名前入りのタオル、ボールペン、お米のミニパック。商材を扱う会社なら、ノベルティを作る機会は多いですよね。「宣伝のためだから、広告宣伝費でしょ?」と思いがちですが、実は配る相手によって、勘定科目が変わることがあります。
この違いは、経費の「枠」に関わるので、小さな会社でも知っておいて損はありません。
先に結論:不特定多数なら広告宣伝費、特定の相手なら交際費
- 不特定多数の人に、宣伝を目的として配る費用は、広告宣伝費です。
- 特定の取引先などに贈る物は、原則として交際費です。
- 資本金1億円以下の会社なら、交際費は年800万円まで(または飲食費の50%)が損金にできます。広告宣伝費には、この枠はありません。
2つの場面で比べる
- 場面A:展示会で、来場者みんなに名入りのタオル(1枚300円×500枚=15万円)を配る → 相手は不特定多数、目的は宣伝 → 広告宣伝費
- 場面B:大事な取引先のA社に、ちょっと高級な名入りタオルセット(1万円)を贈る → 相手は特定、目的は贈答 → 交際費
同じタオルでも、「誰に」「何のために」で、勘定科目が変わります。
- 展示会で来場者に配る名入りグッズ
- 店頭・イベントで不特定多数に配る試供品
- 商品パンフレットや、チラシ
- 特定の取引先への贈答品
- お中元・お歳暮
- 商談のお礼の品物
「ノベルティ」という名前の贈答に注意
ここが、いちばんのグレーゾーンです。特定の取引先に渡す高価な品物を、「ノベルティ」「宣伝グッズ」と呼んで、広告宣伝費で処理する。名前を変えても、実質が贈答なら、交際費として扱われるのが基本です。調査のときに説明できるかどうかが、線引きの目安になります。
なお、飲食費には「1人1万円以下」のルールがありますが、これは飲食の話で、ノベルティや贈答品には使えません。贈り物の扱いは、お中元・お歳暮の経費の記事で詳しく書いています。
- 1配る相手が、不特定か特定かを分ける
- 2目的が、宣伝か贈答かを確認する
- 3配った日・数・場所・目的を、1行でメモする
- 4特定の相手に渡した分は、交際費として記録する
展示会やイベントの前に、「配布数・配布場所・目的」を書いた1枚のメモを作っておきましょう。配った後に、実際の数と残りを書き足すだけで、記録が完成します。
ありがちな失敗3つ
- 領収書が「ノベルティ代」だけ:何を何個作ったのか、あとから分からなくなります。見積書や納品書も一緒に保管しましょう。
- 配った先の記録がない:「広告宣伝か、贈答か」を説明する材料がなくなります。
- 高価なグッズを、特定の取引先へ:宣伝というより贈り物と見られやすく、交際費に近づきます。
配ったあとの記録は、3行でいい
- いつ・どこで配ったか(例:10月の展示会、会場の入口)
- 何を何個配ったか(例:名入りタオル500枚、単価300円)
- 誰向けか(来場者全員/○○社の担当者)
この3行があるだけで、「広告宣伝か、贈答か」の説明がぐっとしやすくなります。
買った人全員に配るなら、「景品の上限」にも注意
ノベルティを、商品を買ってくれた人全員におまけで付ける場合は、税金とは別に、景品表示法の「景品の上限」が関係します(総付景品といわれます)。目安は次のとおりです。
- 商品の価格が1,000円未満:景品は200円まで
- 商品の価格が1,000円以上:景品は商品の価格の20%まで(3,000円の商品なら、600円まで)
展示会で誰にでも配る販促グッズなどは、この話とは別です。ただし、「買ったらもれなくプレゼント」にするときは、おまけの価値が高すぎないかを確認しましょう。業種によって別のルールがあることもあります。
発注前のチェックリスト
- 誰に・どこで配るか決めたか(不特定多数か、特定の取引先か)
- 1個あたりの金額は、配る目的に合っているか
- 配った記録(日時・場所・数量)を残す担当者は決めたか
- 数年分をまとめて作らないか(期末の在庫が増えすぎないか)
配る相手で、扱いが変わります
ノベルティは、誰に配るかで税務上の扱いが変わりやすい物です。不特定多数に広く配るなら広告宣伝費、特定の取引先に贈るなら交際費になるのが基本です。展示会で来場者に配る、街頭で通行人に配る場合は前者、特定の取引先に年末のあいさつ品として贈る場合は後者です。飲み会や接待の記録の残し方は、会議費と交際費の線引きの記事でくわしく書いています。
記録を残しておくと、迷いません
- いつ、何のために配ったか
- 誰に(不特定多数か、特定の取引先か)
- いくら分を、何個
この3つを、メモ1枚でも残しておくと、決算のときに分類で悩みません。
安い物でも、数が多いと金額になります
1個あたりの単価が小さくても、数百個、数千個になれば総額は大きくなります。1個の値段ではなく、総額で見て、広告宣伝費として説明できる使い方になっているか、一度振り返っておきましょう。
まとめ買いで、期末に残ったら?
名入りタオル1,000枚を30万円で作り、期末に700枚が残ったとします。配った300枚分(9万円)は経費になりやすい一方、残りの21万円分は在庫(貯蔵品)として扱う考え方があります。ただし、広告宣伝用のグッズは、毎年おおむね一定の量を買って使い切るなら、買ったときに経費にする取り扱いもあります。金額が大きいときや、数年分をまとめ買いしたときは、顧問税理士に処理を確認してから発注すると安心です。
よくある質問
Q. 1個あたり、いくらまでなら広告宣伝費?
A. 一律の金額で決まっているわけではなく、物の内容・配り方・相手を合わせて判断されます。迷うときは、配る目的と相手をメモしておきましょう。
Q. 取引先に配った名入りカレンダーは?
A. 社名や商品名が大きく入った、宣伝が目的の安価なものは、広告宣伝費として扱われることが多いです。ただし、高価なものは贈答(交際費)に近づきます。
まとめ:勘定科目は、名前ではなく中身で決まる
広告宣伝費と交際費は、「配る相手」と「目的」で分かれます。名前だけで判断せず、実際に誰に何のために渡したかを、記録に残しておきましょう。
※一般的な解説です。個別のケースは顧問税理士などの専門家にご相談ください。