小規模企業共済には、もう入っています。そこへ、iDeCoの話が耳に入ってきました。「どっちか1つにしないといけないのかな」と、年末前の書類を前に手が止まる社長は多いはずです。
じつは、共済とiDeCoの併用はできます。しかも、どちらの掛金も同じ「小規模企業共済等掛金控除」という所得控除に入ります。やっかいなのは、似ているのに別々の決まりが走っているところです。限度額の数え方も、証明書が届く時期も、引き出せる条件も違います。
この記事では、国税庁、厚生労働省、中小機構などのページをもとに、共済とiDeCoの併用で確認する点を整理します。令和8年10月時点の内容です。読み終えたら、手元の書類をいつ、どう出せばいいかがわかります。
野村證券のリテール営業で全国約7,000名中1位を4度。いまは代理店開拓で中小企業の販路をつくる会社「コミッターズ」を経営しています。川口です。
共済とiDeCoの併用、先に結論
- 共済とiDeCoの併用はできます。入口の資格は別々に見ます。
- また、掛金は、どちらも全額が「小規模企業共済等掛金控除」の対象です。
- さらに、限度額は別々です。小規模企業共済は月7万円まで。iDeCoは、自営業者等で月6.8万円から、2026年12月分から7.5万円に上がります。
- なお、控除証明書は別々に届きます。iDeCoは令和8年分が10月23日から、小規模企業共済は11月にお送りされます。
- ただし、税金は「なくなる」のではなく「先送り」の面もあります。受け取るときの扱いと、引き出しの条件が違います。
共済とiDeCoの併用の条件。入口の資格は別々に見ます
まず、入れるかどうかの確認です。小規模企業共済の加入対象は、小規模企業の個人事業主や会社の役員です。中小機構の案内では、従業員数の条件があります。
- 商業(卸売業・小売業)、サービス業(宿泊業・娯楽業を除く):従業員の数が5人以下の個人事業主または会社の役員
- 建設業、製造業、運輸業、不動産業、農業など:従業員の数が20人以下の個人事業主または会社の役員
一方、iDeCoのほうは、国民年金や厚生年金の被保険者であることが基本です。自営業者やフリーランスは国民年金の第1号加入者です。厚生年金保険に入っている会社員や公務員などは、第2号加入者になります。特に、法人の社長で厚生年金保険に入っている人は、この第2号に当たります。
なお、注意したいのは、国民年金保険料の納付を免除されている人です。iDeCo公式サイトには、一部免除の人も含めて加入できないと書かれています。国民年金の保険料を納めているかどうかは、あらかじめ確認しておきましょう。
限度額は別々。ただし、2つの「数え方の癖」があります
小規模企業共済の掛金は、月1,000円から7万円まで、500円単位で決められます。また、途中で変更もできます。中小機構の案内では、月に1回に限り、増やしたり減らしたりできます。
iDeCoの限度額と、12月からの引き上げ
iDeCoの限度額は、働き方の区分で違います。厚生労働省のページでは、次のとおりです。
- 第1号(自営業者等):月6.8万円。国民年金基金の掛金や国民年金の付加保険料を納めている場合は、それらを引いた額
- 第2号(会社員など):勤務先に企業年金がない場合は月2.3万円。企業年金などがある場合は、別の計算になります
2026年12月1日の施行で、この限度額が上がります。厚生労働省によると、自営業者などは月6.8万円から7.5万円に、勤務先に企業年金がない会社員は月2.3万円から6.2万円に引き上げられます。
数え方の癖は2つあります
まず、1つ目の癖です。小規模企業共済の掛金は、iDeCoの限度額から差し引く対象に入っていません。引くのは、国民年金基金の掛金や付加保険料、企業年金などの掛金です。共済の月額を気にしてiDeCoを控えめにする必要は、仕組みの上ではありません。
次に、2つ目の癖は、限度額が上がっても、掛金は自動では上がらないことです。別のサイトのコツコツおかね村のコラム「iDeCoは2026年12月から何が変わる?質問と答え」では、「限度額が上がっても、掛金の額は自動では変わりません。」と書かれています。増やしたいときは、自分で手続きをする必要がある、という整理です。
出典:コツコツおかね村「iDeCoは2026年12月から何が変わる?質問と答え」
共済とiDeCoの併用で、掛金を変えたいときの手続き
国民年金基金連合会の案内では、2026年12月分(2027年1月引き落とし分)から掛金を変えたい人向けに、オンライン手続きは2026年12月1日から12月24日までです。他の手続きとの兼ね合いで間に合わない場合は、2027年1月分以降の反映になります。なお、手続きの方法は、加入している運営管理機関で違うため、そこに問い合わせるのが近道です。
控除証明書は別々に届きます。年末調整と確定申告での出し方
