建設工事の発注書は、年末の駆け込み発注でこそ、書く項目が抜けやすくなります。電話で話が進み、着手の日が決まり、書面は後回しになる流れです。
実は、口頭の発注は、工事が順調な間は問題が見えません。食い違いが出るのは、変更が出たときと、支払いの場面です。そのとき、書面に何が残っているかが、話し合いの土台になります。
この記事では、建設工事の発注書に書く項目を、建設業法の定めを材料に整理します。仕事の中身とお金の項目と、変わる場面の決め方に分けて見ます。
野村證券のリテール営業で全国約7,000名中1位を4度。いまは代理店開拓で中小企業の販路をつくる会社「コミッターズ」を経営しています。川口です。
建設工事の発注書、先に結論
先に結論です。発注書は、契約を結ぶときに、決められた項目を書面に書き、互いに渡す形が法律の定めです。
建設業法第19条は、請負契約の当事者が、契約の締結に際して、掲げる事項を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない、と定めています。
決める
書く
渡す
つまり、発注書は、頼む側だけの控えではありません。頼む側と請ける側が、同じ書面を持つ形です。そのため、書く項目は、両方の目で確かめる前提でそろえます。
建設工事の発注書に書く項目、仕事の中身とお金
まず、仕事の中身の項目です。書面に残す項目には、工事内容が入ります。どの場所で、どこまでの仕事を頼むのかを、言葉で特定します。
次に、お金の項目です。請負代金の額が入ります。あわせて、工事に着手する時期と、工事を完成する時期も項目に入ります。
さらに、支払いの進め方も項目です。前金払や出来形部分に対する支払いをする場合は、その時期と方法を書きます。工事の完成後に代金を支払う時期と方法も、項目に入ります。
また、注文者が材料を提供したり、建設機械などを貸したりする場合は、その内容と方法も項目に入ります。現場で日常的に起きる貸し借りほど、書面から抜けやすくなります。
たとえば、年末の発注では、着手の時期だけが先に決まりがちです。代金の額と、完成の時期と、支払いの時期まで同じ書面にそろえると、年明けの段取りがその書面だけで読めます。
なお、検査の時期と方法、引き渡しの時期も項目に入ります。完成の場面は、年末年始の休みと重なります。そのため、誰が検査し、いつ引き渡すかは、発注の時点で書いておく形が合います。
さらに、署名と交付の場面も段取りに入れます。書面は作って終わりではなく、署名又は記名押印をして、互いに交付するところまでが形です。年末は担当が休みに入ります。そのため、誰が署名し、控えをどこに置くかまで決めておきます。
また、控えの置き場所は、現場と事務所でそろえます。現場にだけ控えがある会社では、支払いの場面で書面を探す時間が増えます。案件ごとに、書面の置き場所を一覧にしておく形が合います。
変わる場面の決め方を先に書きます
次に、変わる場面の項目です。設計の変更や、工事の追加で、工期や代金がどう変わるか。その決め方は、項目に入ります。
あわせて、天災などで工事が続けられなくなった場合の定めと、物価の変動で代金をどう扱うかの定めも項目に入ります。第三者へ損害が生じた場合の賠償の決め方も、同じ並びです。
別のサイトのおまかせ係長のコラム「フリーランスへの外注、発注側がやることを5つの手順で整理」では、「給付の内容、報酬の額、支払期日などを、書面または電磁的方法で示さなければなりません」と書かれています。建設の発注でも、示す中身を書面に残す点は同じです。
出典:おまかせ係長「フリーランスへの外注、発注側がやることを5つの手順で整理」
さらに、保証と遅れの扱いも項目に入ります。欠陥に対する担保の責任や保証保険の定め、遅れた場合の利息や違約金の定めです。最後に、紛争が生じた場合の解決方法も項目に入ります。
つまり、書面に残す項目は、順調な場面の取り決めだけではありません。困った場面の決め方まで含めて、発注の時点で並べる形です。そのため、年末の急ぎの発注ほど、変わる場面の項目が抜けていないかを見ます。
一方で、項目がそろっていても、現場と書面が離れると意味が薄れます。変更が出たら、その都度、書面の側も直す動きを、発注の段取りに入れておきます。
変更のときも書面、電子で交わす形もあります
また、変更の場面にも定めがあります。契約の内容を変更するときは、その内容を書面に残し、同じように互いに交付する形が定められています。
口頭で決めた変更は、代金の話になったときに確かめようがありません。そのため、追加の工事を頼む電話の後に、変更の書面を交わす動きまでを1組にします。
さらに、残し方には電子の形もあります。相手の承諾を得た場合は、書面の交付に代えて、電子の方法で項目を提供する形が認められています。
ただし、電子で交わした場合も、保存の置き場所は決めておきます。紙の書面と電子の記録が分かれると、後で探す時間が増えます。そのため、案件ごとに、書面と記録を同じ場所へ集める形にします。
なお、個別の契約の判断は、行政書士や弁護士などの専門家にも確認します。特に、大きな変更が重なる工事では、書面の直し方を先に聞いておく形が安全です。
建設工事の発注書、今日からできる最初の一歩
今日できる一歩は、年末に控える発注を、項目の一覧で見ることです。
- 1工事内容と代金の額が、書面に書かれているか見ます
- 2着手と完成の時期、支払いの時期と方法を見ます
- 3変更のときの決め方が、書面に入っているか見ます
この見方ができると、発注は、電話の速さだけの仕事ではなくなります。書面に残る項目がそろっている会社は、変更の場面でも話し合いが短くなります。そのため、建設工事の発注書は、年末の発注を増やす前に、型をそろえる形が合います。
フリーランスへの発注で、取引条件を書面で示す定めを整理した記事があります。発注の場面で書面に残す考え方は、建設の発注でも土台になります。
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