お中元やお歳暮を、毎年「去年と同じリスト」で手配していませんか。
お金をかけても印象に残らないのは、品物ではなく、誰に・いつ・何を添えるかが決まっていないからです。
この記事では、年末のお歳暮を営業につなげる手順を、そのまま使える一言の例文つきでお渡しします。
野村證券のリテール営業で全国約7,000名中1位を4度。いまは代理店開拓で中小企業の販路をつくる会社「コミッターズ」を経営しています。川口です。
去年と同じ名簿で送るのが、いちばんもったいない
お歳暮が営業につながらない会社には、よくある型があります。
- 1全員に同じ品物を、同じ時期に送っています。
- 2名簿が数年前のままで、担当者が替わった先にも送っています。
- 3送ったことを、経理だけが知っています。営業担当は、誰に何を送ったかを把握していません。
3つ目がいちばん痛いところです。せっかく届いたお礼の電話が入っても、営業が何も知らなければ、会話が広がりません。贈答は、経費の処理をして終わりではなく、相手との次の約束をつくる営業の一手です。今は10月の半ばです。年末までまだ2か月あるので、設計する時間は十分にあります。

お歳暮の意味を、営業の言葉に言い直します
税金の面では、お中元やお歳暮は交際費として扱います。国税庁の案内でも、交際費等は「得意先、仕入先その他事業に関係のある者などに対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為」のための支出とされ、贈答が含まれています。1人1万円以下の飲食費という別のルールとは、分けて考える必要があります。
中小法人については、期末の資本金が1億円以下などの場合に、年800万円を限度とする計算が用意されています。事業年度の月数で按分し、どちらの計算を使うかなど、細かい判断は会社の状況で変わります。個別の判断は、税理士など専門家へご相談ください。
大事なのは、ここからです。贈答を営業の言葉に言い直すと、次のようになります。
「年末の挨拶を口実に、来年の最初の面会を取りにいく手段」です。
目的が決まると、品物の選び方も、添える一言も、贈る相手も決まります。令和の総合商社の次の記事では、お中元やお歳暮が交際費になる整理が、わかりやすくまとめられています。経営の土台を整える読み物として、経理の側の知識を先に確認しておくと安心です。
お中元・お歳暮は「1万円以下の飲食ルール」の対象外。贈答は交際費です

贈る相手は3つの箱に分けます
全員に同じ対応をやめて、相手を3つの箱に分けます。
- 1感謝の箱です。売上の大きい取引先や、長く続いている取引先を入れます。目的は、お礼と来年の相談の予約です。
- 2お礼の箱です。新しい仕事を紹介してくれた人を入れます。目的は、紹介の結果の報告と、また紹介してもらえる関係づくりです。
- 3再開の箱です。以前は取引があったのに、いまは止まっている相手を入れます。目的は、軽い挨拶で、もう一度連絡を取るきっかけをつくることです。
私は野村證券の営業で、営業する相手を、資産を持つ方・オーナー社長に絞ったことが転機になりました。行動量は落とさず、向ける先だけを変えました。贈答も同じです。贈る件数を増やすより、誰に贈るかを絞って、意味を持たせる方が効きます。
贈る前に、先方の会社に贈答の受け取りのルールがないか、念のため確認しておきます。受け取れない場合は、品物の代わりに、手書きの挨拶状だけをお送りする方法もあります。
時期と手順の型(5ステップ)
- 110月のうちに、名簿を作り直します。担当者の異動や社名変更を確認し、3つの箱のどれに入るかを書き込みます。
- 211月に、品物と送り状を手配します。贈る目的が「感謝」「お礼」「再開」のどれかを決めて、箱ごとに品物の価格帯をそろえます。
- 3発送前に、一言カードを書きます。印字でも構いませんが、1行だけでも手書きを足すと、気持ちが伝わりやすくなります。
- 4品物が届く頃に、到着の確認を求める文面は避けます。お返事を求めると、相手の負担になります。
- 5年明けの早い時期に、面会か電話の予定を入れます。贈って終わりにせず、ここまでを一つの営業として設計します。
年末は先方も忙しい時期です。届く日が仕事納めの直前にならないよう、余裕を持った日程を選びます。また、リストの人数は、自分が顔と最近の会話を思い出せる範囲に収めるのが現実的です。思い出せない相手は、贈る前に一度、メールか電話で近況を聞くところから始めます。
そのまま使える一言の例文
箱ごとに、一言を変えます。
感謝の箱です。
「本年も大変お世話になりました。来年もお役に立てるよう、○○の件を準備しております。年明けにご挨拶に伺ってもよろしいでしょうか。」
お礼の箱です。
「先日はご紹介をいただき、ありがとうございました。おかげさまで、お仕事のお話を進めることができました。結果をまたご報告に伺います。」
再開の箱です。
「ご無沙汰しております。年の瀬のご挨拶をお送りしました。お返事は不要です。また近況をお聞きできれば幸いです。」
どの文面も、最後に「次にこうします」が入っています。お礼を言うだけで終わらず、次の接点を一つだけ添えるのがコツです。
私は新人時代、毎日、筆ペンで手紙を3〜5枚書いていました。朝いちばんに、上司へ実物を見せる決まりがありました。件数はごまかせても、手紙はごまかせません。文面に気持ちと具体的な次の話があるかどうかは、相手にも伝わります。
記録を残すと、翌年の営業が楽になります
贈答リストには、次の項目を残しておきます。
- 1相手の社名と担当者名、そして関係です。
- 23つの箱のどれか、つまり贈った目的です。
- 3贈った日と、品物です。
- 4金額です。
- 5先方の反応と、次の接点の予定日です。
国税庁の案内では、1人1万円以下の飲食費を交際費から外す場合に、飲食のあった年月日、参加した相手の氏名や名称と関係、参加者の数、費用の額、店の名称と所在地などの記録を残すことが条件になっています。お歳暮は飲食ではありませんが、同じように、誰にいつ何を、何のために、を残しておく型を持つと、経理にも営業にも役立ちます。会食の記録の考え方は、令和の総合商社の次の記事に詳しくあります。
社長の焼肉は会議費?交際費?税務署が見ているのは「肉」ではなく「メモ」だった
そのほか、農産・水産のコーナーにも、贈答や食に関わる実務の解説が並んでいます。

小さな贈り物から、来年の売上は動きます
お歳暮は、大きな予算がある会社だけのものではありません。送る相手を絞り、目的を決め、一言を添え、年明けの予定まで入れます。それだけで、同じ費用でも、結果は変わっていきます。
才能や学歴やコネがなくても、量と設計で営業は変えられます。今日、名簿を開いて、3つの箱に分けるところから始めてみてください。
コミッターズは、代理店開拓で中小企業の販路をつくる会社です。本気で販路を作りたい経営者の方には、60分の無料相談で設計図をお出しします。
参考(外部サイト):国税庁
※一般的な解説です。個別のケースは顧問税理士・社会保険労務士・弁護士などの専門家にご相談ください。