年末が近づくと、「お世話になった人に、この店で好きなものを選んでもらいたいんだけど、商品券ってある?」と聞かれることがあります。手作りの器や雑貨を売る店なら、なおさらです。そこで「じゃあ、うちの商品券を作ろう」と、パソコンで1,000円券をデザインし始めた社長がいるとします。
商品券の発行では、ここで一つ、知っておきたい法律があります。お金を先に受け取って発行する商品券や回数券は、「資金決済に関する法律」(資金決済法)の前払式支払手段に当たることがあります。自分の店でだけ使える券なら、商品券の発行そのものに事前の手続きは要りません。ただし、使われずに残っている金額が、3月31日か9月30日の時点で1,000万円を超えると、財務局への届出と、残高の半分以上の供託が必要になります。一方で、有効期限を発行の日から6か月以内にすれば、この法律の対象から外れます。
この記事では、商品券の発行が法律の対象になる条件、未使用残高の数え方と期限、6か月の例外、消費税の扱いを、仮の雑貨店の数字で整理します。2026年10月時点のルールです。
野村證券のリテール営業で全国約7,000名中1位を4度。いまは代理店開拓で中小企業の販路をつくる会社「コミッターズ」を経営しています。川口です。
商品券の発行、先に結論:自分の店だけの券は「あとから届出」、線は1,000万円
まず、資金決済法では、前払式支払手段を2つに分けています。
- 自家型:発行した会社(と、法律でいう密接な関係者)の店でだけ使えるもの。発行前の手続きは不要で、基準日の未使用残高が初めて1,000万円を超えたときに届出をします
- 第三者型:自社以外の店でも使えるもの。発行の前に、財務局への登録が必要です
なお、基準日は、毎年3月31日と9月30日の2回です。小さな店が自分の店だけで使う商品券や回数券を出すなら、まずは自家型の話になります。商店街やほかの店と共通で使える券を作るなら、話が大きく変わるので、作る前に管轄の財務局に相談してください。
商品券の発行の例外:6か月以内の券
また、法律の4条と施行令4条で、発行の日から6か月以内に限り使える券は、この章の規定を適用しないとされています。商品券の発行が年末のギフト用で、春までに使ってもらう券なら、この例外を使う方法があります。
商品券の発行が法律の対象になる4つの条件
財務局の案内では、次の4つをすべて満たすものが法律の対象とされています。
- 1金額、または物品やサービスの数量(個数、回数など)が、券や電子的な方法で記録されている
- 2記録された金額や数量に応じた対価を、買う人が払う
- 3券、または番号や記号などが、買う人に渡される
- 4買い物やサービスを受けるときに、それを見せたり渡したりして使う
これを雑貨店の例に当てはめると、次のようになります(すべて仮の例です)。
- 1,000円の商品券を1,000円で売る:対象になり得ます
- 「コーヒー豆1袋の引換券を10枚つづりで売る」回数券:数量の券として対象になり得ます
- お店のアプリにお金をチャージして使う仕組み:電子的な記録として対象になり得ます
- 来店者に無料で配る「500円引き券」:お金を受け取っていないので、2つ目の条件に当たらず、この法律の対象とは考えにくい券です
無料で配る券は、資金決済法ではなく、景品やおまけのルールの側で考えることになります。配るものの経費の扱いは、こちらの記事にあります。
ノベルティは経費?「広告宣伝費」と「交際費」の分かれ道は、配る相手です
計算してみます:未使用残高と2か月の期限
未使用残高は、財務局の案内では「総発行額−総回収額」で数えます。つまり、売った券の合計から、使われて戻ってきた券の合計を引いた残りです。
モノ商材の仕入れや売り方についての相談は、令和の総合商社で受け付けています。 お問い合わせページからご相談ください。
従業員3人の器と雑貨の店が、2026年11月から自家型の商品券を売り始めたとします(すべて仮の数字です)。
- 2026年11月〜2027年3月に売った商品券:合計620万円
- 同じ期間に使われて回収した商品券:合計280万円
- 2027年3月31日の未使用残高:620万円−280万円=340万円
340万円は1,000万円以下なので、この基準日では届出は要りません。
大口の注文で、残高が1,000万円を超えるとき
では、法人のお客様から「社員への記念品に」と、まとめて大口の注文が入った場合を考えます。
- 2027年4月〜9月に売った商品券:合計1,100万円
- 同じ期間に回収した商品券:合計400万円
