年末が近づくと、倉庫の奥の段ボールが急に存在感を増します。棚卸しのやり方は、毎年なんとなく同じ進め方で済ませている会社も多いはずです。
ただし、数え方にはいくつか型があります。さらに、型によって、年末の手間のかかり方と、帳簿との合わせ方が変わります。
この記事では、実地棚卸と循環棚卸と帳簿棚卸の3つを、数える範囲と手間の軸で比べます。あわせて、数えたあとの評価と、棚卸表の保存の入口まで整理します。
野村證券のリテール営業で全国約7,000名中1位を4度。いまは代理店開拓で中小企業の販路をつくる会社「コミッターズ」を経営しています。川口です。
棚卸しのやり方、先に結論
先に結論です。棚卸しのやり方は、どれが正しいかではなく、年末に現物をどこまで数え、普段の記録をどこまで使うかで選びます。
- 実地棚卸は、決めた日に現物を全部数えるやり方です
- 循環棚卸は、場所や品目を区切って、順番に数えていくやり方です
- 帳簿棚卸は、出入りの記録から残りの数を出すやり方です
つまり、比べる軸は、数える範囲と、帳簿と合わせる手間の2つです。次に、3つのやり方を同じ型で見ていきます。
なお、国税庁の決算の手引きでは、棚卸しは12月31日に行うものとされています。ただし、多忙で年末にできない場合は、多少前後した日に数え、その間の売上げや仕入れから12月31日現在の棚卸高を計算し、計算方法を明らかにしておく形も示されています。
棚卸しのやり方、3つの違いを比べます
まず、3つのやり方に共通するのは、種類と品質と型の別に数量を調べる点です。国税庁の手引きでも、商品や消耗品は種類・品質・型などの別に、その数量を実地に調べると書かれています。
一方で、数える範囲と時期は、やり方ごとに違います。たとえば、建設会社なら、倉庫の資材と、現場ごとに置いた備品とでは、数えやすい場所も時期も変わります。
実地棚卸は、現物を全部数えるやり方です
モノ商材の仕入れや売り方についての相談は、令和の総合商社で受け付けています。 お問い合わせページからご相談ください。
実地棚卸は、決めた日に、倉庫と店と現場の置き場を回り、現物を1つずつ数えるやり方です。数えた結果は、そのまま棚卸表のもとになります。
向く場面は、品目が少なく、年末の営業を止められる会社です。また、帳簿の数字と現物がどれだけずれているかを、年に一度はっきりさせたい会社にも向きます。
ただし、当日に全部を数えるため、人手と時間が集中します。そのため、数える人と記録する人を分ける段取りを、先に決めておく必要があります。
循環棚卸は、場所を区切って順に数えるやり方です
循環棚卸は、置き場や品目を区切り、順番を決めて少しずつ数えていくやり方です。年末の一度に全部を数える代わりに、区切った範囲ごとに現物と記録を合わせます。
向く場面は、品目が多く、年末も出荷や現場の動きが止まらない会社です。たとえば、資材の置き場は今週、工具と備品の棚は来週、という分け方ができます。
一方で、区切る単位と順番を決めておかないと、数えた場所と数えていない場所が混ざります。なお、年末の数字に使うときは、数えた日と年末の間の出入りを、記録から足し引きする手順もあわせて決めます。
帳簿棚卸は、出入りの記録から残りを出すやり方です
モノ商材の仕入れや売り方についての相談は、令和の総合商社で受け付けています。 お問い合わせページからご相談ください。
帳簿棚卸は、仕入れと売上げと出庫の記録から、残っているはずの数を計算で出すやり方です。現物を数える代わりに、記録の正確さが土台になります。
国税庁の手引きには、商品出入帳などを設けて毎日の在庫量を明らかにし、毎年一定の時期に実地に棚卸しをして、その正否を確かめている場合は、その記録を基に年末の棚卸高を計算できることも書かれています。
つまり、帳簿棚卸は、記録だけに閉じるやり方ではありません。実地の確認と組み合わせる前提で読むと、現場の段取りと合います。
棚卸しのやり方で迷うのは、評価と保存の入口です
次に、数えたあとの話です。数量がそろったら、次は金額に直す評価の段階に入ります。
評価方法は、あらかじめ税務署へ届け出ている方法で計算するのが基本です。届け出ていない場合は、最終仕入原価法で評価することになります。最終仕入原価法は、年末に一番近い時期に仕入れた単価に、年末の数量を掛ける計算です。
