12月の売上は悪くなかったのに、1月の下旬に通帳を開いたら、思ったより残高がありません。年末の資金繰りで、わりとよくある話です。
原因のひとつは、従業員から預かっているお金です。給与から天引きした住民税と源泉所得税を、納期の特例で半年分まとめて納めている会社は、12月10日と1月20日に、半年分が2回来ます。つまり、口座に貯まっていた預かり金が、約6週間のあいだに2回出ていきます。
この記事では、2026年10月時点の公的な情報で、年末の資金繰りとして、2026年12月から2027年1月のお金の出入りを、日付順に並べます。仮の会社で数えて、確認する順番も持ち帰れます。
野村證券のリテール営業で全国約7,000名中1位を4度。いまは代理店開拓で中小企業の販路をつくる会社「コミッターズ」を経営しています。川口です。
年末の資金繰り、先に結論
- 納期の特例を使っている会社(給与を払う人数が常時10人未満)は、住民税の6月から11月分を12月10日までに、源泉所得税の7月から12月分を翌年1月20日までに納めます。
- また、12月に賞与を払うと、賞与の社会保険料は翌月の1月末が納付期限です。ただし、2027年は1月31日が日曜日なので、翌営業日の2月1日になります。
- さらに、銀行の休日は12月31日から1月3日です。そのため、2026年は12月30日(水)が年内の最後、1月4日(月)が最初の営業日です。
- なお、12月に納品した分の入金は、取引先の締め日と支払日しだいで、年明けの1月末以降になります。
- 年末の資金繰りは、12月から2月の「出る日」と「入る日」を1枚に並べると、足りなくなる週が見えます。
年末の資金繰りは12月10日と1月20日:半年分が2回来る
給与から引いた所得税(源泉所得税)は、原則として、払った月の翌月10日までに納めます。ただし、給与を払う人数が常時10人未満の会社は、申請して承認を受けると、半年分をまとめて納められます。つまり、これが納期の特例です(国税庁)。
- 1月から6月に源泉徴収した分:7月10日
- 7月から12月に源泉徴収した分:翌年1月20日
また、住民税にも、同じ形の特例があります。給与を払う人数が常時10人未満で、市区町村の承認を受けた会社は、6月から11月分を12月10日まで、12月から翌年5月分を翌年6月10日までに納めます。納期限が土日祝日なら翌日です(東京都中央区の案内。手続きは市区町村で確認してください)。
仮の例です。たとえば、従業員5人の会社で、住民税の天引きが月に合計5万円、源泉所得税の天引きが月に合計4万円だとします。
- 12月10日:住民税の6か月分、5万円×6か月で30万円
- 2027年1月20日:源泉所得税の6か月分、4万円×6か月で24万円
約6週間で合計54万円が出ていきます。この54万円は、従業員から預かったお金で、会社のお金ではありません。ただ、半年のあいだ口座に混ざっているので、残高が多いように見えてしまいます。
年末の資金繰りで、納付額の数字を用意する
次の順で、年末までに数字を用意します。
- 1まず、給与台帳で、6月から11月に天引きした住民税を足し上げる
- 2次に、7月から12月に天引きした源泉所得税を足し上げる(12月分は見込みで書く)
- 3最後に、12月10日と1月20日のカレンダーに、金額を入れる
1月20日の金額は、年末調整のあとで置き換える
年末調整は、1年間に源泉徴収した所得税の合計と、本来の税額との差を精算する手続きです。多すぎた人には差額を還付し、足りない人からは差額を徴収します(国税庁)。そのため、1月20日の金額は、年末調整のあとで置き換えましょう。
12月に賞与を払うなら:社会保険料は1月末
賞与を払うと、2つの手続きが出ます。ひとつは、賞与を払った日から5日以内に、年金事務所へ「被保険者賞与支払届」を出すことです。もうひとつは、賞与にかかる社会保険料の納付です(日本年金機構)。
まず、賞与の保険料は、税引き前の総支給額から1,000円未満を切り捨てた額(標準賞与額)に、保険料率をかけて計算します。また、会社と本人で折半です。賞与を払った月の翌月の納入告知書で通知され、月末までに納めます。つまり、12月の賞与の保険料は、1月末に出ていきます。
