ノベルティを数百個作ったのに、問い合わせは増えません。段ボールだけが事務所に残っています。
意外な原因は、品物の出来ではなく、誰に配るかが決まっていないことです。
この記事では、ノベルティを配る相手を決める営業設計と、広告宣伝費と交際費の違いを、そのまま持ち帰れる形でお渡しします。
野村證券のリテール営業で全国約7,000名中1位を4度。いまは代理店開拓で中小企業の販路をつくる会社「コミッターズ」を経営しています。川口です。
名刺を1000枚集めて、売上がほぼゼロだった話
私は起業したあと、交流会で集めた名刺が1000枚を超えました。それでも売上は、ほぼゼロでした。
名刺は、集めること自体が目的になりやすい道具です。ノベルティも同じです。作って、配って、配り終わると、仕事をした気持ちになります。しかし、誰に渡して、何が次につながったのかが、手元に残りません。
野村證券の営業で転機になったのは、営業する相手を、資産を持つ方・オーナー社長に絞ったことでした。行動量は落とさず、向ける先だけを変えました。ノベルティも、配る数を増やす前に、向ける先を絞ります。同じ100個でも、絞った100人に渡すのと、通りすがりの100人に渡すのとでは、その後の動きが別物になります。
配る相手で、会計の扱いも分かれる
営業の設計に入る前に、会計の側の基本を確認します。令和の総合商社に、ノベルティは広告宣伝費か交際費かという解説があり、配る相手で分かれるという整理です。
ノベルティの扱いが配る相手で分かれる点は、こちらの記事にあります。
ノベルティは経費?「広告宣伝費」と「交際費」の分かれ道は、配る相手です
国税庁の説明では、交際費等とは、得意先、仕入先その他事業に関係のある者などに対する接待、供応、慰安、贈答などのために支出する費用をいいます。一方、次のような不特定多数の者に対する宣伝的効果を意図した費用は、広告宣伝費の例として挙げられています。
- 抽選による一般消費者への金品の交付
- 商品の購入者を対象とした招待(事前に広告宣伝されたもの)
- 小売業者による商品購入者への景品の交付
- 得意先などへ、見本品や試用品を提供するために通常要する費用
- 一般消費者へのモニターやアンケートの謝礼
また、カレンダー、手帳、扇子、うちわ、手ぬぐいなどの物品を贈与するために通常要する費用は、交際費等から除かれます。
ここで注意したいのは、「一般消費者」に当たらない例として、医師や病院、美容業者や理容業者、大工などの建築業者、農家、鉄工業者などが挙げられている点です。お客さんが事業者の場合は、一般消費者向けの景品のようには扱えない場合があります。配る相手の職業によっても変わるということです。
個別の判断は税理士・社会保険労務士など専門家へご相談ください。ノベルティの品物と配る相手によって、扱いが分かれます。

営業の設計は、配る相手を3つに分けることから
会計の扱いを踏まえたうえで、営業の設計に戻ります。配る相手は、次の3つに分けて考えます。
- 1通りすがりの方(店頭、展示会、イベントの来場者)
- 2見込み客(会いたい相手、商談の前後の相手)
- 3既存のお客さん(すでに取引のある相手)
それぞれ、目的と渡し方が違います。
- 通りすがりの方:目的は名前を覚えてもらうこと。渡す場面は、店頭や会場での一言のあと。次の動きは、問い合わせ先が目に入る形にしておくこと
- 見込み客:目的は、次の約束を取りつけること。渡す場面は、商談の終わりか、訪問の最初。次の動きは、1週間以内の連絡
- 既存のお客さん:目的は、関係を続けること。渡す場面は、納品や更新のタイミング。次の動きは、次の注文や紹介の相談
おすすめは、最初は2番の見込み客だけに絞ることです。会いたい相手を10人決めて、その10人に渡す。1番の通りすがりの方は、それができてから考えれば間に合います。
10人に渡して、何人から返事が来たかは、1週間後に数えられます。数えられる規模で試すと、返事が少なかったときに、品物を変えるべきか、相手を変えるべきか、一言を変えるべきかを、切り分けて考えられます。数百個を一度に配ってしまうと、この切り分けができません。
渡す一言と、渡したあとの動きを決める
品物を渡すだけでは、相手は「もらった」という記憶しか持ちません。一言と、あとの動きを、先に決めておきます。
渡す一言の言い回し例:
- 見込み客へ:「御社のお客さまにも使いやすいと思って、お持ちしました。」
- 既存のお客さんへ:「いつもありがとうございます。社内で使ってください。」
- 通りすがりの方へ:「よかったらどうぞ。裏に連絡先が書いてあります。」
渡したあとの動き:
- 1渡した相手の名前と日付を、その日のうちにメモする
- 21週間以内に、お礼か近況の連絡を入れる
- 3連絡の返事があったか、なかったかを記録する
野村證券の宮崎支店の新人時代、私は毎日、手紙を3〜5枚書いていました。朝いちばんに、上司へ実物を見せる決まりでした。件数はごまかせても、手紙はごまかせません。ノベルティも、配った数ではなく、渡したあとの連絡の実物で、成果が見えてきます。

発注の数は、配る相手の数から逆算する
ノベルティを注文するときは、品物から決めずに、配る相手の人数から決めます。たとえば、今月会いたい見込み客が10人なら、その10人に渡す数と、予備を少し足した数が、発注の目安です。数が多いほど単価が下がることもありますが、余った分は、事務所の場所を取り、使われないまま古くなります。
令和の総合商社の記事には、仕入れた商品は売れるまで経費にならず、期末の在庫は資産になるという解説があります。
売り物の在庫と経費の考え方は、こちらの記事にあります。
仕入れた商品は「売れるまで」経費にならない。売れ残り在庫のホントのルール
ノベルティは売り物ではありませんが、発注の数を決めるときの考え方は同じです。余らせれば、置き場所や管理の手間という負担が残ります。期末に未配布のノベルティが残った場合の会計上の扱いは、数量や金額、品物によって判断が変わる場合があります。発注の前に、税理士に確認しておくと安心です。
配る前の確認
最後に、発注の前の確認です。
- 配る相手を、3つのうちどれか決めた
- 最初は、会いたい見込み客10人など、人数を絞った
- 渡す一言を、1行で言える
- 渡したあとの連絡を、1週間以内に入れる決まりにした
- 発注の数を、配る相手の人数から逆算した
- 会計の扱いを、発注の前に税理士へ確認した

名刺を1000枚集めて売上がほぼゼロだった私は、そう考えています。配る数を増やすより、会いたい相手を決めることが先です。才能も学歴もコネもなくても、配る相手を決めて、連絡を続ける量で、営業は変えられます。
商品や在庫、ノベルティの経費といった話題は、令和の総合商社のモノ商材のコーナーにまとまっています。ノベルティの次に、商品や在庫の見直しをしたいときの確認先として、役立ててください。
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※一般的な解説です。個別のケースは顧問税理士・社会保険労務士・弁護士などの専門家にご相談ください。