代理店に営業を任せたら、「今週は、ビルを1棟ずつ飛び込みで回っています」と報告が来ました。頼もしい一方で、ふと気になります。代理店の飛び込み営業は、違法にならないのだろうか、と。
先に言うと、飛び込み営業という方法そのものが、すぐ違法になるわけではありません。ただ、個人の自宅へ行く営業には、特定商取引法の決まりがあります。そして、回った先で何を言ったかが、あとで契約の取り消しにつながることもあります。
そこで、この記事では、消費者庁の特定商取引法ガイドで確認できた範囲で、会社相手と個人宅の違い、個人宅での4つの決まり、代理店に任せる前に決める5点を整理します。
野村證券のリテール営業で全国約7,000名中1位を4度。いまは代理店開拓で中小企業の販路をつくる会社「コミッターズ」を経営しています。川口です。
代理店の飛び込み営業は違法?先に結論:相手が会社か個人宅かで、決まりが変わります
まず、消費者庁のガイドから、押さえておく点は次の3つです。
- 訪問販売の決まりは、営業所以外の場所、たとえば消費者の自宅で契約を結ぶ販売にかかります(第2条)。
- また、営業のため、または営業として結ぶ契約は、適用除外です(第26条)。
- さらに、個人宅へ行くときは、名乗る(第3条)、断られたらやめる(第3条の2)、書面を渡す、クーリング・オフに応じる(第9条)の4つが基本です。
つまり、同じ代理店の担当者が、午前は会社へ、午後は個人宅へ行くと、同じ日に決まりの内と外を行き来することになります。
飛び込みでなくても、訪問販売になる場面
ガイドによると、営業所で契約を結んだ場合でも、訪問販売に当たることがあります。たとえば、路上で消費者を呼び止めて営業所へ同行させ、契約を結ばせる場合(キャッチセールス)です。さらに、電話や郵便、SNS等で販売目的を明示せずに消費者を呼び出して、契約を結ばせる場合(アポイントメントセールス)も同じです。
代理店が「無料のご相談会にご招待します」と声をかけて、店舗へ呼ぶ形でも、目的を伝えていなければ、この決まりを考える場面になると、筆者は読みます。
代理店に飛び込み営業を任せたら、事業者は誰になる?
まず、ガイドは、決まりを守る側を「事業者」と書いています。また、「販売業者又は役務提供事業者」は、販売又は役務の提供を「業として営む者」で、営利の意思を持って、反復継続して取引を行うことだと説明されています。
では、代理店に任せたときは、どうなるのでしょうか。たとえば、代理店が自分の名前で契約するなら代理店が、会社の名前で契約するなら会社が、事業者として見られる場面が考えられます。ただし、これは筆者の読みです。なお、筆者が読んだページには、代理店を使う場合の説明がありませんでした。
事業者に返ってくること
また、ガイドによると、決まりに違反した事業者は、業務改善の指示や業務停止命令などの行政処分の対象になり、一部は罰則の対象にもなります。民事では、事実と違うことを告げられて誤認し、契約の申込みをしたときは、その意思表示を取り消せます(第9条の3)。
つまり、代理店の一言が、契約の取り消しや処分につながりえます。どちらが事業者になるかは契約の形で変わるので、個別の判断は弁護士に確認してください。
代理店に飛び込み営業を任せる前に決める5点
そこで、筆者は、法律の決まりを、代理店向けの営業ルールに言い換えて、先に渡しておくのが近道だと考えています。
区分する
名乗る
断られたら
記録する
決める5点は、次のとおりです。
- 1まず、訪問先を「会社」と「個人宅」に分けます。個人宅の先には、次の2から5が全部かかります。
- 2次に、名乗り方を決めます。勧誘の前に、会社の名前、契約を勧誘する目的であること、売ろうとする商品の種類を伝えます(第3条)。
- 3さらに、断られたときの動きを決めます。契約しない意思を示した相手には、その場で勧誘を続けることも、あとで改めて勧誘することも禁止されています(第3条の2)。
- 4また、話してよいことを、資料にあることだけにします。事実と違うことを告げること、故意に事実を告げないこと、威迫して困惑させることは、禁止行為です(第6条)。