- 2027年9月30日の未使用残高:340万円+1,100万円−400万円=1,040万円
そのため、初めて1,000万円を超えた時点で、届出が必要になります。九州財務局の概要では、届出も発行保証金の供託も、基準日の翌日から2か月以内とされています。9月30日の基準日なら11月30日、3月31日の基準日なら5月31日が目安です。供託する額は、資金決済法14条で未使用残高の2分の1以上とされているので、この例なら520万円以上です。金融機関などと保全契約や信託契約を結べば、供託の代わりにできる仕組みもあります。
届け出たあとの義務
届け出たあとは、券面に発行者の名前、金額、使える期限(決めている場合)、苦情や相談の窓口などを表示する義務や、基準日ごとの報告書の提出などがかかります。払い戻しも原則としてできず、例外は「直前の期間の発行額の20%以下」などの少額の場合に限られます。大口の注文は売上としてはうれしいのですが、残高が一気に跳ねる原因にもなります。
ただし:6か月の例外と、消費税・法人税の扱い
発行の日から6か月以内に限り使える券は、資金決済法のこの章の規定が適用されません。年末に売る券に「発行日から6か月間有効」と書いておけば、残高がいくらになっても届出の話は出てきません。ただし、6か月を過ぎた券を「せっかくだから使っていいですよ」と受け付ける運用を続けると、実態との食い違いが生まれます。つまり、期限を決めたら、店の全員で同じ対応をするのが前提です。
商品券の発行と、消費税・法人税の扱い
次に、税金の話です。国税庁の質疑応答では、次のように整理されています。
- 消費税:商品券を発行して代金を受け取っただけでは、消費税はかかりません。商品券と引き換えに商品を渡したときに課税されます
- 法人税:原則として、商品を引き渡した日の事業年度の収益にします。発行から10年が過ぎた日などの事業年度末に、引き換えられていない券があれば、その分をまとめて収益にします
- 発行した本人以外が、すでに出回っている商品券を売る場合は、物品切手等の譲渡として消費税は非課税です
モノ商材の仕入れや売り方についての相談は、令和の総合商社で受け付けています。 お問い合わせページからご相談ください。
つまり、12月に商品券がたくさん売れても、その時点では「預かったお金」に近いものです。お客様が来て商品と引き換えたときに、はじめて売上の中身が確定します。なお、会計の処理のしかたは、顧問税理士と決めておくと迷いません。
商品券の発行、最初の一歩:券を刷る前の5つの確認
券を作る前に、商品券の発行について次の5つを紙に書き出してみてください。
- 1使える店は自分の店だけか(ほかの店でも使えるなら、事前の登録の話になる)
- 2有効期限を、発行の日から6か月以内にするか、それより長くするか
- 36か月を超えるなら、3月31日と9月30日に未使用残高を数える担当者を決めたか
- 4券の通し番号と、売った日・使われた日を記録する台帳を用意したか
- 5法人からの大口注文が来たとき、残高が1,000万円に近づかないか試算したか
商品券の台帳を、営業の記録にもします
最後に、営業の話に一言だけ着地させます。商品券は、「この店を、ほかの人にすすめたい」というお客様の気持ちが形になったものです。だれが、だれに贈るために買ったのかを、売るときにひと言だけ聞いておくと、次の年末のご案内の宛先が自然に増えていきます。また、商品券の台帳は、法律のためだけでなく、紹介の流れを見る営業の記録にもなります。
在庫と現金の動きを、営業の件数に結びつけて考える手順は、こちらの記事にあります。
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筆者の記事:川口忠大のnote
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情報サイトのトップ:ENERGY BANK(系統用蓄電池の情報サイト)
運営元:コミッターズ
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参考(外部サイト):e-Gov法令検索、e-Gov法令検索(2)、財務省、財務省(2)、財務省(3)、国税庁
※一般的な解説です。個別のケースは顧問税理士・社会保険労務士・弁護士などの専門家にご相談ください。
会社の現場の工夫や取り組みは、みんなの企業新聞の記事「マッチングアプリの通知と反応の管理方法」でも紹介しています。あわせてご覧ください。