たとえば、海外のサイトで雑貨を200個、仕入れてみます。商品代は9万円です。「関税は数%だから、数千円だろう」と思っていたところに、運送会社から請求書が届きます。関税、消費税、地方消費税、さらに見慣れない手数料の行まで並んでいます。
じつは、関税がかかるのは、商品代だけではありません。日本の港や空港に着くまでの運賃と保険料まで足した「課税価格」に、かかります。しかも、消費税は、その課税価格に関税を足した額にかかります。つまり、税金に、税金が乗る形です。
この記事では、輸入雑貨の関税と消費税を、仮の数字で順番に計算します。1万円と20万円の線、個人輸入の「6割」ルールが仕入れで使えない理由も、あわせて整理します。なお、2026年10月時点のルールです。
野村證券のリテール営業で全国約7,000名中1位を4度。いまは代理店開拓で中小企業の販路をつくる会社「コミッターズ」を経営しています。川口です。
輸入雑貨の関税、先に結論:商品代ではなく「課税価格」から計算します
輸入雑貨の関税と消費税は、次の順番で計算します。
- 1課税価格:商品代に、日本に着くまでの運賃・保険料などを足した額(貿易でいう、CIF価格の考え方です)
- 2関税:課税価格に、品目ごとの関税率をかけた額
- 3消費税と地方消費税:課税価格に関税を足した額に、税率をかけた額(標準税率は合わせて10%、飲食料品などの軽減税率は8%)
課税価格に足す運賃は、「輸入港に着くまで」の分です。関税定率法の第4条は、輸入港に着くまでの運賃、保険料、その他の運送の費用を、加算するものとして定めています。
商品代の請求書に、梱包代、仲介の手数料、ブランドの使用料(ロイヤルティ)が別の行で載っているときも、課税価格に足す対象になることがあります。そのため、仕入れ先の請求書は、行ごとに見ておきましょう。
また、納めるのは、輸入品を引き取る人です。国税庁は、免税事業者でも、輸入品を引き取るときは納税義務者になる、と説明しています。
関税は、会計では商品の原価に含めます。法人税法施行令の第32条にも、所得税法施行令の第103条にも、商品の購入代価に加えるものとして「関税」が書かれています。一方、消費税のほうは、課税事業者なら、仕入れにかかった消費税として差し引ける税金です。書類の話は、あとで出てきます。
輸入雑貨の関税を仮の数字で計算します:商品代9万円、運賃1万円、200個
たとえば、プラスチック製の雑貨を200個、海外から仕入れるとします(仮の例です)。まず、商品代は90,000円(1個450円)です。次に、日本に着くまでの運賃と保険料は、10,000円とします。
- 1課税価格:90,000円 + 10,000円 = 100,000円
- 2関税:課税価格が20万円以下なので、簡易税率を使えます。また、プラスチック製品は3%です。100,000円 × 3% = 3,000円
- 3消費税の課税標準:100,000円 + 3,000円 = 103,000円
- 4消費税:103,000円 × 7.8% = 8,034円。税関の計算例では、税額の百円未満が切り捨てられるので、約8,000円です
- 5地方消費税:8,000円 × 22/78 = 約2,256円。こちらも百円未満が切り捨てられて、約2,200円です
税関に納める税金は、合わせて約13,200円です。商品代と運賃の合計10万円に対して、約13%になります。
関税込みの1個あたりの原価を出します
次に、1個あたりの原価を出します。
- 商品代90,000円 + 運賃10,000円 + 関税3,000円 = 103,000円
- 103,000円 ÷ 200個 = 1個あたり515円
ただし、消費税と地方消費税の約10,200円は、ここに入れていません。課税事業者なら、仕入れにかかった消費税として差し引くからです。一方、免税事業者の場合は、差し引くことができません。その場合の経理は、税理士さんに確認してください。
つまり、この515円が、卸値を決める土台になります。卸値を700円(仮)で出すとして、粗利を比べてみます。
- 商品代だけで見た粗利:700円 − 450円 = 250円
- 運賃と関税を入れた粗利:700円 − 515円 = 185円
差は、1個で65円です。さらに、200個で13,000円になります。運賃1万円と関税3,000円の合計と、ぴったり同じです。商品代だけで卸値を決めると、この13,000円が、静かに消えていきます。
