年末を前に、取引先からの入金が1か月ずれそうです。賞与も払いたいところです。そんなとき、社長の頭に浮かぶのが「小規模企業共済、もう何年も積んでるし、解約しちゃおうかな」という考えです。
ちょっと待ってください。小規模企業共済は、掛金納付月数が240か月(20年)未満で解約すると、戻ってくるお金が掛けたお金の合計を下回ります。しかも、解約しなくても、積んだ掛金を元にお金を借りられる「契約者貸付」という仕組みがあります。さらに地味な話として、借りられる枠は年に2回決まり、そのうち1回の基準日が10月末です。
この記事では、2026年10月時点の中小機構の案内をもとに、契約者貸付の種類、金利と限度額、10月末という日付の意味、解約と比べたときの注意点を整理します。
野村證券のリテール営業で全国約7,000名中1位を4度。いまは代理店開拓で中小企業の販路をつくる会社「コミッターズ」を経営しています。川口です。
先に結論
- 小規模企業共済に入っている人は、納めた掛金の範囲で、担保や保証人なしでお金を借りられます。
- いちばん使いやすい一般貸付は、年1.5%、10万円から2,000万円まで(5万円単位)です。
- 限度額は、納めた掛金の合計の7〜9割で、割合は納付月数によって変わります。
- 4月からの限度額は前年10月末、10月からの限度額は同じ年の4月末の掛金で計算されます。つまり、2026年10月末の掛金が、2027年4月からの枠の元になります。
- 一般貸付を使うには、資格判定の時点(4月末・10月末)までに、12か月以上の掛金を納めている必要があります。
貸付の種類は7つ、金利は2段階
中小機構の案内では、契約者貸付には次の種類があります。金利は2026年10月時点の公式の案内によるもので、変わることがあります。
- 一般貸付:年1.5%、10万〜2,000万円。運転資金など事業に関連する資金のほか、生活資金にも使えます
- 緊急経営安定貸付:年0.9%、50万〜1,000万円。売上の減少について商工会などの確認が必要です
- 傷病災害時貸付:年0.9%、50万〜1,000万円。5日以上の入院や、災害で被害を受けたときなど
- 福祉対応貸付:年0.9%、50万〜1,000万円。本人や同居の親族が65歳以上などで、住宅の改造や福祉機器を買う計画があるとき
- 創業転業時・新規事業展開等貸付:年0.9%、50万〜1,000万円
- 事業承継貸付:年0.9%、50万〜1,000万円
- 廃業準備貸付:年0.9%、50万〜1,000万円。返済は12か月後の一括です
0.9%の貸付は、まとめて「特別貸付」と呼ばれます。金利は低いのですが、多くは事前に中小機構へ申し込みが必要で、「すでに着工した」「すでに買った」ものは対象外といった条件があります。ふだん使いは一般貸付、条件に当てはまる出来事があれば特別貸付、と覚えておくと整理しやすいです。複数の種類をあわせて借りる場合の上限は2,000万円です。
一般貸付の借入期間は、借りる額で選べる幅が変わります。
- 100万円以下:6か月か12か月
- 105万〜300万円:24か月まで
- 305万〜500万円:36か月まで
- 505万円以上:60か月まで
6か月と12か月は期限に一括で返し、24か月以上は6か月ごとに元金を均等に返していく形です。利息は前払いで、期限一括の場合は借りるときにまとめて払います。返済が遅れたときの延滞利子は年14.6%なので、ここは甘く見ないほうがよい数字です。
なぜ「10月末」が大事なのか
ここが、この記事でいちばん伝えたい小ネタです。
中小機構のよくある質問では、一般貸付の限度額は次のように決まると説明されています。
- 4月からの貸付限度額:前年10月末時点の納付済み掛金の合計で計算
- 10月からの貸付限度額:同じ年の4月末時点の納付済み掛金の合計で計算
- 前納している場合:すでに経過した月の掛金だけが計算の対象
