「置かせてください」と頭を下げたら、店主さんが「じゃあ、委託でいいですよ」と言ってくれました。たしかに、帰り道の足取りは、きっと軽かったはずです。ところが3か月後、売れたのか売れていないのか、お金はいつ入るのか、さっぱり分かりません。
ここで、意外な話をひとつ紹介します。委託販売の売上は、お店に商品を納めた日には立ちません。税金のルールでは、お店がお客様に売った日が、あなたの売上の日になります。棚に並べた日に拍手をもらっても、帳簿の上では、まだ何も起きていません。
この記事では、買取と委託の違い、委託販売の売上に数える日、置いてもらう前に聞いておく5つの条件をお話しします。さらに、日付つきの例も出します。なお、2026年10月時点のルールです。
野村證券のリテール営業で全国約7,000名中1位を4度。いまは代理店開拓で中小企業の販路をつくる会社「コミッターズ」を経営しています。川口です。
委託販売の売上、先に結論:「お店が売った日」
まず、委託販売では、商品をお店に置いても、持ち主はあなたのままです。お店がお客様に売ったときに、はじめて売上になります。通達には、次のように書かれています。
- 法人:受託者(お店)が委託品を販売した日の属する事業年度の収益とされています(法人税基本通達2-1-3)
- 個人事業主:受託者がその委託品を販売した日の収入とされています(所得税基本通達36-8)
- 消費税:委託者の資産の譲渡の日は、受託者が譲渡した日とされています(消費税法基本通達9-1-3)
ただし、お店が売上計算書(いつ、何個、いくらで売れたかの一覧)を送ってくれる場合は、「売上計算書が届いた日」を売上の日にする方法も認められています。ただし条件は、その方法を続けることです。
一方、買取なら話が変わります。お店に商品を引き渡した時点で売上になるのが基本です。また、法人税基本通達2-1-2では、出荷した日、お店に着いた日、お店が検収した日などのうち、合理的な日を継続して使う、とされています。
買取と委託で、営業トークが変わります
まず、お店の側から見てみましょう。
- 買取:お店が商品を仕入れます。先に代金を払い、売れ残りもお店が抱えます。その結果、お店は慎重になります
- 委託:お店は商品を預かって売ります。売れた分だけ手数料を取り、売れ残りはあなたのものとして残ります
買取と委託販売の売上の出方
この違いは、営業トークにも出ます。買取をお願いするなら、お店の負担が小さい入口を作るのがコツです。たとえば「まず売れ筋の3種類を、5個ずつから」です。一方で委託なら、「売れた分だけで結構です」と言えるぶん、置いてもらいやすくなります。そのかわり、在庫と売れ残りは、あなたが持つことになります。
では、数字で比べてみます(仮の例です)。売値1,500円の雑貨を、20個納めるとします。
- 買取(卸値は売値の60%で900円):900円 × 20個 = 18,000円
- 委託(お店の取り分は売値の30%):1個売れるごとに、あなたの取り分は1,050円
たとえば委託で10個売れたら、1,050円 × 10個 = 10,500円です。20個すべて売れれば21,000円、3個しか売れなければ3,150円です。つまり買取は金額が小さめでも、納めた時点で決まります。委託は、売れ方しだいで買取を上回ることも、下回ることもあります。
お店が仕入れて自分の名前で売る形と、手数料をもらって売る形の違いは、こちらの記事でも整理しています。
「代理店契約」のはずが、中身は「販売店」だった?契約の3つの型と、決めておくこと
委託販売の売上に数える日:日付つきで見てみます
たとえば、12月決算の会社が、12月20日に雑貨20個を委託で納めたとします(仮の例です)。
- 12月20日:お店に20個を納品
- 12月28日:お店で3個が売れます
- 1月10日:お店から、12月分の売上計算書が届きます(3個売れたと書いてあります)
- 1月25日:3個分の代金(手数料を引いた額)が振り込まれます
この例で売上になるのは、12月28日に売れた3個です。12月決算なら、今期の売上です。つまり、納品した20日でも、お金が入った1月25日でもありません。
売上計算書が届いた日にする方法
モノ商材の仕入れや売り方についての相談は、令和の総合商社で受け付けています。 お問い合わせページからご相談ください。
ただし、例外があります。売上計算書が売れるたびに(または週・月などでまとめて)送られてくるお店なら、「売上計算書が届いた日」を売上の日にする方法も使えます。この例なら、1月10日に届いた分は来期の売上です。なお、この方法は、毎年続けることが条件です。つまり、今期は売れた日、来期は届いた日、と動かすことはできません。
