「今月めちゃくちゃ調子いいな。よし、自分の給料、来月から30万円増やそう」。
……その気持ち、痛いほど分かります。自分の会社なのだから、自分の給料は自分で決める。ごもっとも。ところが税務の世界では、社長の給料は「気分」では動かせません。今日は、この地味で痛い話を、焼肉の話より少しだけ短めにお届けします。
先に結論:役員報酬は「毎月同じ額」が基本
- 役員報酬が会社の経費(損金)になるのは、原則として毎月同じ額を払う「定期同額給与」のとき。
- 金額を変えてよいのは、事業年度の開始から3か月以内の改定が基本。決算後の株主総会で決めるのが、まさにこれです。
- 期の途中で変えられるのは、臨時改定事由と業績悪化改定事由という、ごく限られた例外だけ。
つまり、社長の給料は「年に1回、決算のあとに決めるイベント」。思いつきで毎月いじる遊びではないのです。
- 1決算が終わる
- 2定時株主総会で、今期の役員報酬を決める
- 3期首から3か月以内に、金額を確定させる
- 4あとは1年間、毎月同じ額を払い続ける
ケース1:調子がいいので、期の途中で増額した
3月決算の会社で、社長の報酬は月50万円。10月から「今期は絶好調だから」と月80万円に増やしたとします。
これは3か月以内の改定でも、例外のどちらでもありません。すると、増やした分は経費として認められないのが原則です。増額30万円が半年分で180万円。経費にならないまま、会社の利益に法人税がかかります。仮に税の負担を3割とざっくり置くと、約54万円。自分に給料を上げたつもりが、会社の税金も上がった、という切ないオチです。
しかも社長本人には、増えた給料に所得税や社会保険料もかかります。両方からやられるわけです。
ケース2:資金繰りが苦しいので、期の途中で減額した
では減らすのはどうか。「今月キツいから、報酬を半分にしよう」。気持ちは分かりますが、これも自由ではありません。
減額が認められるのは、業績悪化改定事由、つまり会社の経営状況が著しく悪化したなど、やむを得ない事情があるときです。国税庁の整理では、「資金繰りの都合」や「業績目標に届かなかった」というだけでは、この例外には当たりません。
認められるのは、たとえば取引先の倒産や急な売上の激減で、「報酬を下げないと会社が回らない」ことを説明できるような場合です。説明できる資料(売上の推移や資金繰り表)を残しておくのがポイントです。
ケース3:期首から3か月以内に変えた(これはセーフ)
- 期首から3か月以内に改定した
- 定時株主総会の決議どおりに改定した
- 臨時改定事由に当たる(役職の変更など、臨時に必要な改定)
- 期の途中の気分で増額した
- 資金繰りの都合だけで減額した
- 決算が近づいたので利益調整で増額した
3月決算なら、4月から6月の間に決めた金額で、1年間ずっと同じ額を払う。これが一番スッキリした形です。迷ったら、「決算のあとに一度決めて、1年間触らない」と覚えておけば事故は減ります。
期の途中でまとめて払いたい場合は、事前に所轄の税務署へ届け出る「事前確定届出給与」という別ルートがあります。ただし、届け出た金額・時期どおりに払わないと経費にならないので、使うなら税理士さんと一緒に。
まとめ:社長の給料は「ケチ」ではなく「ルール」
役員報酬は、一度決めたら1年間は動かさない。これだけで、無駄な税金がいくつも消えます。今期の報酬を見直したいなら、次の決算のあと、3か月以内が勝負です。カレンダーに入れておきましょう。
※一般的な解説です。個別のケースは顧問税理士などの専門家にご相談ください。