特にここが、いちばん実務に効くところです。2つの証明書は、別の組織から、別の時期に届きます。
- 1iDeCoの「小規模企業共済等掛金払込証明書」:令和8年分は、電子データが10月21日から順次発行されています。ハガキの発送予定は10月23日です。10月以降に始めた人や、金額に変更があった人向けには、ハガキが11月25日と12月22日にも追加で発送される予定です。
- 2小規模企業共済の「掛金控除証明書」:その年の1月から9月までに掛金を納めた人には、11月にお送りします。令和7年は11月12日から21日にかけて発送されました。10月から12月に払い込みが始まった人は、翌年2月です。
つまり10月下旬に届いたiDeCoの証明書だけで安心していると、共済の証明書が11月に届いたときに、年末調整の提出に間に合うか心配になります。両方そろえてから出す、と決めておけば迷いません。
年末調整と確定申告での出し方
出し方は、国税庁の案内によると、次のとおりです。
- 会社から給与を受け取っている社長(年末調整をする場合):「給与所得者の保険料控除申告書」に記入し、証明書を添付するか、提出のときに見せます
- 個人事業主など(確定申告をする場合):確定申告書の「小規模企業共済等掛金控除」の欄に記入し、証明書を添付または提示します
- 令和8年分以後の確定申告書を令和9年1月1日以後に提出するときは、証明書の代わりに、一定の事項を書いた明細書を添付することもできます
控除できる金額は、その年に支払った掛金の全額です。ただし、小規模企業共済の掛金は、ご自身の収入から納めるものなので、事業上の損金や必要経費には入れられません。経費とは別の棚だと覚えておいてください。
小規模企業共済そのものの仕組みは、こちらの記事にまとめています。
社長の退職金は自分で作る。小規模企業共済は「全額所得控除」で、受け取るときも優遇される
例外と注意:引き出しの条件が、2つでまったく違います
共済とiDeCoの併用で、いちばん見落とされるのが引き出しです。
まず、iDeCoは、積立金と運用益を、原則60歳以降に給付金として受け取る仕組みです。途中で引き出せるのは、脱退一時金の要件をすべて満たす場合などに限られます。また、運用商品は自分で選ぶため、元本割れの可能性もあります。
小規模企業共済の任意解約の注意点
小規模企業共済は、自己都合の任意解約ができます。ただし、中小機構の案内によると、次の点に注意が必要です。
- 納付月数12か月未満で任意解約した場合:解約手当金は出ないため、掛け捨てになります
- 納付月数240か月(20年)未満で任意解約した場合:解約手当金が掛金合計額を下回ります
どちらも、掛金の全額が所得控除になる一方で、受け取るときには課税の対象になる場面があります。iDeCoは、年金で受け取れば公的年金等控除、一時金なら退職所得控除の対象です。税金が「なくなる」わけではなく、「受け取るときの扱い」が違う、と考えてください。
そのうえで、いくら入るか、どちらを多くするかは、社長ひとりの資金繰りと、事業の波によって答えが変わります。この記事は、どちらかをすすめるものではありません。具体的な掛金の金額は、顧問税理士や、加入先の窓口に確認してください。
共済とiDeCoの併用、今日からできる最初の一歩は、掛金と証明書の「予定表」をつくること
難しい作業ではありません。次の4つで足ります。
- 1まず、小規模企業共済とiDeCoの、いまの月額を1行ずつメモします。
- 2次に、iDeCoの証明書(ハガキまたは電子データ)が届いているかを確認します。
- 3さらに、小規模企業共済の証明書は11月に届く予定として、カレンダーに書き込みます。
- 4最後に、両方そろったら、年末調整か確定申告の書類と一緒に1つのクリアファイルへ入れます。
共済とiDeCoの併用でも、掛金は、固定費と同じ「毎月出ていくお金」です。売上が落ちた月でも払える額かどうかを、いちど確かめておくと安心です。そのために必要なのは、月ごとの売上と固定費を並べた一覧表です。数字が見えていれば、新しい取引先への提案にも、余裕を持って動けます。
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運営元:コミッターズ
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参考(外部サイト):国税庁、厚生労働省、厚生労働省(2)、厚生労働省(3)、www.ideco-koushiki.jp、www.ideco-koushiki.jp(2)
※一般的な解説です。個別のケースは顧問税理士・社会保険労務士・弁護士などの専門家にご相談ください。
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