なお、税関の計算例では、課税価格と消費税の課税標準は千円未満、関税額と消費税額は百円未満が切り捨てられています。実際の請求は、この計算と少しずれることがあります。
輸入雑貨の関税が免税になる1万円と20万円の線:判定するのは「合計額」です
課税価格の合計額で、扱いが3つに分かれます。
- 1万円以下:関税、消費税、地方消費税が免税になります(原則)
- 20万円以下:品目を7つに大別した「簡易税率」を使えます
- 20万円超:品目ごとの一般の関税率(実行関税率表)で計算します
モノ商材の仕入れや売り方についての相談は、令和の総合商社で受け付けています。 お問い合わせページからご相談ください。
「1万円以下」について、税関のページには、次の注意が書かれています。
- 酒税、たばこ税は免税になりません
- 革製のバッグ、手袋、ニット製衣類、革靴などは、1万円以下でも関税が免税になりません(関税定率法施行令第16条の3)。個人使用の贈与品と認められる場合は、例外です
- 1つの請求書の貨物を分けて申告しても、請求書全体の合計で見ます。郵便も、同じ差出人から同じ宛先へ、同じ時期に分けて送られたものは、合計して見ます
1万円の判定に、運賃を足します
この1万円は、商品代だけで見てはいけません。会社が輸入するときの課税価格には、運賃や保険料が入るからです。たとえば、見本の雑貨を取り寄せるとします(仮の例です)。
- 商品代8,000円、運賃1,500円:課税価格は9,500円で、1万円以下です
- 商品代8,000円、運賃3,000円:課税価格は11,000円で、1万円を超えます
このように、商品代が同じでも、運賃しだいで、免税かどうかが変わります。
輸入雑貨の関税の簡易税率:20万円以下で使える区分
20万円以下で使える簡易税率の区分は、雑貨に近いところだけ挙げると、次のとおりです。
- 衣類など(メリヤス編み・クロセ編みを除く):10%
- プラスチック製品、ガラス製品、卑金属製品、家具など:3%
- ゴム、紙、陶磁製品、鉄鋼製品、すず製品:無税(ただし、消費税と地方消費税はかかります)
- コーヒー、茶(紅茶を除く)など:15%
- どの区分にも入らないその他のもの:5%
このほかに、酒類の区分と、20%の区分があります。
ただし、簡易税率には、使えない品目があります。革製のハンドバッグや旅行用具、ニット製衣類、履物、たばこなどは、20万円以下でも一般の関税率です。また、輸入する人が希望すれば、全部の品目を一般の関税率にすることもできます。
「6割」の落とし穴:個人使用の特例は、売るための仕入れでは使えません
「海外の通販は、値段の6割で関税がかかる」と聞いたことがあるかもしれません。これは、個人が自分で使うために輸入するときの特例です。つまり、課税価格を、海外の小売価格に0.6をかけて出します。
たとえば、海外の小売価格が15,000円の物を、個人が自分用に輸入するとします(仮の例です)。課税価格は、15,000円 × 0.6 = 9,000円です。1万円以下の線の内側に入ります。
会社が売るために仕入れるときは、この特例を使えません。課税価格は、商品代に運賃と保険料を足した額です。
仕入れを、個人が自分で使う分として申告するのは、やめておきましょう。財務省も、個人使用と偽って輸入する事例がみられることを、この特例を見直す理由のひとつに挙げています。
6割の特例は、令和10年4月1日に廃止されます
この特例は、令和8年度の関税の改正で、廃止が決まりました。関税定率法等の一部を改正する法律(令和8年法律第5号、2026年3月31日公布)で、令和10年(2028年)4月1日に廃止されます。それまでは、個人が自己使用する場合に限って使えます。財務省は、廃止の理由として、特例を使う貨物の9割以上が1万円以下であることや、国内の事業者との競争上の不均衡を挙げています。
1万円以下の免税は、なくなるのか
モノ商材の仕入れや売り方についての相談は、令和の総合商社で受け付けています。 お問い合わせページからご相談ください。
ここで、よくある疑問に答えておきます。「1万円以下の免税も、なくなるのでしょうか」。2026年10月時点では、なくなっていません。令和8年度の税制改正でも、輸入するときの免税は維持されます。ただし、海外から国内あてに通信販売される1万円以下の物については、令和10年4月1日から、販売する事業者に消費税が課される仕組みに見直されることになっています。
