法務局から、見慣れない封書が届きました。「休眠会社」「みなし解散」と、ちょっと物騒な言葉が並んでいます。社長は「うちは毎年決算しているし、税金も納めているのに」と首をかしげて、郵便物の山の上にそっと置きます。
その封筒を寝かせておける期間は、あと2か月弱です。2026年10月15日に、法務大臣が官報で公告を出しました。最後の登記から12年たっている株式会社が、12月15日までに何も手続きをしないと、12月16日付けで解散したものとみなされます。決算や納税は関係なく、見られているのは法務局の登記の日付だけです。
この記事では、法務省と法務局の案内、会社法の条文をもとに、対象になる会社の見分け方、期限までの手順、届出だけで済ませたときの落とし穴を、2026年10月時点の情報で整理します。通知書がまだ届いていない社長も、自分の会社が対象かどうかを確かめる方法を書きました。
野村證券のリテール営業で全国約7,000名中1位を4度。いまは代理店開拓で中小企業の販路をつくる会社「コミッターズ」を経営しています。川口です。
先に結論
- 2026年10月15日に公告があり、管轄の登記所から、同じ日付で通知書が発送されました。
- 対象は、最後の登記から12年がたっている株式会社です。一般社団法人と一般財団法人は5年です。
- 12月15日(火)までに、「まだ事業を廃止していない」旨の届出か、必要な登記の申請のどちらかが要ります。どちらもないと、12月16日付けで解散したものとみなされます。
- 通知書が届かなくても、手続きは止まりません。
もう1つ、大事な違いがあります。届出だけで済ませると、来年もまた対象になります。役員の変更などの登記まで済ませると、最後の登記の日が新しくなり、12年のカウントが最初に戻ります。
毎年決算していても、対象になる理由
決算書や税金の申告を出す先は、税務署です。一方、法務局の登記は、会社の名前、住所、役員といった基本情報を、世の中に公開するための記録です。決算をきちんとしていても、登記の内容が変わらなければ、法務局には何の動きも残りません。
ここに落とし穴があります。取締役の任期は、原則2年、最長10年です(会社法第332条)。株式の譲渡に会社の承認が必要な会社(会社法でいう公開会社でない会社)は、定款で任期を最長10年まで延ばせます(監査等委員会設置会社などを除きます)。そして、任期が切れて同じ人が続けるときも、登記が必要です。これを重任の登記といいます。法務局のページには、少なくとも10年に一度は役員の変更登記をしなければならない、と書かれています。
たとえば、従業員3人の○○業の会社で、こんな流れだったとします(数字は仮の例です)。
- 2013年11月:株式会社を設立。取締役は社長1人で、定款で任期を10年にしました。
- 2023年11月:任期が満了。社長が続けるので、本来は重任の登記が要ります。ところが、仕事に追われて、登記はそのままになりました。
- 2026年10月15日:最後の登記は、2013年11月のままです。12年以上がたち、対象になります。
この間、決算は毎年ありました。税務署への申告も、取引先への請求書も、いつもどおり回っていました。それでも、法務局から見れば「12年、何の動きもない会社」です。任期が2年の会社が、重任の登記を何回も飛ばした場合も、結果は同じです。
社長が顧問税理士に電話をかけたとします。返ってきたのは、「決算と登記は別の話なので、登記は司法書士さんの担当です」という答えでした(これも仮の例です)。相談先が分かれていると、こういう谷間に落ちやすくなります。
対象の範囲も確認しておきます。法務省のページでは、次のように書かれています。
- 休眠会社:最後の登記から12年がたった株式会社(会社法第472条)
- 休眠一般法人:最後の登記から5年がたった一般社団法人・一般財団法人(公益社団法人・公益財団法人を含む)
- 特例有限会社は、含まれません。
合同会社は、対象として挙げられていません。判断に迷うときは、管轄の法務局に聞いてください。
通知が届いたら、12月15日までの手順
今回の日程は、次のとおりです。
- 10月15日(木):公告、通知書の発送
- 12月15日(火):届出と登記申請の期限
- 12月16日(水):解散したものとみなされる日(登記官が職権で解散の登記をします)
対象かどうかが分からないときは、法務省のページのとおり、登記事項証明書で最後の登記の日を確かめます。手順は次のとおりです。
- 1法務局で、自分の会社の登記事項証明書を取ります。各欄には登記をした日付が書かれていて、そのうち、いちばん新しい日付が最後の登記の日の目安です。
- 210月15日の時点で12年(一般社団法人・一般財団法人は5年)以上たっていれば、対象です。通知書が届いていなくても同じです。
- 3定款の任期の定めと、役員の就任の日付を見比べて、任期が切れていないかを確かめます。
- 4次の2つのうち、どちらで対応するかを決めます。
- 512月15日までに、管轄の登記所へ出します。
2つの対応は、次のとおりです。
- 「まだ事業を廃止していない」旨の届出:通知書の下段にある届出書に書き込んで、登記所に郵送するか持っていきます。代理人が出すときは、委任状がいります。通知書が使えないときは、商号、本店、代表者の氏名と住所、まだ事業を廃止していない旨、届出の年月日などを書いた書面を出します。
- 必要な登記の申請:役員変更(重任)などの登記です。商号の変更や、本店移転の登記を期限までにした場合も、今年の対象からは外れます。
年末は、年末調整や決算で手が足りなくなる時期です。登記の申請は、書類をそろえるのに日数がかかります。11月のうちに動き出すと安心です。
ここは例外・注意:届出だけの落とし穴、過料、解散後の3年
1つ目は、届出だけで済ませた場合です。登記の申請をしないままだと、来年の整理作業でまた対象になります。届出は、今年の解散を止めるための手続きであって、登記の遅れを直す手続きではありません。
2つ目は、過料です。届出や登記の申請をしても、本来の時期に登記を怠っていた事実は消えません。法務省のページには、裁判所から100万円以下の過料に処せられる可能性がある、と書かれています。条文は会社法第976条第1号で、登記を怠ったときが対象です。100万円は上限で、実際の額は裁判所が決めます。なお、役員が変わったときの登記は、本来は変更から2週間以内です(会社法第915条)。
3つ目は、すでに解散とみなされてしまった場合です。解散の登記から3年以内なら、株主総会の特別決議で、会社を継続できます(会社法第473条)。決議から2週間以内に、継続の登記を申請します。3年を過ぎると、この道は使えません。解散した会社は、清算という後片づけの手続きに入る会社になります。
4つ目は、通知が届かないケースです。引っ越して本店の登記を直していない会社は、通知が届かないことがあります。届かなくても、期限内に届出か登記がなければ、手続きは進みます。
放置した年数が長いと、必要な書類や手順が会社ごとに違ってきます。登記の申請は、司法書士などの専門家に相談するのが近道です。
今日からできる最初の一歩
登記事項証明書を1通取って、最後の登記の日と、役員の任期が満了する月を、手帳に書いておきます。任期の満了月の2か月前に、カレンダーで知らせが鳴るようにしておけば、うっかり12年を迎える心配は減ります。
もう1つ、営業の目線の作業があります。名刺、請求書、ウェブサイトに書いてある社名、住所、代表者名が、登記の内容とずれていないかを、1回だけ照らし合わせます。登記は世の中に公開されている記録なので、取引を始める相手が確かめたときに、表の顔と食い違うと不安の種になります。
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運営元:コミッターズ
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参考(外部サイト):法務省、法務省(2)、法務省(3)、e-Gov法令検索
※一般的な解説です。個別のケースは顧問税理士・社会保険労務士・弁護士などの専門家にご相談ください。