月末に届いた請求書の山を、Museに見せて「インボイスは大丈夫?」と聞きたくなる社長は、これから増えそうです。Museは、2026年10月23日から日本でも使えるようになりました。
ただ、請求書のインボイス確認は、AIに丸ごと任せられる仕事ではありません。記載の抜けを探す作業と、登録が本当にあるかを確かめる作業と、控除できるかを決める作業は、別の仕事です。
この記事では、Q&Aの形で、請求書のインボイス確認のうち、Museに頼める部分と人が決める部分を分けます。なお、国税庁のページは、「令和8年4月1日現在法令等」と書かれたものを読みました。
野村證券のリテール営業で全国約7,000名中1位を4度。いまは代理店開拓で中小企業の販路をつくる会社「コミッターズ」を経営しています。川口です。
請求書のインボイス確認、Museに頼める範囲を先に結論
まず、答えを先に言います。Museに頼んでよいのは、記載事項の抜け探しと、整理の下書きです。一方で、登録番号が実在するかの確認と、控除できるかの判断は、人がします。
理由は単純です。たとえば、Museは、メールの送信や商品の購入のような大事な操作の前に、利用者に確認すると、Metaは説明しています。つまり、最後に決めるのは人だ、という作りです。
請求書のインボイス確認も、同じ考え方で分けると迷いません。つまり、この記事の線引きは、Museの機能の話ではなく、経理の仕事の分け方の話です。
請求書のインボイス確認で見る記載事項は6項目
では、何を見ればよいのでしょうか。国税庁のタックスアンサーには、取引の相手から受け取る請求書などの記載事項が、6つ挙げられています。
- 1書類を作った人の氏名または名称と、登録番号
- 2取引年月日
- 3取引内容(軽減税率の対象品目なら、その旨)
- 4税率ごとに区分して合計した対価の額と、適用税率
- 5税率ごとに区分した消費税額等
- 6書類を受け取る事業者の氏名または名称
さらに、この6項目が書いてあるかを一覧にする作業は、Museのような道具と相性がよい仕事です。ただし、Museが請求書の画像やPDFを読めるか、どの形式まで読めるかは、読んだ公式ページでは確認できませんでした。そのため、アプリ内の案内で、自分で試してから使ってください。
簡易インボイスは、宛名がなくても不備とは限りません
一方で、AIが間違えやすい場面があります。宛名が書かれていない請求書や領収書です。
別のサイト(おまかせ係長)のコラム「免税事業者への支払いと消費税|10月からの7割控除」では、宛名などが省略された簡易インボイスについて、「宛名がないだけで不備とは限りません」と書かれています。
出典:おまかせ係長「免税事業者への支払いと消費税|10月からの7割控除」
国税庁のタックスアンサーでも、小売業、飲食店業、タクシー等の事業者が交付する書類は、特別に扱われます。たとえば、適用税率か消費税額等のどちらか一方の記載で足り、受け取る側の名称の記載は不要です。
つまり、Museに「6項目がそろっていない」と言われても、すぐに不備とは決められません。そこで、発行した相手が小売業や飲食店などかどうかを、人が見ます。
登録番号の確認は、Museでなく国税庁の公表サイトで
次に、請求書のインボイス確認でいちばん大事な、登録番号の話です。登録番号は、法人番号がある課税事業者なら「T+法人番号」で、それ以外なら「T+13桁の数字」です。
実在するかは、国税庁の「適格請求書発行事業者公表サイト」で調べます。入力するのは、Tを除く13桁の半角数字で、一度に10件まで検索できます。
Museに抜けを探させる
人が公表サイトで検索する
見つからない相手に確認する
人と税理士が控除を決める
なぜ、登録番号はMuseに聞かないのか
理由は、登録の有無が、国税庁が公表する情報で決まるからです。AIの答えは、公表サイトの代わりにはなりません。これは筆者の考え方です。
また、公表サイトには、検索しても登録番号が存在しないときの案内があります。内容を確かめたうえで、不正なインボイスが疑われるときは、国税庁の情報提供フォームから情報を寄せられる、と書かれています。
