国民年金の納付書を見ながら、「これだけで老後は足りるのかな」と思ったことはないでしょうか。個人事業主には、会社員のような厚生年金がありません。かといって、まとまったお金を毎月積み立てる余裕も、開業したばかりのころはなかなかありません。
そんなときに知っておきたいのが、付加年金です。国民年金の保険料に月400円を足すだけで、将来の年金が少し増えます。ランチ1回分にも届かない額の、地味な上乗せです。ただし、使えるのは個人事業主など国民年金の第1号被保険者だけです。会社を作って厚生年金に入ると、その時点で付加年金の保険料は納められなくなります。
この記事では、2026年10月時点の国民年金法と公的な案内をもとに、付加年金の仕組み、仮の数字での計算、ほかの制度との関係、法人化したときの扱いを整理します。
野村證券のリテール営業で全国約7,000名中1位を4度。いまは代理店開拓で中小企業の販路をつくる会社「コミッターズ」を経営しています。川口です。
先に結論
- 付加年金は、国民年金の第1号被保険者が申し出ると、毎月の保険料に400円を上乗せして納められる仕組みです(国民年金法87条の2)。
- 将来の付加年金の額は、200円×付加保険料を納めた月数です(国民年金法44条)。
- 国民年金基金に入っている人、保険料の免除や一部免除を受けている人は使えません。
- 納め始めるのは、申し出た月の分からです。過去にさかのぼって申し込むことはできません。
- 法人を作って社長が厚生年金に入ると、第1号被保険者ではなくなるので、付加保険料も納められなくなります。
400円で、いくら増えるのか
計算はとても単純です。仮の数字で見てみます。
たとえば、30代で開業した個人事業主(仮)が、付加保険料を10年間(120か月)納めたとします。
- 納めた付加保険料:400円×120か月=4万8,000円
- 将来の付加年金:200円×120か月=年2万4,000円
同じ人が20年間(240か月)納めた場合はこうなります。
- 納めた付加保険料:400円×240か月=9万6,000円
- 将来の付加年金:200円×240か月=年4万8,000円
どちらの場合も、年金を受け取り始めてから2年で、納めた額と同じくらいになります。板橋区の案内でも、2年以上受け取ると、納めた付加保険料以上の付加年金を受け取れると説明されています。付加年金は、老齢基礎年金を受け取る権利ができたときに、一緒に支給される仕組みです(国民年金法43条)。
額だけ見ると小さな話です。ただ、年4万8,000円は月にすると4,000円です。「なくても困らないけれど、あるとちょっとうれしい」くらいの備えだと考えるとわかりやすいです。
申し込みの手順と、やめるとき
申し込みは、住んでいる市区町村の国民年金の窓口などで受け付けています。板橋区の案内では、本人確認ができるものと、基礎年金番号がわかる書類を持っていくよう書かれています。
- 1自分が国民年金の第1号被保険者で、定額の保険料を納めているか確認する
- 2国民年金基金に入っていないか確認する
- 3市区町村の窓口などで、付加保険料を納める申し出をする
- 4後日届く納付書で、定額の保険料と一緒に納める
やめたくなったときは、いつでも申し出てやめられます(国民年金法87条の2第3項)。また、あとから国民年金基金に入った場合は、その日にやめる申し出をしたものとみなされます。
付加保険料は、定額の保険料を納めた月の分だけ納められます。定額の保険料を払っていない月に、付加保険料だけを払うことはできません。
ただし、ほかの制度と重ねるときは注意
付加年金は単独ではとても素直ですが、ほかの制度と組み合わせるときに注意点があります。
まず、国民年金基金とは一緒に使えません。国民年金基金は、個人事業主が国民年金に上乗せする別の制度です。どちらか一方を選ぶことになります。
次に、iDeCoとは一緒に使えますが、iDeCoの掛金の上限に影響します。2026年10月時点の確定拠出年金法施行令36条では、第1号加入者のiDeCoの上限は月6万8,000円です。付加保険料や国民年金基金の掛金を納めている月は、6万8,000円からその額を引いた額が上限になると書かれています。厚生労働省の案内では、2026年12月から第1号のiDeCoの上限は「国民年金基金と合わせて7万5,000円」に引き上げられます。上限いっぱいまでiDeCoに出したい人は、実際に設定できる額を、口座のある金融機関で確認しておくと安心です。
そして、いちばん見落としやすいのが法人化です。個人事業から会社を作ると、社長1人の会社でも、社長は原則として厚生年金に入ります。厚生年金に入ると国民年金の第2号被保険者になり、第1号ではなくなります。付加保険料を納められるのは第1号の人だけなので、法人化した時点で付加保険料の納付は止まります。社長1人の会社と社会保険の関係は、こちらの記事で整理しています。
社長1人の会社でも、社会保険は入る?「法人」だと答えが決まっています
なお、法人化するまでに納めた付加保険料の月数は消えません。将来、老齢基礎年金を受け取るときに、その月数ぶんの付加年金が加わる形です。
家族の分も気になるところです。個人事業主の配偶者が国民年金の第1号被保険者で、定額の保険料を納めているなら、配偶者も自分で申し出て付加保険料を納められます。一方、配偶者が会社員の扶養に入っている第3号被保険者なら、第1号ではないので対象外です。
今日からできる最初の一歩
最初の一歩は、手元の国民年金の納付書か、ねんきん定期便を見て、付加保険料を納めているかどうかを確かめることです。納めていない場合、申し出た月の分からしか始められないので、検討するなら早めに窓口へ行くほうが月数は積み上がります。
ほかの備えと比べるときは、制度ごとに「いつ・いくら出して・いつ受け取るか」を1行ずつ書き出すと整理しやすくなります。個人事業主や社長が自分の退職金を準備する共済については、こちらの記事にあります。
社長の退職金は自分で作る。小規模企業共済は「全額所得控除」で、受け取るときも優遇される
月400円の話でも、毎月の固定費に入れるかどうかは事業の資金繰りしだいです。営業で新しい取引先を1社増やす計画を立てるときと同じで、まず数字を並べて、無理のない額から決めるのが続けるこつです。どの制度が自分に合うかは、年金事務所や税理士など専門家にも相談してください。
運営元:コミッターズ
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参考(外部サイト):e-Gov法令検索、e-Gov法令検索(2)、自治体、厚生労働省
※一般的な解説です。個別のケースは顧問税理士・社会保険労務士・弁護士などの専門家にご相談ください。