問屋さんから届いたマグカップの箱を、年末商戦の前にようやく開けました。6個が割れています。しかし、連絡しようとして、手が止まります。この箱が届いたのは、6週間も前でした。
じつは、事業者どうしの売買には、一般の消費者との売買より厳しいルールがあります。商法526条です。まず、品物を受け取ったら、遅滞なく検査します。次に、問題を見つけたら、直ちに売主へ通知します。通知が遅れると、交換も、代金の値引きも、損害賠償も、契約の解除も、求められなくなるおそれがあります。
この記事では、仕入れの不良品や数量不足に気づいたときの期限、通知に入れる項目、届いた日の検品の手順を、日付つきの例で整理します。自分が売る側のときに、取引先へ先に伝えておくことも書きます。なお、2026年10月時点のルールです。
野村證券のリテール営業で全国約7,000名中1位を4度。いまは代理店開拓で中小企業の販路をつくる会社「コミッターズ」を経営しています。川口です。
仕入れの不良品、先に結論:事業者どうしは「すぐ検査、すぐ通知」
仕入れの不良品について、商法526条は、売る側も買う側も商人である売買のとき、買う側に次のことを求めています。
- 品物を受け取ったら、遅滞なく検査します(1項)
- 種類、品質、数量が契約の内容に合っていないことを見つけたら、直ちに売主へ通知します(2項)
- 通知をしないと、その不適合を理由にした、追完請求、代金減額請求、損害賠償請求、契約の解除ができません(2項)
- 受け取ってすぐには見つけられない、種類や品質の不適合は、受け取って6か月以内に見つけたときも、同じように直ちに通知します(2項)
- 売主が不適合を知っていたときは、この制限は使えません(3項)
「商人」とは、自分の名前で商売をしている人のことです。会社は、事業としてする行為が商行為になるので、商人として扱われます(会社法5条)。また、個人事業主も、仕入れて売ることを仕事にしていれば、商人にあたると考えられます。商法4条には、店舗などで物を売ることを仕事にしている人は、商人とみなす、という定めもあります。
「不適合」とは、品物の種類、品質、数量が、契約で決めた内容と違うことです。たとえば、割れ、汚れ、動かない、数が足りない、注文と違う品が届いた、などがあたります。
仕入れの不良品を日付つきで見ます:6週間後に開けた箱(仮の例)
たとえば、従業員3人の雑貨店が、問屋からマグカップ120個を仕入れたとします(仮の例です)。1個500円で、代金は6万円です。商品は、2026年11月10日(火)に届きました。次に、3つの場面で見てみます。
- 111月10日に開けて数えたら、6個が割れていた場合:その日のうちに、問屋へ連絡します。「遅滞なく検査」「直ちに通知」を満たします
- 2箱を倉庫に積んだまま、12月22日(火)に開けて、割れに気づいた場合:届いてから42日、ちょうど6週間です。割れは、開ければすぐに分かる不適合です。つまり、「直ちに」はとっくに過ぎていて、交換も値引きも求められなくなるおそれがあります
- 312月22日に開けたときは問題がなく、年明けにお客様から「取っ手がぐらつく」と連絡が来た場合:すぐには見つけられない不適合なら、受け取って6か月以内、この例では2027年5月10日ごろまでに見つけて、見つけたら直ちに通知します
つまり、2番と3番の差は、「開けて見れば分かるか、使ってみないと分からないか」です。2番のような割れや数量不足は、検品していれば見つかるはずのものです。そのため、検品を後回しにした期間は、売る側ではなく、買う側の不利になります。
ここで気をつけたいのは、「遅滞なく」「直ちに」には、何日以内という数字が書かれていないことです。商品の種類や、取引の事情で判断されます。さらに、どこまでが「ふつうの検品で見つかるもの」なのかも、商品によって変わります。そのため、数字がないぶん、1日でも早く動いたほうが、あとで説明しやすくなります。
仕入れの不良品で求められる「返品」の中身は4つ:通知には「どうしてほしいか」を書きます
実は、法律には、「返品」という名前の請求はありません。民法の562条から564条が、買う側にできることを4つ定めています。
- 追完請求:修補、代替品の引渡し、不足分の引渡しを求めます(562条)。売主は、買主に不相当な負担がなければ、買主が求めた方法と別の方法で追完することもできます
- 代金減額請求:不適合の程度に応じて、代金を減らすよう求めます(563条)。原則は、期間を決めて追完を催告して、その期間内に追完がなかったときです。追完が不能なときなど、催告なしで請求できる場合も定められています
- 損害賠償請求:債務不履行にあたるときに求めます(415条、564条)
- 契約の解除:催告をしても追完がないときなどに、できます(541条、542条、564条)。ただし、不履行が軽微なときは、催告による解除はできません
モノ商材の仕入れや売り方についての相談は、令和の総合商社で受け付けています。 お問い合わせページからご相談ください。
先ほどのマグカップで、6個が割れていたとします。
- 追完請求:割れた6個の代わりに、無事なものを6個送ってもらいます
- 代金減額請求:6個ぶんの3,000円(500円 × 6個)を引いてもらいます
