年末セールの値札を、夜の店内で手書きしている社長がいるとします。「1,800円+税」と書いたところで、ふと手が止まりました。「これ、たしか、いまはダメなんじゃなかったっけ」。一方で、卸先の雑貨店に送る価格表は、ずっと税抜で作っています。こちらも書き直すべきなのか、気になってきました。
答えは、相手で分かれます。消費者に向けた値札やチラシ、ネットショップの価格は、消費税込みの「総額」で表示する義務があります。根拠は消費税法63条です。ところが、事業者だけを相手にする卸の価格表は、この義務の対象外です。つまり、同じ商品の同じ値段でも、誰に見せる紙かで書き方のルールが変わります。
この記事では、総額表示の値札で認められる書き方と認められない書き方、セールやPOPのときの扱い、卸の価格表や見積書が対象外になる理由、つまずきやすい例外を整理します。2026年10月時点のルールです。
野村證券のリテール営業で全国約7,000名中1位を4度。いまは代理店開拓で中小企業の販路をつくる会社「コミッターズ」を経営しています。川口です。
総額表示の値札、先に結論:消費者に見せる値段は税込、卸の価格表は対象外
消費税法63条は、課税事業者が不特定かつ多数の人に商品を売るときに、あらかじめ価格を表示するなら、消費税と地方消費税を含めた価格を表示しなければならない、と定めています。これを「総額表示」と呼びます。
ポイントは3つです。
- 対象は、消費者向けにあらかじめ示す価格です。値札、棚札、POP、チラシ、カタログ、看板、ネット、メールなど、媒体は問いません
- 「専ら他の事業者に」売る場合は対象外です。卸の価格表は、多くの場合ここに当たります
- 価格を表示していない場合にまで、表示を強制するものではありません。口頭で伝える価格も対象外です
税抜の表示が特例で認められていた時期もありましたが、その特例は2021年3月31日で終わりました。いまは「1,800円+税」の値札は認められません。冒頭の社長の直感は当たっていた、ということです。
総額表示の値札を判定してみます:年末セールの値札6つ
従業員3人の雑貨店が、税抜1,800円のマグカップを売るとします(仮の例です。消費税は10%で、税込は1,980円です)。財務省のリーフレットと国税庁のタックスアンサーにある例に当てはめると、次のようになります。
- 1「1,980円」:認められます。「税込」と書かなくても、税込の金額なら総額表示です
- 2「1,980円(税込)」「1,980円(税抜価格1,800円)」:認められます。税込の金額に、税抜の価格や消費税額を添えるのは問題ありません
- 3「1,800円(税込1,980円)」:認められます。ただし、税抜の1,800円をことさら大きく書いて、税込の値段だと思わせる書き方は、総額表示に当たらないとされています
- 4「1,800円(税抜)」:認められません
- 5「1,800円+税」「1,800円(本体価格)」:認められません
- 6「全品20%オフ」とだけ書いたPOP:割引率や割引額の表示そのものは、義務の対象外です。ただし、値引き後の価格を「1,584円」のように書くなら、その価格は税込で示す必要があります
総額表示の値札で、年末セールの値引きを書くとき
6は年末に出番が多い形です。たとえば「1,980円→20%オフで1,584円」と書くなら、どちらの数字も税込にそろえます。なお、1円未満の端数が出たときは、切り捨て、切り上げ、四捨五入のどれで処理してもかまいません。
値札の貼り替えを減らす、棚札の使い方
もう1つ、店の手間が減る話があります。商品についているタグが税抜のままでも、陳列棚の棚札やPOPで税込の価格が一目でわかれば、問題ないとされています。税抜と税込の読み替え表を掲示する方法も、ガイドラインに例として載っています。また、ネットショップなら、商品ページに税込価格があれば、送る商品に貼った値札が税抜でもかまいません。そのため、年末に値札を全部貼り替える前に、棚札で済むかを先に考えると、作業の夜が1日短くなるかもしれません。
卸の価格表と見積書が、対象外になる理由
