メールで届いた請求書のPDF。「とりあえず印刷してファイルに綴じておけば安心でしょ」と思っていませんか。実は、2024年1月から、これは保存方法として認められないルールになっています。
難しそうな話ですが、小さな会社なら、やることはほとんどありません。ポイントだけ、さらっと押さえましょう。
先に結論:メールやネットで受け取ったものは「データのまま」残す
- メール添付のPDF、ネット通販の領収書のダウンロード、クラウド請求書サービスの書類などは「電子取引」のデータです。
- これらはデータのまま保存するのが原則。紙に印刷しただけ、あるいは印刷したものをスキャンしただけでは、保存したことになりません。
- 基準期間の売上が5,000万円以下の会社は、データの検索機能(日付・金額・取引先で探せる仕組み)は不要です。ただし、税務調査でデータのダウンロードを求められたら、応じられる状態にしておく必要があります。
なお、紙で受け取った領収書は、これまでどおり紙で保存してかまいません。今回のルールは、あくまで「データで受け取ったもの」の話です。
どんなものが電子取引? よくある例
- 取引先からメールで届いた請求書・見積書・納品書のPDF
- Amazonや楽天など、ネット通販の領収書(ダウンロードしたもの)
- クラウドの請求書サービス、予約サイトの領収書
- ネットバンキングの振込明細(データで受け取ったもの)
「画面に表示されるだけ」のものも、あとから見られなくなるなら、ダウンロードして残しておくのが安全です。
- メールのPDFをフォルダに保存する
- ダウンロードした領収書データを残す
- クラウド会計ソフトに取り込む
- バックアップを別の場所にも置く
- 印刷だけして、元のデータを消す
- 画面のスクリーンショットだけ残す
- 印刷した紙をスキャンして、元のデータは消す
- 担当者のパソコンにだけ入れている
小さな会社の、いちばんラクなやり方
- 1受け取ったPDFを、すぐ「請求書・領収書」フォルダに入れる
- 2フォルダを年・月で分けておく(例:2026年/10月)
- 3探しやすいように、ファイル名に日付・取引先・金額を入れる
- 4クラウドなど、別の場所にもバックアップを取る
ファイル名の例は「20261019_Amazon_3980円.pdf」のような形です。小さな会社では必須ではありませんが、あとで探すときに助かります。
「相当の理由」があるときは?
2024年1月からは、システム対応が難しいなど「相当の理由」があって、税務調査でデータと、整理された書面の両方を提示できるなら、保存要件に沿った対応ができなくても認められる、という猶予措置があります。ただ、「やっていないけど、あとで言い訳する」ための制度ではありません。まずはフォルダ保存から始めるのが、いちばん確実です。
法人の場合、帳簿書類の保存期間は原則7年とされています。電子取引のデータも、同じ期間は残しておきましょう。パソコンを買い替えたときに、データが消えないよう注意してください。
「改ざんしていません」を示す、もうひとつの条件
電子データの保存では、データがあとから書き換えられていないことを示す工夫も求められます。方法はいくつかありますが、小さな会社でいちばん現実的なのは、「訂正・削除の防止に関する事務処理規程」を1枚作ることです。国税庁のサイトに、サンプルが公開されています。個人に仕事を頼むときのメールの書き方は、フリーランス法の記事で整理しています。
ほかにも、タイムスタンプを使う方法や、訂正・削除の履歴が残るシステムを使う方法があります。会計ソフトやクラウド請求書サービスを使っている会社は、そのサービスが要件に対応しているかを確認してみましょう。
自分が送った請求書も、保存の対象
受け取った側だけでなく、メールで送った請求書・見積書の控えも、電子取引のデータとして残す必要があります。送信済みメールの添付ファイルや、会計ソフトで作成した控えを、同じフォルダにまとめておきましょう。
保存場所の落とし穴
- 社長のメールボックスだけに入れている:アカウントを変えたり、容量が足りなくなったりして、消えることがあります。
- 取引先のサイトに、ダウンロード期限がある:期限が過ぎると取れなくなるので、見つけたらその場で保存しましょう。
- パソコン1台だけに置いている:故障に備えて、クラウドや外付けディスクにバックアップを取っておきます。
よくある質問
Q. 紙の領収書をスマホで撮るのは、電子取引?
A. 紙で受け取ったものを撮影して残すのは「スキャナ保存」という別のルールの話です。紙のまま保存しても、これまでどおり問題ありません。
Q. 会計ソフトを使っていれば大丈夫?
A. 要件に対応したソフトなら、保存の手間が減ります。ただし、ソフトに取り込んでいないメールのPDFは、別にフォルダで保存しておく必要があります。
ファイル名のつけ方:これだけ決めればラクになる
電子取引のデータは、「日付・金額・取引先」で探せる状態にしておくのが基本です(基準期間の売上が5,000万円以下なら検索機能までは不要ですが、整理しておくと便利です)。いちばん簡単なのは、ファイル名にその3つを入れてしまう方法です。
- 例:20261015_株式会社サンプル商事_55000(日付_取引先_金額)
- 請求書か領収書かを区別したいときは、末尾に「請求書」「領収書」を足す
- フォルダは「年→月」で分ける(例:2026→10)
ルールは、会社で1つに決めておけば十分です。誰が保存しても同じ名前になるのが大切です。
URLでダウンロードするタイプの請求書は、要注意
クラウド型の請求書サービスでは、メールにURLだけが書かれていて、そこから請求書を取りに行く形のものがあります。ログインしないと見られない仕組みのままだと、サービスを解約したあとに見られなくなるおそれがあります。届いたら、その場でPDFをダウンロードして、自社のフォルダに保存しておきましょう。帳簿書類は原則7年の保存が必要なので、「7年後も開けるか」を基準に考えると安心です。年に一度の見直しは、10月の5つのチェックにまとめています。
まとめ:まずは「印刷しない」ところから
「PDFが来たら、印刷せずにフォルダへ」。この1つの習慣を作るだけで、電子取引のルールのほとんどはクリアできます。細かい要件は国税庁の案内で確認しつつ、まずは今日届いた1通から、フォルダに入れてみましょう。
※一般的な解説です。個別のケースは顧問税理士などの専門家にご相談ください。