荷物が届く前に確認する3つ:税金以外の落とし穴
- 1他の法令:輸入に許可や承認が必要な物は、輸入申告のときに、許可を受けていることを税関に証明できないと、輸入が許可されません(関税法第70条)。たとえば、食品衛生法は、飲食物や添加物のほか、おもちゃなども対象にしています。医薬品や医療機器などの法律もあります。税関は、ある法令に当たるかどうかには答えません。主管している省庁に確認します
- 2模倣品:特許権、商標権、著作権などを侵害する物品は、関税法第69条の11で、輸入してはならない貨物とされています。権利者から輸入の許諾を得た物や、商標権の侵害にならない並行輸入品は、例外です。ブランド名の入った雑貨を仕入れるときは、仕入れ先がどこから商品を仕入れているのかを、先に聞いておきます
- 3輸入許可書:課税事業者が輸入の消費税を差し引くときに、保存する書類として国税庁が挙げているのは、税関長から交付を受ける輸入許可書などです。納税地を所轄する税関長、引き取れるようになった年月日、課税貨物の内容、課税標準の金額と消費税額・地方消費税額、書類の交付を受ける事業者の名前が、記載事項になっています
通関を業者に頼むときは、輸入許可書に書かれる名前が、自社になっているか。また、控えをもらえるか。この2つを、最初に聞いておきます。運送会社の請求書の束のなかから、あとで探すのは大変です。
輸入雑貨の関税を、今日から計算する最初の一歩
まず、仕入れる前に、「輸入の見積り表」を1枚つくります。スプレッドシートで足ります。
- 1商品代(円に換算した額)
- 2日本に着くまでの運賃・保険料
- 3課税価格(1と2の合計)。1万円と20万円の線は、ここで判定します
- 4関税率(簡易税率の区分、または実行関税率表)と、関税の額
- 5消費税と地方消費税(課税価格と関税の合計に、10%)
- 61個あたりの原価(商品代、運賃、関税の合計 ÷ 個数)
モノ商材の仕入れや売り方についての相談は、令和の総合商社で受け付けています。 お問い合わせページからご相談ください。
なお、外貨建ての請求は、円に換算した額で計算します。換算に使う為替相場には決まりがあるので、通関を頼む業者か、税関に確認してください。
輸入雑貨の関税込みの原価で、卸値を言えます
つまり、原価が出れば、卸先に出す卸値を、根拠のある数字で言えます。小売店に「まず売れ筋を5個から」と提案するときも、原価を知っている人は、値引きの話になっても、折れにくくなります。
関税込みの原価で仕入れた商品が、売れ残ったときの扱いは、こちらの記事にまとめています。
仕入れた商品は「売れるまで」経費にならない。売れ残り在庫のホントのルール
さらに、原価が出たら、在庫を営業の件数に置き換えて動かす方法が、こちらの記事にあります。
売上は立つのに現金が減る会社へ。在庫を週の営業件数に割る4つの手順と3つの数字
反対に、海外へ売る側の消費税の話は、こちらです。
海外に売りたい小さな会社が、販路探しより先に整える免税と証拠書類の順番
輸入雑貨の関税は、荷物が届いてから知ると、もう値付けが終わっています。届く前に、紙1枚で計算しておきましょう。
ほかのコラムも、あわせてどうぞ
お金の学び(ウハウハ高等学校):ウハウハ高等学校の新着コラム
営業・販路のコラム:コミッターズ コラム
筆者の記事:川口忠大のnote
蓄電池を知る(ENERGY BANK):系統用蓄電池の低圧・高圧比較|法人が費用と接続条件で選ぶ方法
導入先を比べる:系統用蓄電池メーカー比較|法人が製品・導入支援・保守を同じ条件で見る方法
お金の面を読む:系統用蓄電池の充電コストを読む|調達契約と託送料金
情報サイトのトップ:ENERGY BANK(系統用蓄電池の情報サイト)
運営元:コミッターズ
令和の総合商社では、有形無形問わずに大手商社が行わないマーケティングで貴社の販路を開拓します。本気で販路を拡大したい方には60分間無料で相談に乗らせていただきます。
参考(外部サイト):税関、税関(2)、税関(3)、税関(4)、税関(5)、税関(6)
※一般的な解説です。個別のケースは顧問税理士・社会保険労務士・弁護士などの専門家にご相談ください。
会社の現場の工夫や取り組みは、みんなの企業新聞の記事「経営者マッチングアプリで成果が出ない原因と対策」でも紹介しています。あわせてご覧ください。