大阪まで日帰りで商談に行った帰りの新幹線。「これ、出張の日当って自分に払えるのかな……」。社長の頭に浮かぶ、あの疑問です。
結論から言うと、払えます。ただし「相場」と「紙1枚」が必要です。今日は、その紙1枚の話をします。
先に結論:「旅費規程」を作って、その範囲で払う
- 日当は、出張に伴う食事代や雑費を補う意味合いのお金です。
- 社員に払う場合、「通常必要であると認められる範囲」なら、受け取る側の所得税はかかりません(所得税基本通達9-3)。
- 「通常必要」の目安をはっきりさせるのが、旅費規程という社内ルールです。
旅費規程は、難しいものではありません。「出張とは何か」「日当は1日いくら」「宿泊費は1泊いくらまで」を書いた、数枚の紙です。
- 1旅費規程を作る(出張の定義・日当・宿泊費・交通費の精算ルール)
- 2社長(取締役会や社員)の承認を取る
- 3出張のたびに、行き先・日程・目的を記録する
- 4規程どおりの金額を払い、領収書や記録をまとめて保存する
金額は「相場」で決める
日当の金額には、「法律で決まった上限」はありません。だからこそ、世間の相場から大きくはみ出さないことが大切です。相場を大きく超えた額は、「通常必要」とは言えず、課税対象になる可能性があります。
相場を調べるなら、民間の調査会社や業界団体の「旅費規程の実態調査」などを参考にします。役員だけ極端に高い、というのは目立つ形です。役職で差をつけるのは一般的でも、「社長だけ別格」は説明しづらいことを覚えておきましょう。
「出張」の線を引いておく
近所の取引先に電車で行くのも出張? ここがあいまいだと、日当が「ただのお小遣い」に見えてしまいます。そこで規程で線を引きます。たとえば「片道100km以上を出張とする」と決めている会社の例があります。
- 旅費規程に金額が書いてある
- 出張の日付・行き先・目的の記録がある
- 相場から大きく外れていない
- 規程がなく、その場の気分で金額を決めた
- 出張の記録が何も残っていない
- 社長だけ極端に高い
出張旅費や日当は、仕入税額控除の対象になる取り扱いがあります。ただし、インボイス制度の下での細かい要件があるので、記帳の前に税理士さんに確認しておくと安心です。
旅費規程のひな形:書くのはこの6項目
難しい文章は要りません。次の項目を、会社の実態に合わせて書けば、まずは形になります。
◯◯の金額は、会社の規模や業界の相場で決めます。社長だけでなく、従業員にも同じ規程が使える形にしておくと、「社長だけ特別」と見られにくくなります。
出張報告書は、3行でいい
- 日付と、行き先(例:10月5日、大阪市の取引先)
- 目的と、会った相手(例:新規商品の商談、○○社の営業部長)
- 使った交通手段と、かかった費用(例:新幹線、往復2万円)
日当は、「本当に出張した」と説明できてはじめて意味を持ちます。報告書は、手書きでもスマホのメモでも構いません。カレンダーの予定と、交通費の領収書を一緒に保管しておくと、さらに強くなります。
ありがちな落とし穴
- 日当と食事代の二重取り:日当を払いながら、出張中の食事代も領収書で経費にしていると、同じ目的のお金を二重に出していることになります。日当を出す日は、食事代を別に精算しないルールにしておきましょう。
- 規程より高い日当を、あとから出す:規程にない金額は、「通常必要な範囲」と説明しにくくなります。金額を変えるときは、先に規程を直してから払います。
- 規程を作っただけで、使っていない:出張のたびに報告書を書き、規程どおりに払うことで、はじめて「ルール通り」になります。
よくある質問
Q. 日帰りの出張でも、日当は払える?
A. 規程で「日帰りの日当」を決めていれば、払えます。宿泊を伴う場合より、金額を低めに設定する会社が多いです。
Q. 社長1人の会社でも、旅費規程は必要?
A. 必要です。1人会社ほど「自分に払うお金」について説明を求められやすいので、紙1枚で説明できる状態にしておくのがおすすめです。
Q. 海外出張の日当は?
A. 国内より高めに設定する会社が多いですが、行き先の物価や相場を踏まえて、規程に書いておくのが基本です。
ミニ事例:2泊3日の出張に、規程を当てはめる
規程で、日当を「社長 1日5,000円、従業員 1日3,000円」と決めてあるとします(金額は例です。実際は、会社の実態に合った合理的な額にしてください)。
- 社長が2泊3日で出張:5,000円×3日=15,000円
- 従業員が同じ出張:3,000円×3日=9,000円
交通費や宿泊費は実費で精算し、日当は規程どおりの定額で払います。領収書を集めなくても、規程があるから払える、というのが日当の特徴です。
規程は、年に1回だけ見直す
規程は作って終わりではなく、年に1回、決算のころなどに見直しておくと安心です。物価が上がったとき、出張先や出張の目的が変わったときは、金額や対象を見直します。海外出張は、国内とは別の表を用意する会社もあります。変えたときは、日付と変更点を1行メモして、規程のそばに置いておきましょう。
まとめ:地味な1枚が、いちばん強い
日当は、あとから「あのとき出張したよね?」と聞かれたときに、紙で答えられる状態にしておけば強い制度です。今日、旅費規程のひな型を探してみてください。1時間で作れます。
※一般的な解説です。個別のケースは顧問税理士などの専門家にご相談ください。