個人か法人かも分かれ目です。国税庁の案内では、内国法人への支払いで対象になるのは、馬主である法人への競馬の賞金です。つまり、法人格の外注先への工事代金は、対象になりません。そのため、契約前に相手の形態を確認します。
別のサイトの控除さがし探偵団のコラム「個人事業主の経費の考え方を質問と答えで整理」では、個人事業主の経費は、収入を得るために直接要した費用と、その年に債務が確定したものが基本である、と整理されています。
出典:控除さがし探偵団「個人事業主の経費の考え方を質問と答えで整理」
発注側が引かない工事代金は、相手側の売上になります。相手は、自分で申告して税金を納めます。ここを取り違えると、相手の資金繰りを崩します。そのため、要否は支払う前に決めておきます。
源泉徴収と一人親方、要る仕事の境目
一方で、同じ一人親方への支払いでも、対象になる仕事があります。鍵は、仕事の中身が列挙された報酬に当たるかです。
図面やデザインなど、列挙された報酬が混ざる場合です
たとえば、店舗の看板デザインを別に頼んだとします。デザインの報酬は、原稿料などと同じ区分で対象になります。また、特定の資格を持つ人への報酬も対象です。国税庁の案内は、弁護士、公認会計士、司法書士等を挙げています。工事の相談という名前でも、中身が対象の報酬なら扱いは同じです。判断に迷う行は、顧問税理士に確認します。
デザイナーへの支払いで迷う場合は、こちらの記事も参考になります。
デザイナーに5万円払うとき、源泉徴収は必要?「個人は必要、法人は不要」が基本です
名目が謝礼や車代でも、中身で見ます
国税庁の案内には、名目についての注意があります。謝礼、研究費、取材費、車代などの名目でも、実態が報酬・料金等と同じなら対象です。また、金銭ではなく物で払う場合も、報酬・料金等に含まれます。さらに、旅費や宿泊費も、原則として報酬に含まれます。ただし、会社がホテルなどへ直接払った分は、含めなくてよい扱いです。そのため、立替精算の請求は、分け方を確認します。
源泉徴収と一人親方の税率と納付
源泉徴収と一人親方の支払いで対象になると分かったら、次は税率です。国税庁のNo.2795に、計算方法が載っています。
- 100万円以下:支払金額 × 10.21%
- 100万円を超える:(支払金額 − 100万円)× 20.42% + 102,100円
求めた税額に1円未満の端数があるときは、切り捨てます。たとえば、150万円の対象報酬なら、源泉額は204,200円です。
消費税の書き方で、引く額が変わります
次に、消費税の扱いです。報酬に消費税等が含まれると、原則は税込の金額が対象です。ただし、請求書で報酬と消費税等が明確に区分されていれば、報酬の額だけが対象です。この扱いは、インボイス制度の開始後も変わりません。納付は、支払った月の翌月10日までです。原稿料や講演料などは、納期の特例の対象になりません。そのため、月ごとの納付を前提に段取りを組みます。
よくある質問を3つ
「工事代金から、念のため引いておけば安心ですか」と聞かれます。答えは、対象でない支払いからは引かない、です。迷う部分だけを切り分け、根拠を確認してから支払います。
「日当で払う一人親方は、どうなりますか」と聞かれます。答えは、日当という名前だけでは決まらない、です。時間で働く実態が強い場合は、給与に近い扱いも考えられます。そのため、契約の実態を税理士に確認します。
「請求書がまとめて書かれていたら、どうしますか」と聞かれます。答えは、工事分と対象の報酬分を分けて書いてもらう、です。分かれていれば、対象分だけを計算できます。
源泉徴収と一人親方、今日からできる最初の一歩
今日できることは、直近の請求書を1通開くことです。手順は、次のとおりです。
- 1請求書の行ごとに、仕事の中身を分ける
- 2対象の報酬が混ざっていないか、No.2792で確かめる
- 3迷う行は支払う前に、顧問税理士へ請求書ごと見せる
営業の目線では、支払条件は信頼そのものです。見積の段階で、源泉徴収と一人親方への支払いの引く・引かないを伝えておきます。そうすると、入金額の食い違いが減ります。特に、初めて頼む相手とは、最初の請求の前に確かめます。工事代金は引かず、対象の報酬だけ引く。この分け方を口頭ではなく、見積や注文書に残します。残した記録は、次の現場でもそのまま使えます。税の線引きは、こちらのコーナーでも整理しています。
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