「お世話になった取引先に、お米とお茶のセットを贈ろう」。気持ちのいい経費です。ただ、ここで多くの人がやってしまう勘違いがひとつあります。
「1人1万円以下なら、交際費にならないんでしょ?」。それは「飲食」の話です。贈答には使えません。今日は、この線引きを、お米とお茶で説明します。
先に結論:飲食は「1万円ルール」、贈答は「交際費」
- 1人あたり1万円以下の飲食費は、一定の記録を残せば交際費から除外できます(令和6年4月1日以後の支出分)。
- お中元・お歳暮・手土産などの贈答は、この除外の対象になりません。第三者への贈答品は、原則として交際費です。
- 交際費は、資本金1億円以下の会社なら年800万円までの枠(または飲食費の50%)で損金にできます。
つまり、お米とお茶を贈ったら交際費として記録する。これが基本線です。小さな会社なら、年800万円の枠を超えることはまずないので、「ちゃんと記録して交際費に入れる」だけでほぼ片づきます。
「記録」は何を書けばいい?
- 1贈った日付を書く
- 2相手の会社名と名前を書く
- 3何を贈ったか(お米5kg+茶葉のセットなど)を書く
- 4金額と、贈った理由(お中元・商談のお礼など)を書く
飲食のときのように「何人で」と書く必要はありませんが、誰に、何を、いくらで、なぜは残しましょう。送り状の控えと、通販サイトの購入履歴を保存しておけば十分です。
消費税は8%?10%?ここもよく聞かれる
お米やお茶は飲食料品なので、消費税の軽減税率8%の対象です。贈答用にきれいに包んでも、そこは変わりません。ただし、お酒は対象外です。
注意したいのは、食品と食品以外を詰め合わせたセットです。たとえばお茶と食器を一緒に箱に入れた場合は、条件によって全体が8%になったり、分けて計算したりします。迷ったら、販売店の請求書の税率の内訳を、そのまま経理に回すのが安全です。
- 取引先へのお中元・お歳暮
- 新規の取引先への手土産
- 商談のお礼の品物
- 社員への食事支給(福利厚生)
- 会議のお茶・弁当(会議費)
- 不特定多数に配る販促グッズ(広告宣伝費)
よくある勘違いトップ3
- 「1万円以下のお米なら交際費にならない」:なりません。贈答は交際費です。
- 「社内の人に配るのも交際費」:社内向けは別の扱い(福利厚生など)です。ただし、給与になる場合もあるので、記録は残しましょう。
- 「領収書がなくても、あとで書けばいい」:記録は贈ったそのときに。1か月たつと、本人も忘れます。
資本金1億円以下の会社は、交際費の損金算入に年800万円の枠があります(または飲食費の50%の選択)。使い切らなくても大丈夫。むしろ、枠を気にせず、ちゃんと記録を残すことのほうが大切です。
ケースで考える:誰に贈るかで、処理が変わる
同じお米とお茶のセットでも、贈る相手によって帳簿の科目が変わります。
- 取引先10社に、1セット5,000円を贈る(合計5万円)→ 交際費です。中小企業なら、年800万円の枠の中で処理できます。
- お客さん全員に、感謝セールで試供品を同封する→ 不特定多数への宣伝なら、広告宣伝費や販売促進費にあたることが多いです。
- 従業員に、お歳暮として物品を贈る→ 少額の物品なら福利厚生費として扱われることが多いですが、現金や商品券は給与になりやすいので注意が必要です。
- 自社の商品を贈る→ 仕入れ値(原価)を、商品から交際費に振り替える形になります。帳簿のつけ方は、顧問税理士に確認しておきましょう。
迷ったら、「相手が特定の取引先ならまず交際費」と考えると、外れにくくなります。
発送の「控え」が、いちばんの証拠になる
記録は、あとから思い出して書くより、送った日に残すほうが確実です。
- 宅配便の送り状の控えを、1年分まとめてファイルする(日付・宛先・品物が分かります)。
- のしの名前や送り先は、スマホで写真を撮っておく。
- 取引先からのお礼状やお礼のメールは、消さずに保存する(贈ったことの裏づけになります)。
- 贈り先リストを表にして、毎年使い回す(相手・住所・金額・前回の品物を並べておきます)。
リストがあると、「去年は誰に何を贈ったか」「今年だけ金額が急に増えていないか」も一目で分かります。
よくある質問
Q. 商品券やギフトカードを贈った場合は?
A. 取引先への贈答なら、交際費として処理するのが基本です。何枚・いくら分を、いつ誰に渡したかを必ず残してください。
Q. 個人のお客さんへのお歳暮は?
A. 事業のための贈答なら、相手が個人でも交際費の考え方になります。ただし、私的なつきあいの贈り物は、経費にできません。
1年分の贈り物を、先にリスト化してしまう
お中元・お歳暮は、毎年ほぼ同じ相手に贈ることが多いので、先にリストにしておくとラクです。
- 相手の会社名・担当者名
- 贈る品物と金額(前年と同じなら、そう書く)
- 贈る理由(いつもお世話になっている、など)
たとえば、取引先10社に3,000円の品物を、お中元とお歳暮で年2回贈ると、10社×3,000円×2回=6万円。20社に5,000円なら、20社×5,000円×2回=20万円です。贈答は交際費ですが、中小企業の交際費には年800万円までの枠(または飲食費の50%)があります。ほかの交際費と合わせても、枠に収まる会社が多いはずなので、金額の心配よりも、記録が残っているかのほうが大切です。飲み会や接待の記録の残し方は、会議費と交際費の線引きの記事でくわしく書いています。
「今年はやめる」ときの、ひと言
取引が終わった、方針を変えた、などで贈るのをやめるときは、いきなり止めるより、手紙やメールで「本年より、贈答を控えさせていただきます」と一言添えると角が立ちません。リストに「終了」とメモしておけば、翌年の発送漏れや二重発送も防げます。配りものの経費の分け方は、ノベルティの記事で整理しています。
まとめ:贈り物は、メモ1行で守れる
お中元・お歳暮は、ルールが簡単なのに間違えやすい経費です。「飲食は1万円ルール、贈答は交際費」。この1行を覚えておけば、焼肉の次に迷わなくなります。
※一般的な解説です。個別のケースは顧問税理士などの専門家にご相談ください。