12月の半ば。来年の予算を組み直していた社長が、外注費の行で手を止めます。「ライターさんとの契約、年内で終わりにしよう」。その場でメッセージを打ちかけて、ふと気づきます。契約が切れるまで、あと2週間しかありません。
じつは、この「年内で終わり」、つまりフリーランスの契約終了には期限があります。発注する側に従業員がいて、相手が一人で働くフリーランスで、取引が6か月以上続いている場合、契約を更新しないことを、少なくとも30日前までに伝える義務があります。2024年11月1日に始まったフリーランス法(正式には「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」)の16条です。12月31日で終えるなら、伝える期限は12月1日です。
この記事では、2026年10月時点の法令と厚生労働省の資料をもとに、フリーランスの契約終了の期限の数え方と、伝え方、予告が要らない例外を整理します。年末と年度末に終える場合を例にします。
野村證券のリテール営業で全国約7,000名中1位を4度。いまは代理店開拓で中小企業の販路をつくる会社「コミッターズ」を経営しています。川口です。
フリーランスの契約終了、先に結論
- 6か月以上続く業務委託を、発注する側から解除するとき、または期間満了で更新しないときは、少なくとも30日前までに予告が必要です
- 30日前は「予告した日を1日目として、終了日の前日までに30日ある」ように数えます。12月31日満了なら12月1日(火)まで、2027年3月31日満了なら3月1日(月)までです
- 伝え方は、書面、ファクス、電子メール等のどれかです。電話や口頭だけでは足りません
- 相手から理由を聞かれたら、原則として遅滞なく開示する必要があります
- 義務を負うのは、従業員を使っている、または役員が2人以上いる発注者です。社長1人で従業員もいない会社は、この16条の義務の対象外です
今日は10月25日です。年末にフリーランスの契約終了を予定しているなら、まだ1か月以上の余裕があります。焦る必要はありませんが、カレンダーに12月1日を入れておくと安心です。
フリーランスの契約終了、30日前の数え方(2026年のカレンダー)
厚生労働省の解説資料には、「8月31日に解除する場合には8月1日までに予告が必要」という例が載っています。予告した日を1日目として数え、終了日の前日までに30日間が確保されている必要がある、という考え方です。
これを年末と年度末に当てはめると、こうなります。
- 12026年12月31日(木)で満了する契約:予告の期限は12月1日(火)
- 22027年1月31日(日)で満了する契約:予告の期限は1月1日(金)。元日なので、実際には12月中に伝えるのが現実的です
- 32027年3月31日(水)で満了する契約:予告の期限は3月1日(月)
また、予告は、相手に届いた時点で効力が生じます。メールなら、相手の端末で受信した時、または相手が通常なら確認できる状態になった時です。12月1日の夜11時に送って「送ったから大丈夫」と考えるのは、少し危なっかしいです。そのため、期限の数日前に送っておくほうが、気持ちよく年を越せます。
なお、不更新を決めたのが遅くて、満了まで30日を切ってしまった場合も、決めた時点ですぐに伝えることが望ましいとされています。黙っていて状況がよくなることは、まずありません。
対象になるのは「6か月以上」の取引
フリーランスの契約終了で予告が要るのは「継続的業務委託」、つまり6か月以上の期間行う業務委託です。契約の更新で通算6か月以上になるものも含みます。仮の例で見てみます。
- 1年契約を毎年自動更新しているライター:対象です。今後は更新しないと決めたら、予告が必要です
- 3か月契約を4月から続けている動画編集者:最初の3か月は対象外ですが、7月に更新して通算6か月以上になる契約からは対象になります
- 1回限りの会社案内の撮影:性質上1回限りなので、不更新の予告の対象にはなりません
更新で通算するかどうかは、2つの条件で判断します。相手が同じで仕事の内容に一定の同一性があること、そして前の契約の終わりから次の契約までの空白が1か月未満であることです。基本契約を結んで、その下で毎月発注している形なら、基本契約の期間で数えます。
予告の義務を負うのは「特定業務委託事業者」です。個人なら従業員を使っている人、法人なら役員が2人以上いるか、従業員を使っている会社です。ここでいう従業員は、週の所定労働時間が20時間以上で、31日以上の雇用が見込まれる人を指します。相手のフリーランスが、従業員を使わず一人で働いている個人か、一人社長の会社であることも条件です。
条件の明示(3条)は、従業員のいない発注者にも義務があります。こちらは別の記事で整理しています。
個人に仕事を頼むとき、「条件」をメールで書いていますか?フリーランス法の最初の一歩
