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2026.10.19

仕入れ先をもう1本持つ。飲食店と、選ばれる売り手の条件

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仕入れ先は昔からの1社です。不満はないけれど、新しい話を聞く時間もありません。

その「不満がない」状態が、いちばん危ないかもしれません。仕入れ先が1本の会社は、止まった日に営業まで止まります。

この記事では、飲食店や事業者の仕入れを見直す手順と、売る側が仕入れ先に選ばれる条件を、お米を例にお渡しします。

野村證券のリテール営業で全国約7,000名中1位を4度。いまは代理店開拓で中小企業の販路をつくる会社「コミッターズ」を経営しています。川口です。

仕入れ先が1本だと、何が起きるか

食堂や飲食店にとって、お米は毎日使う材料です。ここが1社に頼り切りだと、次のようなことが起こり得ます。

どれも、仕入れ先が悪いという話ではありません。選択肢が1つしかないと、交渉も判断もできないという話です。価格や銘柄の話はここでは扱いません。見直すのは、「止まったときにどうするか」という設計です。

試しに、紙に3つ書いてみてください。明日、仕入れ先からの納品が止まったら、何日分の在庫がありますか。その間に、どこへ電話をかけますか。お客さんに何と説明しますか。3つ目まですらすら書けたなら、備えはできています。書けなかった行が、2本目を探す理由です。

仕入れ先を見直す5つの確認

今の仕入れ先について、次の5つに答えてみてください。答えに詰まったところが、見直す場所です。

  1. 1連絡は、どのくらいの早さで返ってきますか。急ぎのときに、誰に連絡するかが決まっていますか。
  2. 2欠品や遅れが出たとき、事前に知らせてもらえますか。代わりの提案はありますか。
  3. 3注文の単位や回数は、自店の使い方に合っていますか。多すぎて余る、少なすぎて頻繁に頼む、といったことはありませんか。
  4. 4納品書と請求書は、見て分かる書き方ですか。月末にまとめて確認するとき、迷いませんか。
  5. 5支払いの条件は、書面で確認できますか。

5つのうち2つ以上に不安があるなら、2本目を持つ価値があります。逆に、5つとも問題ないなら、今の仕入れ先は大切な相手です。その場合も、年に1度は同じ問いで見直す日を決めておくと、不満が出る前に手が打てます。

図解:仕入れ先を見直す5つの確認

2本目の持ち方は「小さく、書面で、期間を決めて」

2本目は、いきなり切り替える必要はありません。次の手順で始めます。

  1. 1月にどのくらい使うかを、まず自分の数字でつかみます。
  2. 22本目には、使用量の一部だけを頼みます。全部を移すのは、評価が終わってからです。
  3. 3取引の条件は、文字で残します。注文の単位、納品の日、欠品のときの連絡、支払いの時期を書きます。口約束のままにしないことが大切です。
  4. 43か月などの期間を決めて、1本目と比べます。比べる点は、先の5つの確認です。数字だけでなく、「連絡が気持ちよく取れたか」という現場の感覚も、メモに残してください。

2本目の候補に伝える言い方の例です。

「今の仕入れ先を変えたいわけではありません。欠品のときの備えとして、もう1本持ちたいのです。まずは一部の量で、3か月試させてください。」

1本目に伝えるなら、隠さず、「比較のために他にも話を聞いています」と言うほうが、あとで関係がこじれません。

こうしておくと、1本目の仕入れ先にも、「他と比べながら使っている」という空気が生まれます。互いに緊張感が出て、結果として質のいい取引が続きます。

図解:2本目の持ち方

売る側が、仕入れ先に選ばれる条件

ここからは、売る側の話です。仕入れ先を見直している飲食店は、世の中にたくさんあります。そこで選ばれるには、安さより先に、次の条件を整えます。

初めて会う飲食店には、売り込みの前に、質問を3つ用意します。「今、仕入れで一番困るのはどんなときですか」「仕入れ先に求めることを1つ選ぶなら何ですか」「もう1本あったら、どんな場面で助かりますか」。答えを聞いてから提案すると、断られにくくなります。

私は、月1トン以上お米を使う食堂さんに、「仕入れ先をもう1本持っときません?」と声をかけています。1社から別の1社へ「乗り換えませんか」と言うのではなく、「もう1本」と言うのがポイントです。今の仕入れ先を否定せずに済むので、相手は話を聞きやすくなります。

宮崎支店の新人時代、成果が出ない日が続くと、回る気力が落ちていきました。それが一件の大きい契約で、一気に流れが変わる経験もしました。大口は大きな力になります。ただ、1件に頼り切るのは、売る側にとっても怖いことです。仕入れ先を2本にするのは、売り先を2本にするのと同じ考え方です。1社に頼り切らず、どちらが止まっても動ける形にしておきます。これは買う側にも売る側にも通じる、会社の守り方です。

図解:売り手が選ばれる条件

現物を扱う会社の「社長の自家消費」

お米のように、会社の売り物が現物の場合は、もう1つ注意があります。会社の売り物を社長が家で消費したら、給与の話になります。令和の総合商社の次の記事で、この点を扱っています。

社長が会社の「売り物」を家で食べたら?お米1袋でも、じつは「給与」の話です

仕入れや在庫を増やすと、社長が持ち帰る場面も増えるかもしれません。どこまでが会社の仕入れで、どこからが個人の消費かを、あらかじめ線引きしておくと安心です。持ち帰る分を記録に残す、社員にも同じルールを伝える、といった決めごとを、仕入れを増やす前に用意しておきます。具体的な扱いは、税理士に確認してください。

今週やること

  1. 1主要な仕入れ先ごとに、5つの確認へ答えを書き込みます。
  2. 22本目の候補を、2社だけ探して、条件を書面でもらいます。
  3. 3自社が売り手なら、お客さんの「止まったとき」の困りごとを、1社に聞いてみます。

営業の仕事は、相手の「止まったとき」の備えになることです。お米の仕入れ先をもう1本探している食堂さんのご相談は、コミッターズの無料相談でも受けています。

才能や学歴やコネがなくても、取引の持ち方を設計し直せば、会社の足腰は強くなります。モノの商売に関わる記事は、令和の総合商社のモノ商材のコーナーにまとまっています。経営の土台を整える読み物として、使ってください。

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