年末の忘年会や帰省に合わせた予約が増える時期ほど、キャンセル料の案内表示は古いまま残りがちです。実は、申し込む画面は磨かれていても、やめるときの条件だけ前の季節のまま、という会社は少なくありません。
キャンセル料は、金額そのものよりも、予約の前にどう示していたかで受け止め方が変わります。さらに、消費者との契約では、法律の物差しも決まっています。つまり、年末の繁忙期に入る前の点検が、そのまま当日の言い争いを減らす準備になります。
この記事では、キャンセル料の案内表示で直す場所を整理します。さらに、平均的な損害の考え方と、説明を求められたときに困らない準備もまとめます。
野村證券のリテール営業で全国約7,000名中1位を4度。いまは代理店開拓で中小企業の販路をつくる会社「コミッターズ」を経営しています。川口です。
キャンセル料の案内表示は、先に結論
まず、結論です。キャンセル料の案内表示は、予約が確定する前に、時期ごとの区分と金額と、対象になる予約の範囲が読める形が基本です。つまり、キャンセルが起きてから規約を探す案内では、遅いのです。
消費者庁の資料では、消費者契約法第9条第1項第1号について、同種の契約の解除に伴い事業者に生ずべき平均的な損害の額を超える部分を無効とする、と説明されています。そのため、表示を作る前に、自社のキャンセルで実際に何の損害が出るのかを書き出す作業が先に来ます。
たとえば、食材の仕入れが戻せないのか、スタッフの手配が固まっているのか、空いた枠を別の予約で埋められるのか、という具合です。なお、損害の出方が書けない区分は、金額だけが先に立っている区分です。そのため、表示の直しは、金額の直しではなく、根拠の棚卸しから始めます。
キャンセル料の案内表示で直す場所
まず、直す場所は、予約の画面と、店舗の掲示と、予約確認の連絡文です。次に、言葉は、どの場所でも同じ言葉にそろえます。さらに、金額と時期は、場所ごとに違う数字にしません。
まず、予約の画面では、申込みを確定する前に読める場所に置きます。次に、店舗の掲示では、受付から見える場所に、画面と同じ言葉で書きます。さらに、予約確認の連絡文では、予約の日時と並べて、キャンセルの期限をもう一度示します。
別のサイトのおまかせ係長のコラム「予約・請求・問い合わせをオンライン化する手順」では、予約画面について「予約画面には、キャンセルの期限と変更の方法も分かりやすく示しておきましょう」と書かれています。
出典:おまかせ係長「予約・請求・問い合わせをオンライン化する手順」
この考え方は、年末の予約でも同じです。なお、画面と掲示と連絡文で言葉がずれている場合は、画面の側からそろえ直します。一方で、規約の奥にだけ書かれた条件は、読まれないまま当日の問い合わせになります。つまり、キャンセル料の案内表示は、置き場所の設計そのものです。
時期の区分は、予約の種類ごとに分けます
次に、時期の区分です。たとえば、貸切の忘年会と、少人数の通常予約では、損害の出方が違います。そのため、区分は、予約の種類ごとに分けて書きます。
また、無断のキャンセルと、事前に連絡があったキャンセルも、別の行に分けます。さらに、区分の境目では、いつから対象になるのかが読める書き方にします。たとえば、起点になる日を添えるだけでも、読み手の迷いは減ります。
なお、変更を受け付ける予約では、変更の期限とキャンセルの期限を分けて示します。変更はできるのに、その期限が書かれていない案内は、年末の直しどころです。つまり、区分は、細かくするためではなく、損害の出方で分けるためにあります。
表示の言葉は、読み手の行動で書きます
さらに、言葉の直し方です。まず、条件の文は、読み手が次に取る行動で書きます。たとえば、いつまでに、どこへ連絡するのかが分かる文です。
一方で、抽象的な注意だけの文は、行動につながりません。そのため、連絡の窓口と、受け付ける方法も、条件と並べて書きます。また、例外がある予約では、例外の対象も同じ場所に添えます。
たとえば、建設業のお客様の忘年会のように、人数の変更が多い予約では、人数変更の連絡先と、キャンセルの連絡先を分けて書くと、連絡が早くなります。つまり、キャンセル料の案内表示は、予約を守ってもらうための文面でもあります。
平均的な損害は、自社の記録から出します
まず、平均的な損害は、業界の相場の数字ではありません。消費者庁の資料では、同種の消費者契約の解除に伴い、その事業者に生ずべき損害の平均、という考え方が示されています。そのため、他社の料率表をそのまま借りる形は、自社の根拠にはなりません。
根拠は、自社の過去のキャンセルの記録から作ります。たとえば、戻せなかった仕入れの記録、空いた枠を埋められなかった記録、手配を終えた人員の記録です。なお、記録の残し方は、区分ごとに分ける形が向いています。
仕入れ
手配
空き枠
また、金額を変えたときは、変えた日と理由も一緒に残します。次に、表示を直した画面も、日付と一緒に残します。さらに、記録がない区分は、金額の置き方そのものから見直します。
説明を求められたときの準備も、表示の一部です
消費者契約法第9条第2項では、消費者が説明を求めたとき、事業者は算定の根拠の概要を説明するよう努めなければならないとされています。つまり、キャンセル料の案内表示は、表に出す文面と、裏側の根拠メモで1組です。
たとえば、窓口の担当が根拠を聞かれて、その場で記録を出せる会社では、話は短く終わります。一方、根拠を出せない会社では、金額の話が感情の話に変わります。そのため、根拠メモの置き場所と、窓口の返事の型は、表示と一緒に点検します。
なお、消費者庁では、解約料に関する情報提供の在り方について、検討が続いています。現時点では法改正前の現行の考え方で表示を作り、動きがあれば直す形が現実的です。
キャンセル料の案内表示でよくある質問
キャンセル料の案内表示は、規約に書けば十分ですか、と聞かれます。答えは、規約だけでは足りない場面があります。予約が確定する前に読める場所にも、時期と金額を置く形が向いています。
金額は、他社の表示に合わせればよいですか、という質問もあります。答えは、合わせる先は他社ではなく、自社の損害の記録です。平均的な損害は、その事業者に生ずべき損害で見るためです。
点検は誰がしますか、とも聞かれます。答えは、画面を作る担当と、窓口で答える担当が一緒に見ます。作る側だけでは、実際の質問とずれるためです。
キャンセル料の案内表示、今日からできる最初の一歩
まず、自社の予約画面を、初めて予約する人の目で読み直します。次に、時期と金額と範囲が、確定の前に読めるかを見ます。最後に、根拠メモの置き場所を決めます。
さらに、直した画面は、日付と一緒に記録して残します。その積み重ねで、キャンセル料の案内表示は、当日の言い争いを減らす道具に変わっていきます。なお、浮いた時間は、年末の予約そのものへの対応に回します。
また、点検のあとは、キャンセルにまつわる問い合わせの内容を見直します。次に、質問が集まった場所だけを直します。そのため、案内は、作った日ではなく、質問の減り方で育っていきます。
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参考(外部サイト):消費者庁
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