法定開示書面の確認は、年末の加盟募集の説明会を開く前に終える作業です。年が明けてから加盟の動きを速くしたい本部ほど、年末のうちに書面を整える意味があります。
ただし、説明会の準備では、集める言葉の方が先に進みがちです。実は、参加した人が持ち帰る判断の材料は、案内の言葉ではなく、渡された書面の中身です。たとえば、その場では前向きでも、持ち帰って読み直す段階で条件の食い違いに気づく場面です。
この記事では、法定開示書面の確認を、年末の説明会の前に進める手順を整理します。さらに、開示の項目の物差しと、予想売上の根拠の示し方も書きます。なお、書面を整えるのは本部の側で、加盟の判断は希望する人の側が持ちます。
野村證券のリテール営業で全国約7,000名中1位を4度。いまは代理店開拓で中小企業の販路をつくる会社「コミッターズ」を経営しています。川口です。
法定開示書面の確認、先に結論です
- まず、小売と飲食の特定連鎖化事業では、契約の前に書面を交付して説明する義務があります。
- また、事前に開示すべき項目は23項目にわたっています。
- 一方、対象の業種でなくても、公正取引委員会のガイドラインでは、業種を問わず開示の考え方が示されています。
- さらに、説明会では、書面を渡すだけでなく、検討の時間を置く進め方が大切です。
つまり、法定開示書面の確認は、説明会の飾り付けではありません。加盟の判断の土台を、先にそろえる作業です。
なお、年末は希望する人の側も忙しい時期です。建設まわりの事業では、年末は工事の追い込みで、読み直す時間が取りにくくなります。そのため、書面を渡す時期そのものも、段取りに入れます。さらに、質問を受ける窓口を決めておくと、年始のやり取りが短くなります。
法定開示書面の確認、説明会前に見る順番です
まず、順番は、対象の見分け、項目の照合、言葉の照合、渡し方の順です。
対象を見分ける
項目を照合する
言葉を照合する
渡し方を決める
- 1まず、自社の募集が、中小小売商業振興法の対象になるかを見分けます。小売と飲食の特定連鎖化事業に当たるかが入口です
- 2次に、開示の項目を照合します。本部の概要、財務の状況、店舗の数の推移、訴訟の件数などが、項目の中に含まれます
- 3また、お金の項目を照合します。加盟のときに徴収する金銭の性質と返還の条件、定期的に支払う金銭の額と算定方法です
- 4最後に、案内の言葉と書面の言葉を照合します。説明会の資料と書面で、条件の言い方が食い違わないかを見ます
代理店契約の型を扱った記事でも紹介しましたが、契約の中身の型が違うと、始めた後の動き方も変わります。開示書面の確認でも、型に合った項目の見方が要ります。
持ち帰って読み直す時間も、段取りに入れます
たとえば、従業員が数人の建設会社(仮の例です)が、加盟を考える側として説明会に参加する場面を考えます。年末は現場が忙しく、社長だけが説明を聞く形になりがちです。この形では、書面を持ち帰り、経理を担う人と一緒に読み直す時間が、判断の質を決めます。本部の側は、その読み直しの時間を前提に、渡す時期を決めます。
別のサイトの代理店ってなんぼのもん?のコラム「建設業のフランチャイズ加盟で確かめる契約項目」では、開示書面と説明の受け方で土台を確かめる進め方や、契約項目を一覧で見る見方を整理していると書かれています。
出典:代理店ってなんぼのもん?「建設業のフランチャイズ加盟で確かめる契約項目」
説明会を開く側も、受ける側も、見る場所は重なります。期間と更新、商圏の決め方、研修と支援の範囲、中途解約の条件です。なお、確認の答えは、口頭だけでなく書面に残る形が安全です。
ガイドラインで見る、法定開示書面の確認の幅です
まず、公正取引委員会のフランチャイズ・ガイドラインは、小売と飲食だけでなく、全ての業種のフランチャイズに適用される考え方です。中小企業庁の資料でも、その旨が示されています。
次に、ガイドラインで開示が望ましいとされる事項は、幅広い項目です。加盟後の商品などの供給条件、事業活動上の指導の内容と費用の負担、決済の仕組み、損失への補償や経営支援の有無などが挙がっています。さらに、契約の期間と、更新や解除と中途解約の条件も含まれます。店舗の周辺への出店、いわゆるドミナント出店の扱いも、項目のひとつです。
また、予想売上や予想収益を示す場合は、根拠ある事実と合理的な算定方法に基づくことが求められます。さらに、その根拠となる事実と算定方法を、希望する人に示す必要があります。既存の店舗の平均から作った数字は、予想そのものではないことが分かる示し方が求められます。
一方、十分な開示を行わず、または虚偽や誇大な開示を行い、実際の内容よりも著しく優良または有利であると誤認させる場合は、ぎまん的顧客誘引に当たる場合があります。ガイドラインに示された考え方です。そのため、説明会の言葉は、書面で示せる範囲にそろえます。
法定開示書面の確認で迷う場面です
まず、対象の業種ではないため、開示は要らないと考える場面です。答えの方向は、法律の義務と、ガイドラインの考え方を分けて見る、です。義務の対象でなくても、開示の姿勢まで不要になるわけではありません。
次に、中途解約の条件が曖昧なままの場面です。ガイドラインでは、中途解約の条件が不明確だと、加盟の判断が妨げられる点が示されています。そのため、条件と手続きは、契約の文面でも明確にしておきます。なお、違約金に当たる金銭の扱いも、同じ場所で見ます。
また、説明会のその場で決めさせる場面です。ガイドラインでは、希望する人が契約について十分に検討するために必要な期間を置いて、書面を交付して説明する進め方が望ましいとされています。年末の説明会でも、この期間を削らない形が安全です。
よくある質問
まず、「開示書面は、契約の日に渡せばよいですか」と聞かれます。答えは、契約を結ぶ前に渡して説明する、です。検討の時間が前にあってこそ、書面の意味があります。
次に、「収支の数字は、どこまで見ますか」と聞かれます。答えは、立地条件が似た店舗の収支に関する事項も、開示の項目に入る、です。そのため、数字の根拠と、似ていると判断した理由もあわせて見ます。
最後に、「質問への答えは、その場で返しますか」と聞かれます。答えは、答えられる範囲はその場で返し、残りは持ち帰って書面で返す、です。曖昧な答えを、その場で作らないためです。
法定開示書面の確認、今日からできる最初の一歩
まず、自社の募集が法律の対象になるかを書き出してください。次に、開示の項目を、書面と照合します。
さらに、説明会の案内の言葉を、書面の言葉と照らします。法定開示書面の確認は、募集の勢いを落とす作業ではありません。加盟した後の行き違いを、年末のうちに減らす作業です。
なお、照合の結果は、説明会の担当者で共有しておきます。聞く人によって答えが変わる状態を、年内に直すためです。
また、年始の募集では、直した書面から使います。年末の確認は、年始の募集の土台になります。
このように、開示の確認は地味な作業です。ただし、その地味さが、長く続く契約の始まりを支えます。
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