代理店を募集したのに、誰も売ってくれません。契約を結んだのに、最初の1件が出ません。
原因は、人の数でも熱意でもなく、募集を出す前に決めていないことが残っている点にあります。
この記事では、代理店を持つ前に決める3つ(契約の型・売る相手・最初の1か月)を、そのまま使える言い回しつきでお渡しします。
野村證券のリテール営業で全国約7,000名中1位を4度。いまは代理店開拓で中小企業の販路をつくる会社「コミッターズ」を経営しています。川口です。
「代理店契約」と書いてあるのに、中身は販売店だった
よくある失敗は、契約書の題名と、実際の商売の中身がずれていることです。
題名は「代理店契約」なのに、実際は商品を仕入れて自分の名前で売る販売店の動きになっている。逆に、販売店のつもりで商品を卸したのに、相手は紹介するだけのつもりだった。こうしたずれは、募集の段階では誰も困りません。売れ始めてから、報酬や在庫の話で揉めて表に出ます。
令和の総合商社の解説記事に、代理店契約の3つの型と、決めておくことが整理されています。契約の側から整理したい方は、先に読んでおくと話が早いです。
代理店契約の3つの型と決めておくことは、こちらの記事にあります。
「代理店契約」のはずが、中身は「販売店」だった?契約の3つの型と、決めておくこと
私自身にも失敗があります。副業の営業マンを約300人集めて、実際に動いたのは約10人でした。人数を集めることが目的になると、集まったあとに何を頼むのかが決まっていないことに気づきます。この経験から、人数より先に決めるべきことがあると考えています。

決めること1:契約の型を、4つの質問で言葉にする
法律用語で悩む前に、営業の設計として次の4つに答えてください。
- 1お客さんと契約を結ぶのは、御社と代理店のどちらか
- 2商品の在庫と代金の回収は、どちらが持つか
- 3報酬は、何が起きたときに発生するのか(紹介しただけか、契約が成立したときか、入金されたときか)
- 4契約をやめるとき、お客さんへの対応と在庫をどうするか
この4つの答えがそろうと、自社の形が「紹介して報酬を受け取る形」なのか、「仕入れて売る形」なのかが見えてきます。契約書の題名は、その形に合わせて最後に決めます。題名から先に決めないことが大切です。
募集文面には、次のように書いておくと、応募者との認識のずれが減ります。
言い回し例:「お客さまとの契約は弊社が結びます。代理店さまには、見込み客のご紹介と、商談への同席をお願いします。報酬は、契約が成立し、入金を確認できた時点で発生します。」
「報酬は成果に応じてお支払いします」だけでは、何をもって成果とするのかが読み手によって変わります。発生する場面を、出来事で書いてください。
労働者と見られないために、題名でなく実態を見る
もう一つの落とし穴は、代理店や業務委託のつもりでも、働き方の実態が社員に近いと「労働者」と見られうる点です。
厚生労働省の資料では、労働基準法上の労働者かどうかは、契約の形式や名称にかかわらず、働き方の実態で判断するとされています。判断の要素には、次のような項目が挙げられています。
- 仕事の依頼や業務の指示を、断る自由があるか
- 業務の進め方について、指揮監督があるか
- 時間や場所の拘束があるか
- 本人に代わって他の人が行ってもよいか(代替性)
- 報酬が、労務の対価という性格になっていないか
営業の現場でやりがちなのは、毎朝の報告、訪問先と時間の指定、断れない目標の押しつけです。管理したい気持ちは分かりますが、やり方まで縛ると、実態が社員に近づくおそれがあります。成果の定義と最低限の報告項目だけを決めて、進め方は任せる。これが営業の設計としても、整理しやすい形です。
業務委託と労働者の線引きは、こちらの記事に解説があります。
「業務委託だから大丈夫」は通用しない?労働者かどうかは、契約書の題名では決まらない
個別の契約書の作成や、労働者に当たるかどうかの判断は、税理士・社会保険労務士など専門家へご相談ください。
決めること2:売る相手を、1つの業種・1つの肩書きに絞る
代理店に「何でも売ってください」と頼むと、誰も動けません。営業で最初に効くのは、数を増やすことより、向ける相手を絞ることです。
私が野村證券で転機になったのは、営業する相手を、資産を持つ方・オーナー社長に絞ったことでした。行動量は落とさず、向ける先だけを変えました。
代理店にも同じことを頼みます。決めるのは次の3つです。
- 業種:飲食店、美容室、工場など
- 肩書き:オーナー、代表、店長など
- 状況:求人に困っている、新しい仕入れ先を探している、など
言い回し例:「飲食店のオーナーで、仕入れ先を見直したい方をご紹介ください。」
ここまで絞ると、代理店は自分の知り合いの顔を思い浮かべながら動けます。逆に、絞らないままだと、思い浮かぶ顔がなくて動けません。紹介してほしい相手を1行で言えるかどうか。募集を出す前の試験として、使ってみてください。
決めること3:最初の1か月の動きを、週ごとに決める
契約したあとに放置すると、最初の1か月のうちに連絡が途絶えます。次のような流れを、契約の前にこちらから示してください。例として挙げます。
- 1週目:商品の説明を30分で行い、よくある質問と断られ方を共有する
- 2週目:紹介できそうな相手の候補を3つ挙げてもらい、声かけの文面を一緒に作る
- 3週目:最初の商談に同席し、説明はこちらが担当する
- 4週目:動いた件数と、止まった理由を15分で振り返る
そして、週1回の短い報告の型も渡しておきます。
- 1今週、声をかけた相手の数
- 2商談になった数
- 3止まっている理由
言い回し例:「最初の1か月は、成果よりも、紹介できそうな相手の候補を挙げることを目標にします。」
こう伝えておくと、成果が出ない時期の気まずさが減ります。気まずさが減ると、連絡が続きます。連絡が続けば、止まっている理由を一緒に取り除けます。

募集を出す前の確認と、小さな会社の希望
最後に、確認用の一覧です。全部に答えられたら、募集を出して構いません。
- 契約の型を、4つの質問で言葉にできた
- 報酬が発生する場面を、出来事で書いた
- 成果の定義と報告項目だけ決め、進め方は任せる形になっている
- 紹介してほしい相手を、業種・肩書き・状況の1行で言える
- 最初の1か月の週ごとの動きと、報告の型を用意した

代理店づくりに、才能や学歴やコネは要りません。決めるべきことを順番に決めて、量を回す設計があれば、小さな会社でも動いてくれる相手は増えます。約300人のうち約10人しか動かなかった私が、いまこの順番で組み立てているのは、その経験があるからです。
契約、税務、人事、海外といった経営の土台を整える読み物は、令和の総合商社にまとまっています。募集の前後で迷ったときの確認先として、役立ててください。
コミッターズは、代理店開拓で中小企業の販路をつくる会社です。本気で販路を作りたい経営者の方には、60分の無料相談で設計図をお出しします。
参考(外部サイト):厚生労働省
※一般的な解説です。個別のケースは顧問税理士・社会保険労務士・弁護士などの専門家にご相談ください。