総額表示は、レジに行くまで支払う額がわからない、店ごとに表示がばらばらで比べにくい、という消費者の不便をなくすための仕組みです。そのため、事業者どうしの取引は対象から外れています。
国税庁の通達では、対象外になるのは、商品の内容や性質から見て、事業のためにしか使われないことが客観的に明らかな取引だとされています。たとえば、雑貨の卸でいえば、小売店に向けた卸値の価格表は、多くの場合この側です。
ほかにも、次のものは対象外とされています。
- 請求書や領収書:取引の相手に個別に渡す書類で、不特定多数に向けてあらかじめ示す価格ではないため
- 見積書や契約書:財務省の質問集で対象外とされています(ただし、ホームページに載せる「見積り例」は対象です)
- メーカーや卸が示す「希望小売価格」そのもの
卸の価格表でも、総額表示の値札が要る場合
ただし、ここにも線があります。
- 卸と小売の両方をしていて、ネットの価格表を一般の人も見て注文できるなら、その価格表は消費者向けの表示になり、税込が必要です
- また、会員制で「会員限定価格」と書いていても、会員を広く一般から募集しているなら対象です
- さらに、小売店が希望小売価格をそのまま自店の売値として使うなら、小売店の表示として税込が必要です。仕入れ先の希望小売価格が税抜で書かれているなら、店の棚札などで税込を示します
ただし:免税事業者、税抜の併記、レジのずれ
例外と注意を3つ挙げます。
1つ目は、免税事業者です。消費税法63条は、納税義務が免除される事業者を対象から除いています。財務省の説明でも、免税事業者は総額表示義務の対象ではないとされています。ただし同じ説明で、仕入れのときに払った消費税相当額も織り込んで、消費者が支払う価格を表示するのが適正だとされています。「対象外だから、税抜で書いてレジで足す」という運用は、すすめられていません。
税抜の併記は、税込を明瞭に書きます
2つ目は、税抜価格を大きく書く併記です。税込の金額が明瞭に書かれていれば、税抜の併記は問題ありません。明瞭かどうかは、文字の大きさ、文字や行の間隔、背景の色との対比などで総合的に判断されます。税抜の数字だけが大きく、税込が小さくて読みにくい値札は、消費者に誤認されるおそれがあり、景品表示法の有利誤認の問題になるおそれもあるとされています。
レジの計算で、1円ずれるとき
3つ目は、レジの計算です。総額表示のために、レジの設定を変える義務はありません。ただし、税抜の価格をもとに計算するレジだと、値札の税込価格とレジでの支払額が1円ずれることがあります。財務省の質問集では、トラブルを避けるために税込価格をもとに計算するレジが望ましいとされています。しかし、1円のずれでも、お客様から見ると「値札と違う」です。年末の繁忙期の前に、一度だけテスト会計をしておくと安心です。
総額表示の値札、最初の一歩:今夜の値札を3つだけ確認します
全部を一度に直す必要はありません。まず、次の順で確認してみてください。
- 1店頭とネットの値札に、「+税」「税抜」「本体価格」だけの表示が残っていないか
- 2年末セールのPOPで、値引き後の価格を書く場合に、税込になっているか
- 3卸の価格表を、一般の人も見られる場所に置いていないか
卸先への提案には、税込の想定売価を添えます
最後に、卸の営業に一言だけ着地させます。卸の価格表は税抜でかまいませんが、小売店の店頭に並べば、その値札は税込にしなければなりません。たとえば、卸先に商品を提案するとき、税抜の卸値の横に「店頭の想定売価(税込)」を1行添えておくと、店の側で値札を作る手間が減ります。商談のときに「この値段なら、税込で1,980円の棚に並びます」と言えるかどうかは、意外と効きます。
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情報サイトのトップ:ENERGY BANK(系統用蓄電池の情報サイト)
運営元:コミッターズ
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参考(外部サイト):国税庁、国税庁(2)、財務省、財務省(2)、財務省(3)、財務省(4)
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