さらに、見つからないときの動き方まで、公式に決まっています。そのため、番号を自分の目で入力して、結果を見るところは、人の仕事に残します。
見つからない相手は、すぐ決めつけない
もし見つからなかったら、まず、入力した番号に誤りがないかを見直します。次に、取引先に、いまの登録の状況をたずねます。
なお、登録のない相手からの仕入れには、経過措置があります。国税庁によると、時期によって控除できる割合が変わります。そのため、金額の計算は、顧問税理士に確認してください。
領収書・請求書の整理をMuseに頼むとき、元データは消さない
なお、整理の作業は、Museに頼みやすい仕事です。たとえば、次のような下書きなら、頼んで構いません。
- 請求書のファイル名の付け方の案
- 取引先ごとの、支払期日の一覧表の下書き
- 記載事項の抜けがあった請求書の、取引先への問い合わせ文の案
- 顧問税理士に聞くことのメモ
ただし、問い合わせ文は、Museが勝手に送らないようにします。実際、筆者は、Museに作業を任せるときも、下書きは見せてもらい、承認してから送信や投稿をする運用にしています。
整理した表は、請求書の代わりになりません
まず、国税庁は、仕入税額控除を受けるには、帳簿と請求書等の保存が必要だと説明しています。保存期間は、課税期間の末日の翌日から2か月を経過した日から7年間です。
そのため、Museが作った一覧表だけを残して、元の請求書を捨てるのは危ない形です。これは、国税庁の説明を筆者が読んだ結果です。くわしい保存の話は、こちらの記事にあります。
会食と出張の領収書を、次の商談につなげる記録に変える保存版メモ術
また、メールで届いた請求書は、データのまま保存する決まりがあります。こちらの記事も、あわせてどうぞ。
メールで届いたPDFの請求書、「印刷して紙で保管」はじつはNGです
会社の情報を入れるときの線引き
また、請求書には、取引先の名前、口座、担当者の名前が載っています。そのため、まず、顧客や従業員の個人情報、取引先の未公開の情報は、入れません。
Metaは、接続するアプリやアクセスの範囲を、利用者が選べると説明しています。そこで、最初は、見本の請求書や、名前と口座を隠したものから試すのが安全です。
請求書のインボイス確認でよくある質問を3つ
「Museに請求書の写真を見せて、登録番号が合っているか聞いていい?」と聞かれます。答えは、番号が書いてあるかを見るのは構いませんが、実在の確認は公表サイトです、です。つまり、写真から番号を読むところまでがMuse、検索は人です。
「Museが『宛名がないので不備です』と言いました。信じていい?」と聞かれます。答えは、まだ決められません、です。小売業や飲食店などの簡易インボイスなら、宛名がなくても不備とは限りません。そこで、発行した相手の業種を見ます。
「Museに、控除できる金額まで計算させていい?」と聞かれます。答えは、下書きは構いませんが、確定は人と税理士です、です。実は、会社の状況や取引の時期で、答えが変わります。
請求書のインボイス確認、今日からできる最初の一歩
今日できることは、1つです。まず、今日届いた請求書から、一通を選びます。次に、6項目に印をつけて、登録番号を公表サイトで検索します。
次に、Museを使うなら、その後です。たとえば、残りの請求書の6項目を、一覧にしてもらいます。さらに、抜けた請求書の問い合わせ文の下書きも、頼めます。
筆者は、AIに担当を持たせて、運営の作業を分けています。ただし、担当を分けるほど、人が決める場所をはっきりさせる必要があります。請求書のインボイス確認では、その場所が、登録番号の確認と、控除の判断です。
Museについて気になることは、遠慮なく聞いてください。
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参考(外部サイト):about.fb.com、国税庁、国税庁(2)、国税庁(3)
※一般的な解説です。個別のケースは顧問税理士・社会保険労務士・弁護士などの専門家にご相談ください。