- 5最後に、書面と記録の担当を決めます。契約の申込みを受けたとき、または契約を結んだときは、書面を渡します(第4条と第5条)。いつ、どこで、誰が勧誘したかも、記録に残します。
話してよいことを、資料にあることだけにする理由
たとえば、資料に書いていない効果を、代理店が「この機械なら電気代が半分になります」と話して、契約が決まったとします(仮の例です)。それが事実と違えば、事実と違うことを告げる行為に当たりえます。
さらに、守れなかったときの扱いも、先に決めておきます。そのうえで、営業ルールは契約書の別紙にして、報酬や契約の続け方にどう影響するかも書いておきます。守られているかは、訪問の記録や、お客様からの連絡で確かめます。
クーリング・オフの日数
書面を受け取った日から数えて8日以内であれば、消費者は書面または電磁的記録で、申込みの撤回や契約の解除ができます(第9条)。そのため、この日数の数え間違いが起きないよう、書面を渡した日を、代理店と会社の両方で記録しておきます。
代理店の飛び込み営業は、会社相手でも「外」とは限りません
相手が会社や事業者でも、営業のための契約になるとは限りません。消費者庁のQ&Aは、お金を稼ぐ意思があるというだけでは、「営業のために若しくは営業として締結するもの」に直ちに当たるとは解されない、としています。
さらに、取引の種類、利益活動との関連性や目的、必要な設備を準備しているかなどの事情を見て判断する、とあります。そのため、副業を始めたばかりの個人や、家庭用のものを買う相手に飛び込むときは、個人宅と同じ4つの決まりで動くほうが安全だと、筆者は考えます。
個人の代理店に頼むときは、仕事の条件も書面にします
別のサイトの代理店ってなんぼのもん?のコラム「個人で代理店の仕事を受けるとフリーランス法の対象?」では、個人や一人社長が営業や紹介の仕事を受ける場面について、「仕事の内容や報酬の額、支払期日などを、書面またはメールなどの電磁的方法で示さなければなりません」と書かれています。
出典:代理店ってなんぼのもん?「個人で代理店の仕事を受けるとフリーランス法の対象?」
また、営業のやり方を指示する側は、守ってほしい営業ルールも、この条件と一緒に書面にしておくと、あとで言った言わないになりません。なお、業務委託の形でも、働き方の実態で労働者かどうかが決まる話は、こちらの記事に書いています。
「業務委託だから大丈夫」は通用しない?労働者かどうかは、契約書の題名では決まらない
代理店の飛び込み営業、今日からできる最初の一歩
まず、代理店に渡している訪問先のリストに、「会社/個人宅」の列と、「断られた日」の列を足します。また、断られた先に印を付けておけば、うっかり再訪することも防げます。
実は、筆者は、飛び込み営業を大量にした時期があります。そのくらい回ると、断られるのは日常です。だからこそ、断られたあとの動き方を先に決めておくほうが、気持ちも楽になります。
次に、5点をひとまとめの紙にして、代理店と共有します。なお、代理店契約の型と、任せる範囲の決め方は、こちらの記事にあります。
「代理店契約」のはずが、中身は「販売店」だった?契約の3つの型と、決めておくこと
ほかのコラムも、あわせてどうぞ
お金の学び(ウハウハ高等学校):投資やサロンで困ったときの相談窓口4つ|困りごとで選ぶ電話の使い分け
営業・販路のコラム:コミッターズ コラム
筆者の記事:川口忠大のnote
蓄電池を知る(ENERGY BANK):系統用蓄電池の低圧・高圧比較|法人が費用と接続条件で選ぶ方法
導入先を比べる:系統用蓄電池メーカー比較|法人が製品・導入支援・保守を同じ条件で見る方法
お金の面を読む:系統用蓄電池の充電コストを読む|調達契約と託送料金
情報サイトのトップ:ENERGY BANK(系統用蓄電池の情報サイト)
運営元:コミッターズ
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