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2026.10.22

取適法で手形払いは禁止に。発注を受ける小さな会社が確認する3つ(2026年10月時点)

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「来月の発注分から、お支払いは手形でお願いします」。長年の取引先からそう言われて、小さな会社の社長は画面の前で固まります。立場を考えると、断りにくい。「まあ、大きな会社だし」と了承の返事を打ちかけて、指が止まります。

その返事は、少し待ってください。2026年1月1日に、下請法は「取適法」に変わりました。正式な名前は、中小受託取引適正化法です。この法律の対象になる取引では、手形で代金を払うことが認められなくなりました。値上げの相談を無視して、一方的に値段を決めることも禁止されています。ただし、どの取引にも当てはまるわけではありません。取引の中身と、会社の規模の組み合わせで決まります。

この記事では、2026年10月時点の法令(国の法令検索サイトで確認できる条文)と、公正取引委員会、中小企業庁の資料をもとに、対象になる取引の見分け方、新しく加わった2つのルール、発注を受ける小さな会社が確認する3つのことを整理します。自分が発注する側になる場合の注意も書きました。

野村證券のリテール営業で全国約7,000名中1位を4度。いまは代理店開拓で中小企業の販路をつくる会社「コミッターズ」を経営しています。川口です。

先に結論

手形で払うと言われたら、「うちの場合は対象か」を先に確かめます。確かめる順番は、取引の中身、会社の規模、支払い方法です。

対象かどうかは「取引の中身」と「規模」の2段階で見ます

まず、取引の中身です。取適法が対象にするのは、次の5種類です(第2条)。

多くは、自社が仕事として売っているものや、請け負っているものの一部を、外に出す形です。建設業者が建設工事を下請に出す取引は対象外です(建設業法に別の規定があります)。自社のホームページ制作を制作会社に頼むような、自分で使うだけのものも、自社がホームページ制作を仕事にしていなければ、情報成果物作成委託には当たりません。

次に、規模です。発注する側(委託事業者)と受ける側(中小受託事業者)の組み合わせは、次のとおりです。

小さな会社の目安は、1つだけ覚えておけば足ります。取引先の資本金が1,000万円を超えていて、自社が資本金1,000万円以下の会社か個人なら、規模の条件は満たします。あとは、取引の中身が先ほどの5種類に当たるかどうかです。

仮の例を2つ見ます。

2社目のような取引は、2025年までは対象外でした。従業員基準は、資本金を小さくして法律を避ける抜け道を、ふさぐための追加です。

新しく加わった2つのルール

1つ目は、手形払いの禁止です(第5条第1項第2号)。手形を交付して代金を支払うことは、支払いの遅れにあたる行為として禁止されました。公正取引委員会のページには、これまでは支払サイトが60日を超える手形払いが禁止されていた、と書かれています。今回は、手形払いそのものが認められません。

電子記録債権(でんさい)、一括決済方式、ファクタリングは、すべてが禁止ではありません。ただし、支払期日までに、手数料を含む代金の満額を現金で受け取れないものは、認められません。中小企業庁の資料では、次のように整理されています。

日付で見てみます。11月30日(月)に納品した分の支払期日は、納品日(受領日)を1日目として60日目の、2027年1月28日(木)までに定めなければなりません(第3条)。以前のような支払サイト60日の手形なら、満期は60日後の3月29日(月)で、納品から120日後です。現金を手にするまでの期間が、半分になります。

2つ目は、協議に応じない一方的な代金決定の禁止です(第5条第2項第4号)。受ける側から代金の協議を求められたのに、応じなかったり、求められた説明や情報の提供をしなかったりして、そのまま一方的に代金を決め、受ける側の利益を不当に害することが、禁止されました。

公正取引委員会の運用基準では、次のように読むとされています。

たとえば、従業員3人の部品加工会社(仮の例です)が、材料費の上昇を理由に、「単価の相談をしたい」とメールを送ります。返事が来ないまま3回催促して、来期の発注書には前年と同じ単価が書かれていました。対象の取引なら、協議に応じないまま、据え置きで決められた形になりえます。ただし、「利益を不当に害する」かどうかは、説明の内容や協議の経過などを見て、総合的に判断されます。

発注を受ける小さな会社が確認する3つ

  1. 1発注内容が、書面か電子メールなどで示されているか:給付の内容、代金の額、支払期日、支払い方法などが書かれている必要があります(第4条)。口頭だけの発注は、委託事業者の側の義務違反になりえます。電子メールなどで示された場合でも、書面を求めれば、遅滞なく交付してもらえます(第4条第2項)。
  2. 2支払期日と支払い方法:納品の日から60日以内か。手形ではないか。電子記録債権なら、満期日が支払期日以前か、手数料を負担させられていないか。
  3. 3値上げの相談の記録と、差し引かれたもの:相談した日付と内容をメールで残します。振込手数料を差し引かれていないかも見ます。公正取引委員会の運用基準では、受ける側との合意の有無にかかわらず、振込手数料を受ける側に負担させて代金から差し引くことは、減額にあたるとされています。

支払いが遅れた場合は、遅延利息がつきます。受領日から60日を経過した日から実際に支払う日まで、年率14.6%です。仮に、受領日から60日を経過した日のあと、さらに10日たってから50万円が支払われたなら、500,000円 × 14.6% × 10日 ÷ 365日 = 2,000円です。契約書に10%など別の利率を書いていても、この利率が優先されると、中小企業庁の資料にあります。

窓口に知らせたことを理由にした不利な扱いを、禁じる決まりもあります。公正取引委員会、中小企業庁、その取引を所管する大臣に事実を知らせたことを理由に、取引の数量を減らしたり、取引をやめたりすることは、禁止されています(第5条第1項第7号)。

取適法やフリーランス法で、取引条件の明示、支払期日、手形払いの禁止、振込手数料の扱いがどう決まっているかを、外注の見積書の確認とあわせて整理した記事として、「外注の見積書の見かたと確認項目を質問と答えで整理」があります。外注する側を中心に書かれていますが、受ける側の確認にも使えるとされています。

出典:おまかせ係長「外注の見積書の見かたと確認項目を質問と答えで整理」

ここは例外・注意:対象外のとき、発注する側になるとき

自分が発注する側になる場合もあります。たとえば、資本金1,500万円、従業員5人の加工会社(仮の例です)が、自社が請け負っている製品の部品加工を、個人の職人に頼むと、委託事業者になります。発注内容を書面か電子メールなどで示す、取引の記録を作って2年間保存する、支払期日を納品から60日以内に決める、といった義務がかかります。個人に仕事を頼むときは、別にフリーランス法のルールもあります。

今日からできる最初の一歩

見積書や注文書のひな形に、「支払期日」「支払い方法」「振込手数料の負担先」の3つを書く欄を作ります。新しい取引先と最初に条件を決める場面で、営業の側からこの3つを先に聞くと、あとから「手形で」と言われる場面が減ります。あわせて、取引先の資本金(登記されている金額です)も、最初の商談のうちに、会社概要や登記事項証明書で確かめておきます。

対象になるかは、その取引先との関係で決まります。大きな1社に売上が偏っているなら、売り先を増やすこと自体が、立場を守る一番の方法です。

個人に仕事を頼むときの条件の書き方は、こちらの記事にあります。

個人に仕事を頼むとき、「条件」をメールで書いていますか?フリーランス法の最初の一歩

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参考(外部サイト):e-Gov法令検索、公正取引委員会、公正取引委員会(2)、経済産業省、経済産業省(2)

※一般的な解説です。個別のケースは顧問税理士・社会保険労務士・弁護士などの専門家にご相談ください。

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