動画の編集を外注して、契約書の題名は「業務委託契約書」。それで困らなければ、よくある普通の契約です。困るのは、納品された動画が思っていたものと違ったときです。直してもらえるのか。支払いを止めてよいのか。契約書を読み返しても、どこにも書いてありません。
じつは「業務委託」は、民法に出てくる契約の名前ではありません。中身は、仕事の完成を約束する「請負」か、作業そのものを頼む「準委任」のどちらかに近いことが多く、請負と準委任の違いで、直し方も、報酬の払い時も、途中でやめるときのルールも変わります。
この記事では、民法と国税庁の案内(令和8年4月1日現在)をもとに、請負と準委任の違いを軸に、外注の契約書で最初に決める点を整理します。
野村證券のリテール営業で全国約7,000名中1位を4度。いまは代理店開拓で中小企業の販路をつくる会社「コミッターズ」を経営しています。川口です。
請負と準委任の違い、先に結論
- 請負は、仕事の完成を約束して、その結果に報酬を払う契約です(民法632条)。報酬は、仕事の目的物の引渡しと同時に払うのが原則です(633条)
- 準委任は、法律行為でない事務を頼む契約です(656条)。完成ではなく、頼まれた作業を丁寧に行うことが中心になります
- 契約書の題名が「業務委託」でも、どちらに近いかは、題名ではなく約束した中身で見ます。迷ったら、「成果物の納品が目的」か「作業の実施が目的」かを、契約書に一文で書いておきます
請負と準委任の違いを、仮の例で見る
まず、仮の例で考えます。
- 請負に近い例:動画の制作。完成した動画を納品してもらい、その動画に対して報酬を払います
- 準委任に近い例:SNSの運用代行。毎月、投稿の作成や返信などの作業をしてもらい、その作業に対して報酬を払います
請負と準委任の違いが出る3つのポイント
次に、違いを3つに分けて見ていきます。
- 完成させる義務:請負は、完成が約束そのものです。準委任は、完成ではなく、頼まれた事務を、善良な管理者の注意をもって処理する義務を負います
- 報酬の払い時:請負は、目的物の引渡しと同時です(633条)。準委任は、特約がなければ報酬を請求できず、請求できるのは事務を行ったあとが原則です(648条)。期間で報酬を決めたときは、別のルールが準用されます
- 成果に対する報酬:準委任でも、「成果に対して報酬を払う」と決めることができます。その成果が引渡しを要するときは、引渡しと同時に払います
つまり、動画の制作を「作業時間の分だけ払う契約」にしていると、納品物が気に入らなくても、完成の約束がないので、強く言いにくくなることがあります。逆に、運用代行を「完成したら払う契約」にすると、何をもって完成なのかが決まらず、払いのタイミングで揉めがちです。
完成しなかったとき、直してほしいとき
請負の場合の主なルールは、次の3つです。
- 注文者は、請負人が仕事を完成しない間は、いつでも損害を賠償して契約を解除できます(641条)
- 注文者に責任のない事情で完成できなくなったときや、完成前に解除されたときでも、すでにできた部分の給付で注文者が利益を受けるなら、その部分を完成とみなして、利益の割合に応じた報酬を請求できます
- 納品物が、種類や品質の点で契約と合っていないとき、注文者がそれを知った時から1年以内に請負人へ通知しないと、直してもらうことも、報酬の減額も、損害賠償も、解除もできなくなります(637条)
3つ目は、見落としやすいところです。たとえば、納品された動画に、頼んでいた字幕が入っていなかったとします。気づいたのに「忙しいから、あとで言おう」と放っておくと、1年たったときには、何も言えなくなります。ただし、請負人が合っていないことを知っていた、または重大な過失で知らなかったときは、この期間の制限は使えません。
準委任の場合と、2つが混ざる外注
準委任の場合は、完成が約束ではないので、このような「完成しなかった」という話にはなりません。また、途中で終わったときは、すでに行った割合に応じて報酬を請求できます。作業をしても、結果が出るとは限らない仕事に向いています。
注意したいのは、1つの外注に、2つが混ざっている場合です。たとえば、ホームページを作る部分は請負、公開後の更新作業は準委任、という形です。契約書を分けるか、項目ごとに「納品物あり」「作業の実施」と書き分けておくと、あとで迷いません。
印紙税は、題名ではなく中身で決まる
紙の契約書を作るときは、印紙税も関係します。国税庁のタックスアンサーによると、請負の契約書は、印紙税額一覧表の第2号文書「請負に関する契約書」に当たります。
ここで、民法の分け方と印紙税の分け方は、同じではない点に気をつけてください。国税庁は、印紙税の請負には、建設工事のような形のあるものだけでなく、警備、機械保守、清掃のような、役務の提供で無形の結果を目的とするものも含まれると説明しています。なお、税額は契約金額で決まり、契約金額が1万円以上100万円以下なら200円です。
国税庁のページには、「印紙税は、契約書に記載された内容により取扱いが異なります」という注意書きがあります。つまり、「業務委託契約書」という題名でも、中身を見て判断されます。
もう1つ、基本契約書にも注意が要ります。営業者の間で、継続する複数の取引の基本的な取引条件を定める契約書は、第7号文書「継続的取引の基本となる契約書」に当たることがあります。税額は1通につき4,000円です。ただし、契約期間が3か月以内で、更新の定めのないものは除かれます。
どの文書に当たるかの判断は、契約の内容しだいです。迷うときは、税務署や顧問税理士に確認してください。
見積書のうちに決めておく3点
契約書を作る前の、見積書の段階で、請負と準委任の違いを踏まえて決めておくと楽です。
別のサイトのおまかせ係長のコラム「外注の見積書の見かたと確認項目を質問と答えで整理」では、見積書は「この条件、この金額で引き受けられます」という提示で、発注書や契約書は「その条件で正式に頼みます、引き受けます」という確定の書類だと書かれています。
出典:おまかせ係長「外注の見積書の見かたと確認項目を質問と答えで整理」
そのため、見積書の内容が、そのまま契約の土台になります。見積書の段階で、次の3点を確認しておきましょう。
- 1何を納めてもらうのか。納品物があるなら、「何をもって完成か」を文字にする
- 2いつ払うのか。納品のあとか、月ごとか、段階ごとか
- 3直しの範囲はどこまでか。回数と、いつまで直してもらえるのか
つまり、3点がそろっていれば、契約書は、その内容を写すだけです。ここが曖昧なままだと、題名を「業務委託契約書」にしても、問題は先送りになるだけです。
請負と準委任の違いを確かめる、最初の一歩
手元にある、直近の外注の見積書か契約書を1通取り出してください。そして、「納めてもらうもの」と「払う時期」の2か所に線を引きます。線が引けなければ、そこが、あとで揉める場所です。
自社が仕事を受ける側のときも同じです。見積書に、「納品物あり」か「作業の実施」かを一言入れておくと、契約までの往復が減ります。特に、営業の現場では、この一言で、見積から受注までの日数が縮まりやすくなります。
個人に仕事を頼むときの、条件を文字にして伝える決まりは、こちらの記事に整理しています。
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契約の判断が難しいときは、弁護士、税務の点は顧問税理士などの専門家に確認してください。
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情報サイトのトップ:ENERGY BANK(系統用蓄電池の情報サイト)
運営元:コミッターズ
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参考(外部サイト):e-Gov法令検索、国税庁、国税庁(2)
※一般的な解説です。個別のケースは顧問税理士・社会保険労務士・弁護士などの専門家にご相談ください。
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