「代理店になってもらう」。この一言、実はいろいろな意味で使われます。契約書の題名は「代理店契約」なのに、中身は「自分で仕入れて売る」販売店だった、というすれ違いは、小さな会社同士の取引でよく起こります。代理店に動いてもらうコツは、コミッターズのコラム「代理店を戦力化する方法」で書いています。
先に結論:契約には、大きく3つの型がある
- 代理店型:会社の名前で契約を結び、成約したら手数料をもらう。在庫は持たない。
- 販売店型:自分で仕入れて、自分の名前で売る。在庫リスクを自分で負う代わりに、売値を自分で決められる。
- 紹介型:お客さんを会社につなぐだけ。契約は会社とお客さんで直接結び、紹介料をもらう。
3つを見分ける質問
- 契約の相手は、誰?(お客さんと契約するのは、会社か、代理店か)
- 在庫は、誰のもの?(売れ残ったら、誰が損をするか)
- 値段は、誰が決める?
- 報酬は、手数料か、売値との差額か?
この4つを聞くだけで、どの型かが、ほぼ決まります。お互いの認識が違うと、「在庫は引き取ってくれるはず」「いや、そちらで売り切るもの」というモメ事につながります。
- 契約するのは会社とお客さん
- 在庫は代理店が持たない
- 報酬は手数料・紹介料
- 代理店が仕入れて、自分の名前で売る
- 在庫リスクは代理店が負う
- 売値は代理店が決められる
契約書で、最低限決めておくこと
- 1型を決める(代理店・販売店・紹介のどれか)
- 2担当する地域・商品の範囲と、独占か非独占かを決める
- 3手数料の率、支払う時期、支払い条件を決める
- 4解約の条件と、在庫・未払いの精算方法を決める
- 他社の競合商品を扱ってよいか(競合の取扱い)
- お客さんからのクレームは、誰が対応するか
- 秘密保持と、契約が終わった後の扱い
保険、金融商品、人材の紹介など、分野によっては、代理や紹介を行うために登録や許可が必要です。「紹介料をもらうだけ」でも、分野によっては法律の対象になります。自社の商品が当てはまらないか、事前に確認しましょう。
同じ10万円の売上で、3つの型を比べる
10万円の商品が1つ売れたとします。型によって、手元に残るお金も、背負うリスクも、まったく違います(数字は例です)。
- 代理店型:手数料が10%なら、1万円。在庫は会社が持つので、売れ残りの心配はありません。
- 販売店型:7万円で仕入れて10万円で売れば、差額は3万円。ただし、売れ残りは自分の負担です。
- 紹介型:お客さんを紹介して、紹介料が5%なら5,000円。契約や在庫には関わりません。
手元に残るお金は販売店型がいちばん大きく見えますが、在庫と売れ残りのリスクも、いちばん大きい型です。「どの型で、いくら残るのか」を、契約の前に数字で確認しておきましょう。
トラブルになりやすい、5つの場面
- 手数料の支払い時期:「成約時」なのか「入金後」なのかで、お金の入る時期が変わります。締め日と支払日も決めておきましょう。
- 返品・売れ残り:販売店型で、売れ残りを引き取ってもらえるのか。引き取りなし、が基本の型です。
- 独占の範囲:「この地域は自分だけ」と思っていたのに、同じ地域に別の代理店が増えた、という話です。
- 契約の終わり方:何か月前に伝えれば終えられるのか。終わったあとの在庫やお客さんはどうなるのか。
- お客さんの情報:契約が終わったあとも、そのお客さんに営業してよいのか。
販売店型で「売値を指定される」のは、アリ?
販売店は、仕入れた商品を自分の名前で売る立場です。そこで、メーカー側が売る値段を強制的に決めてしまうのは、独占禁止法の面で問題になることがあります。「この値段以下で売らないで」と言われたときは、お願いなのか強制なのかを、契約書や取引の実態で確認しましょう。判断が難しい分野なので、迷ったら弁護士に相談してください。
よくある質問
Q. 契約書は、なくても大丈夫?
A. 口約束だけだと、型・手数料・終わり方の認識がすれ違いやすくなります。簡単なものでも、書面かメールで残しておくのが安全です。
Q. 独占契約にしたほうがいい?
A. 独占は、代理店にとっては安心ですが、会社にとっては他の販路をふさぐことになります。地域・期間・最低の販売量をセットで決めると、バランスが取りやすくなります。
ミニ事例:「在庫は引き取ってくれるはず」で起きること
たとえば、雑貨メーカーA社と、小さな販売会社B社が「代理店契約」を結んだとします(数字は例です)。代理店を増やしたいときの悩みは、コミッターズのコラム「代理店募集で応募が集まらない理由と対策」で取り上げています。
- B社は「代理店だから、売れ残りはA社に戻せる」と考えて、50個(1個3,000円、計15万円)を先に引き取った。
- A社は「販売店契約のつもりで、売れ残りはB社の責任」と考えていた。
- 半年後、20個が売れ残り、6万円分の在庫の扱いで言い合いになった。
どちらも悪気はありません。契約書の題名より、中身の一文が効いてきます。「売れ残りの返品は、できるか、できないか」「できるなら、期限と条件は」を、最初に1行書いておくだけで防げる話です。
契約前に口に出して確認する、5つの一言
- 「この契約、うちは代理店ですか、販売店ですか、紹介ですか」
- 「売れ残りは、返せますか。返せるなら、いつまでですか」
- 「他社の商品も、扱っていいですか」
- 「手数料(または差額)は、いつ、どうやって払ってもらえますか」
- 「やめるときは、何日前に、どう伝えればいいですか」
この5つを、メールで1通送って返事をもらうだけでも、後から「言った・言わない」になりにくくなります。口約束ではなく、文字で残すのがコツです。
まとめ:題名より、中身をすり合わせる
代理店契約は、題名よりも「誰が契約し、誰が在庫を持ち、どう報酬が決まるか」が大切です。契約を結ぶ前に、上の4つの質問を、お互いに口に出して確認してみてください。それだけで、あとからのすれ違いがぐっと減ります。
※一般的な解説です。個別のケースは顧問税理士・弁護士などの専門家にご相談ください。