また、破損したものや棚ざらしで通常の販売価額では売れないものは、ほかの棚卸資産と区別して、12月31日現在の処分可能価額で評価することもできます。さらに、製造の過程で出た著しく少額な仕損じ品や作業くずは、1円以上の備忘価額で評価する形も示されています。建設の現場で出る端材や作業くずの扱いも、この入口で分けて考えます。
ここで迷うのは、自分の会社がどの評価方法を届け出ているか、そもそも届け出ているかどうかです。その確認のしかたと、今年の在庫の評価の進め方は、コミッターズの無料相談でお答えします。
棚卸表の保存は、数えたメモと一緒に残します
さらに、作った棚卸表の保存も、年末の仕事の一部です。国税庁の案内では、青色申告の場合、棚卸表などの決算関係書類は7年の保存とされています。そのため、数えたときのメモなどの原始記録も、棚卸表と一緒に保存しておく形が手引きに示されています。
別のサイトのポチっと雑貨店長(ニコニコデスク)のコラム「在庫を持たない雑貨販売の始め方」では、在庫を仕入先に置く形について「納期や梱包の質を自分で管理したい場合は、向きにくい形です」と書かれています。
つまり、在庫を自分で持つ会社ほど、数え方の型を先に決める意味があります。なお、仕入れた商品は売れるまで経費にならない記事でも紹介しましたが、棚卸しは、その経費の計算の土台にもなります。
棚卸しのやり方、今日の最初の一歩
最初の一歩は、置き場の一覧を作ることです。まず、倉庫、店、現場の置き場を書き出します。次に、置き場ごとに、全部を一度に数えられるか、区切って数えるかを分けます。
モノ商材の仕入れや売り方についての相談は、令和の総合商社で受け付けています。 お問い合わせページからご相談ください。
そして、普段の出入りの記録がどこまでそろっているかを、その場で確かめます。記録がそろっている置き場は帳簿の数字と比べ、そろっていない置き場は実地で数える、という振り分けが今年の型になります。
さらに、振り分けの一覧は、棚卸表と一緒に残しておきます。実は、来年の年末に、今年の型をそのまま使えるかどうかを比べる材料になります。
よくある質問
ここでは、棚卸しのやり方でよく聞かれる質問に答えます。
年末に数えられないときは、どうするのか、と聞かれます。答えは、多少前後した日に数え、その間の売上げや仕入れから12月31日現在の数を計算し、計算方法を明らかにしておく形です。
消耗品も数えるのか、と聞かれます。答えは、まだ使っていない包装材料や事務用品なども棚卸しの対象です。ただし、通常の年に比べて特に増えていない消耗品などは、省略しても差し支えないと手引きに書かれています。
現場に置いたままの資材は、どうするのか、と聞かれます。答えは、置き場の一覧に現場も入れて、同じ型で数えることです。倉庫だけを数えると、帳簿とのずれの場所が分からなくなります。
合わせて読みたい
仕入れた商品は売れるまで経費にならない記事では、売れ残りの在庫と経費の関係を整理しています。
仕入れた商品は「売れるまで」経費にならない。売れ残り在庫のホントのルール
モノ商材フロアのほかの記事は、こちらから探せます。
「1F モノ商材フロア」の歩き方。暮らしの道具・お店の道具の選び方と、在庫・経費のルール
ほかのコラムも、あわせてどうぞ
お金の学び(ウハウハ高等学校):ウハウハ高等学校の新着コラム
営業・販路のコラム:コミッターズ コラム
筆者の記事:川口忠大のnote
蓄電池を知る(ENERGY BANK):系統用蓄電池の低圧・高圧比較|法人が費用と接続条件で選ぶ方法
導入先を比べる:系統用蓄電池メーカー比較|法人が製品・導入支援・保守を同じ条件で見る方法
お金の面を読む:系統用蓄電池の充電コストを読む|調達契約と託送料金
情報サイトのトップ:ENERGY BANK(系統用蓄電池の情報サイト)
運営元:コミッターズ
令和の総合商社では、有形無形問わずに大手商社が行わないマーケティングで貴社の販路を開拓します。本気で販路を拡大したい方には60分間無料で相談に乗らせていただきます。
※一般的な解説です。個別のケースは顧問税理士・社会保険労務士・弁護士などの専門家にご相談ください。
会社の現場の工夫や取り組みは、みんなの企業新聞の記事「提携先・協業先を探すときのマッチングサイト活用法」でも紹介しています。あわせてご覧ください。