仮の例で見る、賞与の社会保険料
仮の例です。たとえば、従業員5人に、1人10万円の賞与を払ったとします。標準賞与額は、1人10万円、合計50万円です。ここに、加入している健康保険と厚生年金の保険料率がかかります。ただし、率は健康保険の種類や都道府県で違うので、実際の金額は、年金事務所からの通知で確認してください。
本人負担分は、賞与を払うときに賞与から引くことができます。
納付期限と、賞与不支給報告書
社会保険料の納付期限は、納付対象月の翌月末日です。ただし、末日が休日なら、翌日以降の最初の営業日になります(日本年金機構)。2027年1月31日は日曜日なので、2月1日(月)です。
賞与の支払予定月として届け出ている月に、賞与を払わなかったときは、賞与支払届のかわりに「賞与不支給報告書」を出します。なお、出さないと、翌々月に催告状が届きます。見落としやすい手続きです。
銀行の休みと、入ってくるお金のずれ
銀行法施行令では、12月31日から翌年1月3日が、銀行の休日です。2026年は、12月30日(水)が年内の最後の営業日で、1月4日(月)が最初の営業日です。また、取引先も年末年始は休む会社が多いので、年末ぎりぎりの請求や入金確認は、予定どおりに進まないことがあります。
12月の売上が、1月末に入るずれ
もうひとつは、入金のずれです。たとえば、月末締め・翌月末払いの取引先を例にします(仮の例です)。
- 11月に納品した分:12月末の入金(12月31日は銀行の休日なので、前倒しか翌営業日かは、取引先との約束で決まります)
- 12月に納品した分:2027年1月末の入金
つまり、12月の売上が好調でも、通帳に入るのは年明けです。12月に出ていくお金は、11月以前の売上で払うことになります。しかも、12月の売上のうち、取引先の締め日に間に合わなかった分は、もう1か月ずれます。請求書を出す日は、取引先の締め日から逆算して決めましょう。
ただし:当てはまらない会社と、個人事業主の場合
なお、ここまでの話が、そのまま当てはまらない場合があります。
- 納期の特例を申請していない会社:毎月納めるので、半年分が一度に来ることはありません。
- 納期の特例を使っていても、給与を払う人数が常時10人以上になった会社:特例の要件を満たさなくなるので、届出が必要です(国税庁)。住民税も同じく、届出書を出します。
- 個人事業主:11月にも山があります。予定納税の対象(前年の申告納税額などから計算した予定納税基準額が15万円以上)の人は、第2期分を11月1日から11月30日に納めます(国税庁)。2026年の11月30日は月曜日です。対象かどうかは、6月15日までに税務署から通知されます。
特例を使っているかどうかが分からないときは、税務署の承認の通知と、市区町村の承認の通知を、顧問税理士や給与計算の担当者に確認してください。
年末の資金繰り、今日からできる最初の一歩
まず、12月から2月の「出る日」と「入る日」を、1枚の紙に並べましょう。
- 1出る日:12月10日、賞与の支払日、年内の仕入先への支払い、1月20日、1月末(2月1日)
- 2入る日:11月末の分、12月末の分、1月末の分(取引先ごとの支払日で)
- 3次に、日ごとの残高を書き、マイナスになる週に印をつける
- 4最後に、印がついたら、12月の早い時期に、取引先との支払条件の相談や、取引銀行への相談を始める
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営業の側でできることもあります。たとえば、12月の請求書は、締め日に間に合う日付で出します。また、入金の予定日も、営業の振り返りの数字に加えます。回収までを営業の仕事に入れると、年末の資金繰りは少し楽になります。
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参考(外部サイト):国税庁、自治体、日本年金機構、日本年金機構(2)、e-Gov法令検索、国税庁(2)
※一般的な解説です。個別のケースは顧問税理士・社会保険労務士・弁護士などの専門家にご相談ください。
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