伝え方:電話だけでは足りない理由
省令で決まっている予告の方法は、次の3つです。
- 書面を渡す
- ファクスで送る
- 電子メール等で送る(相手が記録を出力して書面にできるものに限ります)
電子メール等には、SMSやSNSのメッセージ、自社アプリのメッセージ機能なども含まれます。ただし、音声だけのメッセージや、消える設定のメッセージのように、記録に残らない方法は認められません。さらに、SNSで伝えたときは、相手にも保存しておくよう一言添えるのが望ましいとされています。
法律は予告の文面を決めていませんが、筆者なら次の4点を書きます。
- 1どの契約の話か(契約名、または業務の内容)
- 2契約期間の満了日と、更新しないこと
- 3最後の納品日と、最後の報酬の支払日
- 4これまでのお礼
なお、報酬の支払日は、受け取った日から60日以内という別のルールがあります。そこで、最後の請求分の支払いまで、予告のメールに書いておくと、相手も年末の資金繰りを考えやすくなります。
ただし、予告が要らない場合と、合意で終える場合
省令は、予告が要らない場合として次の5つを挙げています。
- 災害その他やむを得ない事由で、予告が難しい場合
- 元請けからの契約が解除され、再委託した業務の大部分が不要になった場合など、すぐに解除が必要な場合
- 基本契約や更新の中で、契約期間が30日以下の1回分の契約を解除する場合
- 相手の責めに帰すべき事由で、すぐに解除が必要な場合(重大または悪質なものに限られます)
- 基本契約があっても、相手の事情で相当な期間(おおむね6か月以上)発注していない場合
「仕事の質が期待より低い」は、4つ目には通常当たらないと考えておくほうが安全です。一方、厚生労働省の資料が例に挙げているのは、業務に関連した刑法犯や、経歴の詐称、正当な理由なく仕事をまったく提供しない場合など、かなり重いものです。
フリーランスの契約終了には、もう一つの道があります。話し合いで終える方法です。双方の合意で契約を終える場合は、法律上の「解除」には当たりません。ただし、相手が自由な意思で合意したかどうかは慎重に判断されます。「来月から発注ゼロで、合意ということで」と一方的に押し切るのは、合意とは言いにくいです。
予告をしなかった場合、相手は厚生労働大臣に申し出ることができ、指導や勧告の対象になります(調査や指導は、原則として都道府県労働局が行います)。勧告に従わず命令が出て、その命令にも違反すると、50万円以下の罰金があります。なお、16条は予告の手続きを決めた規定で、解除そのものが有効かどうかは、民事の問題として別に判断されます。
フリーランスの契約終了、今日からできる最初の一歩
今日やることは、外注先の一覧に「契約の満了日」と「始めた日」の2列を足すことです。6か月以上続いている相手で、年末か年度末に満了する契約があれば、満了日の31日前をカレンダーに入れておきます。
ついでに、続ける相手のほうも眺めてみてください。実は、終える相手を決めると、来年もお願いしたい相手がはっきりします。また、続ける相手には、年内に「来年もお願いします」と一言伝えておくだけで、繁忙期の受注の取り合いで後回しにされにくくなります。外注先は、営業の手を増やしてくれる仲間でもあります。
業務委託のつもりでも、働き方によっては労働者と判断されることがあります。その線引きは、こちらの記事にあります。
「業務委託だから大丈夫」は通用しない?労働者かどうかは、契約書の題名では決まらない
予告が要るかどうかは、契約の形と取引の実態で変わります。迷ったときは、都道府県労働局や、社会保険労務士・弁護士などの専門家に確認してください。
ほかのコラムも、あわせてどうぞ
お金の学び(ウハウハ高等学校):開業資金の公的な相談先・融資制度4つ|借りる前に窓口で聞けること
営業・販路のコラム:コミッターズ コラム
筆者の記事:川口忠大のnote
蓄電池を知る(ENERGY BANK):系統用蓄電池メーカー比較|法人が製品・導入支援・保守を同じ条件で見る方法
導入先を比べる:系統用蓄電池の低圧・高圧比較|法人が費用と接続条件で選ぶ方法
お金の面を読む:系統用蓄電池の充電コストを読む|調達契約と託送料金
情報サイトのトップ:ENERGY BANK(系統用蓄電池の情報サイト)
運営元:コミッターズ
令和の総合商社では、有形無形問わずに大手商社が行わないマーケティングで貴社の販路を開拓します。本気で販路を拡大したい方には60分間無料で相談に乗らせていただきます。
参考(外部サイト):e-Gov法令検索、e-Gov法令検索(2)、e-Gov法令検索(3)、厚生労働省
※一般的な解説です。個別のケースは顧問税理士・社会保険労務士・弁護士などの専門家にご相談ください。
会社の現場の工夫や取り組みは、みんなの企業新聞の記事「イベントから商談を獲得する方法」でも紹介しています。あわせてご覧ください。