つまり、今月末、2026年10月31日の時点で納め終わっている掛金が、2027年4月から使える枠の元になります。また、一般貸付の資格も、4月末と10月末の時点で「12か月以上納めているか」を見て判定されます。前納した掛金は、この12か月に含まれません。
仮の例で考えてみます。月3万円の掛金を、ちょうど5年(60か月)納めている社長(仮)がいるとします。
- 納めた掛金の合計:3万円×60か月=180万円
- 限度額の目安:180万円の7〜9割なので、126万〜162万円のどこか(実際の割合は納付月数で決まり、5万円単位)
この社長が、年末の資金のつなぎに100万円を12か月で借りたとします。単純に年1.5%で計算すると、利息は1万5,000円で、借りるときに前払いします(仮の単純計算です。実際の額は窓口で確認してください)。
限度額の具体的な数字は、毎年3月に届く「掛金納付状況及び貸付限度額等のお知らせ」に書かれています。10月から変わる分は、10月以降に共済相談室へ問い合わせて確認する形です。すでに借りている人が追加で借りられるのは、限度額から今の借入残高を引いた額です。
解約と比べると、どこが違うのか
お金が必要になったとき、解約と貸付のどちらを選ぶかで、その後が大きく変わります。制度のしおりから、解約の注意点を並べます。
- 掛金納付月数が12か月未満で解約すると、掛け捨てになります
- 240か月(20年)未満で解約すると、解約手当金は掛金の合計を下回ります
- 掛金の月額を途中で変えている場合は、240か月以上でも下回ることがあります
貸付なら、共済の契約はそのまま続きます。掛金納付月数も積み上がり続けるので、将来の共済金の計算で不利になりにくいのが大きな違いです。小規模企業共済の掛金は全額が所得控除になり、受け取るときにも税制上の優遇があります。この仕組みを途中で手放さずに済む点が、貸付のいちばんの意味です。制度そのものの仕組みは、こちらの記事で整理しています。
社長の退職金は自分で作る。小規模企業共済は「全額所得控除」で、受け取るときも優遇される
ただし、貸付にも注意点があります。
- 借りたお金は借金です。返さないまま共済金を受け取る場面になると、しおりでは、未返済の貸付金などを差し引いた額で受け取り方の条件を判断するとされています
- 掛金を払うのがつらいときは、掛金の減額(下限は月1,000円、500円単位)や、6か月か12か月の掛止めという選択肢もあります。ただし掛止めの期間は、共済の契約期間に数えられません
- 借りる窓口は、登録した代理店(登録がなければ商工組合中央金庫の本店・支店)です。手続きの前に、どこが自分の窓口か確認しておきます
今日からできる最初の一歩
最初の一歩は、手元の「掛金納付状況及び貸付限度額等のお知らせ」を探して、今の貸付限度額と窓口を見ておくことです。見つからなければ、共済相談室に問い合わせれば教えてもらえます。使う予定がなくても、「いざとなったら、いくら、どこで、何日くらいで借りられるか」を知っているだけで、資金繰りの打ち手が1つ増えます。
2つの共済を並べたときの守りの順番は、こちらの記事にあります。
売上が落ちた年に社長を守る2つの共済。攻めの営業を止めない守りの順番
資金のつなぎ先を持っておくと、売上が落ちた月でも、営業の手を止めずに済みます。新しい取引先を開拓するには時間がかかるので、その間をどうしのぐかを先に決めておくのも、立派な営業の準備です。借りるかどうか、ほかの借入と比べてどうかは、顧問税理士や取引のある金融機関にも相談してください。
運営元:コミッターズ
令和の総合商社では、有形無形問わずに大手商社が行わないマーケティングで貴社の販路を開拓します。本気で販路を拡大したい方には60分間無料で相談に乗らせていただきます。
参考(外部サイト):中小機構、中小機構(2)、中小機構(3)、中小機構(4)
※一般的な解説です。個別のケースは顧問税理士・社会保険労務士・弁護士などの専門家にご相談ください。