もうひとつ、精算の間隔にも注意が必要です。個人事業主の場合、売上計算書が毎日、または1か月を超えない一定期間ごとに送られていることが条件です。たとえば、3か月に1回しか精算書が来ないお店だと、この方法は使いにくくなります。その場合は、決算日の前にお店へ連絡して、売れた個数を聞いておく方法になります。
さらに、売上に数えていない商品は、まだあなたの在庫です。この例なら、お店の棚に残っている17個は、年末の棚卸しで数え忘れないようにします。つまり、お店の棚は、あなたの倉庫の延長です。
売れ残りと決算前の確認
売れ残りが戻ってきたときは、売上を取り消す処理は要りません。売れていないので、もともと売上になっていないからです。もし納品書の日付で売上を立てている場合は、売れた日をもとにする方法へ見直しましょう。お店の取り分(売上を売値の総額で書くか、手数料を引いた額で書くか)の帳簿のつけ方は、税理士さんと決めてください。
なお、決算前の確認は、次の順でやると楽です。
- 1決算日の1週間ほど前に、お店へ連絡します
- 2「決算日までに売れた個数と金額」を、メールやメッセージで書いてもらいます
- 3お店に残っている個数も、あわせて聞きます
- 4売れた数と残りの数を、自分の帳簿と照らし合わせます
委託販売の売上を守る、置いてもらう前に聞く5つ
まず、「置かせてください」の次に出す一言を、5つ用意しておきます。
- 1お店の取り分は、売値の何%ですか
- 2精算はいつですか(締め日と支払日)。売れた日と個数が分かる売上計算書は、もらえますか
- 3売れ残りは、いつ、どう戻しますか。戻すときの送料は、どちらが持ちますか
- 4破損、紛失、盗難は、誰の負担ですか
- 5売値は、誰が決めますか。値下げやセールの権限は、どちらにありますか
モノ商材の仕入れや売り方についての相談は、令和の総合商社で受け付けています。 お問い合わせページからご相談ください。
どれも、あとから聞くと言いにくいことばかりです。そのため、最初の訪問で、笑顔で聞いてしまうほうが得です。さらに条件が決まったら、メールでもよいので文字にして残します。口約束は、1か月後に、お互いの記憶が少しずつ違ってきます。
5番目の質問と売値の拘束
特に5番目は、独占禁止法にも関わります。公正取引委員会は、商品を売る側が、買ったお店の売値を拘束することを、原則として禁止しています(再販売価格維持行為)。つまり、お店が買い取った商品の売値は、お店が決めるものです。「この値段より安く売らないで」と縛ると、原則として問題になります。
一方で、売れ残りや破損の危険を売る側が負い、お店が取次ぎ役として売る委託販売なら、売値を指示しても、通常は違法になりません。公正取引委員会は、この点を指針や相談事例で示しています。
ただし、注意したいのは、名前より実態で見られることです。契約書に「委託」と書いてあっても、売れ残りをお店が抱えているなら、実態は買取かもしれません。その状態で売値を縛ると、問題になりえます。そのため、覚え方としては、売値を決めたいなら売れ残りの危険も自分が持つ、危険をお店に渡すなら売値はお店に任せる、です。
委託販売の売上を残す、今日からできる最初の一歩
まず、次に行くお店の名前の横に、さきほどの5つの質問を書いたメモを1枚用意します。条件が決まったあとは、こんな1行を残しておけば十分です(仮の例です)。
2026年10月20日/○○雑貨店 店主 ○○様/委託販売/お店の取り分は売値の30%/毎月末締め、翌月15日払い/売上計算書を毎月メールで受け取る/売れ残りは3か月後に回収、送料はこちらで負担/売値は1,500円で、変更は事前に相談
また、委託をお願いするお店のことは、会う前に調べておくと話が進みます。たとえばお店なら、公式サイトやSNSです。すでに委託の商品が置いてあるかと、価格帯を確認します。そうすると、買取と委託のどちらから提案するかを決めやすくなります。
売れずに寝ている在庫を、どのお店に持ち込むかの考え方は、こちらの記事にあります。
売上は立つのに現金が減る会社へ。在庫を週の営業件数に割る4つの手順と3つの数字
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筆者の記事:川口忠大のnote
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情報サイトのトップ:ENERGY BANK(系統用蓄電池の情報サイト)
運営元:コミッターズ
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参考(外部サイト):国税庁、国税庁(2)、国税庁(3)、公正取引委員会、公正取引委員会(2)、公正取引委員会(3)
※一般的な解説です。個別のケースは顧問税理士・社会保険労務士・弁護士などの専門家にご相談ください。
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