どちらを求めるのか、最初の通知に書いておくと、話が早く進みます。たとえば、売れ筋でいますぐ補充したいなら、代替品です。一方、在庫が足りているなら、減額でもかまいません。
ただし、不適合が買う側の責任によるときは、追完請求も代金減額請求もできません(562条2項、563条3項)。なお、倉庫で自分が落として割った分は、対象外です。
届いた日にやること:検品の手順と通知メールの5項目
仕入れの不良品を見逃さないために、検品は、届いた日に済ませるのがいちばん安全です。小さな会社なら、次の順番で足ります。
- 1まず、受け取るときに、箱の外側のへこみや濡れを見ます。気づいたら、写真を撮ります
- 2次に、納品書と数を照らし合わせます。数量不足は、ここで見つかります
- 3そのあと、開封して、割れ、汚れ、色、サイズ、動作を見ます
- 4さらに、気づいたことは、その日のうちに、売主へメールします
- 5また、不良品は、捨てずに、箱ごと取っておきます
- 6最後に、返送の方法と送料は、勝手に決めず、売主の返事を待ちます
通知のメールには、次の5項目を入れておくと、やりとりが1往復で済みます。
- 1注文番号と、届いた日
- 2商品名と品番
- 3何が合っていないか(割れ、数量不足、違う品、動かない、など)
- 4何個か(写真もつけます)
- 5どうしてほしいか(交換、不足分の送付、減額など)
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商法526条2項は、「通知を発しなければ」と書いています。まず、送ることが大切です。ただし、電話だけで済ませると、あとで「聞いていない」と言われたときに、困ります。メールや書面で、送った記録が残る形にしてください。
また、不良品を取っておく理由も、条文にあります。商人間の売買では、買った側が品物を受け取ったあとは、契約を解除したときでも、売主の費用で品物を保管するか、供託しなければならないとされています(商法527条)。なお、品物が傷みやすいときは、裁判所の許可を得て競売にかけることになります。売主と買主の営業所が同じ市町村の区域内にあるときは、この定めは適用されません。さらに、注文と違う品物が届いたときや、注文より多く届いたときも、同じ考え方です(商法528条)。
ここに注意:契約書の「検収」と、返品できない場面
仕入れの不良品の返品では、ここからが、いちばん役に立つ部分です。
- まず、契約書や取引条件書に、別の決めがあるときは、そちらが先に見られるのが原則です。民法91条は、法令の規定のうち、公の秩序に関しないものと違う意思を表示したときは、その意思に従う、と定めています。たとえば、「納品後7日以内に連絡がなければ、検収が済んだものとみなす」という条文(仮の例です)があれば、7日が期限になる可能性があります。問屋さんの契約書や、注文画面の規約を、いちど読んでおいてください
- 次に、売れ残り、仕入れすぎ、思っていた色と違った、というのは、「契約の内容に合っていない」にはあたりません。この場合に返品できるのは、契約で返品を認めているときか、売主が応じてくれたときです。買取なら、売れ残りは買った側のものです。置いてもらう形が委託なら、売れ残りは戻ってきます
- また、お客様が一般の消費者のときは、商法526条は当てはまりません。民法の566条にもとづき、不適合を知ったときから1年以内に売主へ通知すれば足りる、というのが基本です。法務省のパンフレットにも、この1年の通知が書かれています。民法566条が書いているのは、種類と品質の不適合です。商法526条には、数量も入っています
- さらに、売主が、引渡しのときに不適合を知っていた、または重大な過失で知らなかったときは、民法の1年の制限は使えません。商法526条3項も、売主が知っていたときは、この制限を使えない、としています
ただし、どこまで請求できるかは、取引の事情で変わります。実際にもめているときは、弁護士に相談してください。
仕入れの不良品を防ぐ、今日からできる最初の一歩
仕入れの不良品を防ぐために、検品を、「届いた日にやる仕事」にしてください。たとえば、段ボールが届いたら、その日のうちに開けて、数えて、割れを見ます。カレンダーの予定に入れておけば、倉庫に積んだまま6週間たつことは、なくなります。
仕入れの不良品を、自分が卸す側のときに防ぐ
モノ商材の仕入れや売り方についての相談は、令和の総合商社で受け付けています。 お問い合わせページからご相談ください。
一方、自分が卸す側になったときは、逆の立場です。法人のお客様に納品するなら、納品書か取引条件書に、「検品の結果は、受け取り後〇日以内にご連絡ください」と一行書いておきます。日数は、商品の種類で決めてください。また、取引先にとっても、困ったときの動き方が決まっていると、安心して発注しやすくなります。
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情報サイトのトップ:ENERGY BANK(系統用蓄電池の情報サイト)
運営元:コミッターズ
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参考(外部サイト):e-Gov法令検索、e-Gov法令検索(2)、e-Gov法令検索(3)、法務省
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