年末が近づくと、社長個人の備えの確認も増えます。その中で出やすいのが、NISAの年間投資枠の使い残しです。枠が残っていると、年内に使い切らなければ損をする気がしてきます。
ただし、NISAの年間投資枠は、使い切ることが目的の枠ではありません。まず、年間の枠と、生涯の総枠は別の物差しです。次に、使い残しの扱いも、この2つで違います。
この記事では、NISAの年間投資枠の仕組みだけを整理します。まず、2つの枠の違いを書きます。次に、売却した分の扱いを書きます。特定の商品や金融機関をすすめる内容ではありません。
野村證券のリテール営業で全国約7,000名中1位を4度。いまは代理店開拓で中小企業の販路をつくる会社「コミッターズ」を経営しています。川口です。
NISAの年間投資枠、先に結論
まず、結論から言います。NISAの年間投資枠は、使い残しても翌年へ繰り越せません。年が替われば、その年の枠が新しく始まります。つまり、残った枠を理由に、年末へ買い物を寄せる必要はありません。
また、枠は2つに分かれます。つみたて投資枠は年間120万円で、成長投資枠は年間240万円です。併用すると、合計で年間360万円まで使えます。
さらに、もう1つの物差しが総枠です。非課税で保有できる限度額は1,800万円が上限で、そのうち成長投資枠で使えるのは1,200万円までです。年間の枠と総枠を分けて見ると、年末の確認は迷いが減ります。
なお、通常は、株式や投資信託を売った利益や配当には約20%の税金がかかります。NISA口座で得た利益は、その税金がかからない扱いです。この違いが、制度の出発点です。
NISAの年間投資枠と総枠は、どう違いますか?
まず、年間の枠は、その年に新しく買える上限です。買った金額で数えます。年の途中で売っても、その年の年間の枠は戻りません。
次に、総枠は、非課税で持ち続けられる上限です。こちらも買った金額をもとに数えます。値段が動いても、枠の数え方は買った金額のままです。
別のサイトのコツコツおかね村のコラム「年末のNISA年間投資枠、使い残しはどうなる?5つの質問と答え」では、「年間投資枠は翌年に繰り越せません」と書かれています。
出典:コツコツおかね村「年末のNISA年間投資枠、使い残しはどうなる?5つの質問と答え」
小規模企業共済の仕組みを扱った記事でも紹介しましたが、社長の備えは、制度ごとに枠の数え方が違います。共済の掛金の枠と、NISAの投資の枠は、別の台帳で見るものです。
売却した分の枠の戻り方
まず、売った分の総枠は、翌年以降に戻ります。戻る金額は、売った金額ではなく、買った金額である簿価の分です。そのため、売った年のうちに、その分を買い直す枠は戻りません。
次に、戻った総枠は、年間の枠の範囲内で使います。総枠に空きがあっても、その年に買えるのは年間の上限までです。2つの物差しは、重なって効きます。
つまり、年末の売却は、枠の戻り方から見ても急ぐ理由にはなりません。戻るのは翌年以降で、金額は簿価で数えます。
また、常識の裏側を確かめるメディアの記事では、新NISAは安全という言い方そのものを検証しています。仕組みの確認と、安全かどうかという受け止めは、分けて考える材料になります。
年末に慌てて枠を使わない理由
まず、枠は使うためにあるものではなく、上限を決めるものです。上限まで使うかどうかは、会社の資金と家庭のお金の残り方で決まります。年末という時期だけで決めるものではありません。
次に、使う予定が近いお金との分け方も大切です。会社の支払いや税金の納付に使うお金は、値段が動く置き場所とは分けます。この分け方は、金額の大小より先に決めます。
さらに、損失の扱いも知っておきます。NISA口座で出た損失は、ほかの口座の利益と相殺する扱いにはなりません。利益が非課税である代わりに、損失の扱いも口座の中で閉じます。
そのため、年末の確認は、買うかどうかではなく、枠の残りと総枠の残りを確かめる作業に寄せます。数字を確かめたうえで、動かないことも選び方の一つです。
また、社長の場合、会社のお金と個人のお金は分けて見ます。NISAは個人の口座の仕組みです。会社のお金をそのまま移す話ではありません。役員報酬などの形で個人に移った後のお金が、個人の備えの材料になります。この境目を曖昧にすると、税金の扱いまで曖昧になります。
さらに、家族の口座も、それぞれ別の枠です。世帯で合計を見る見方もありますが、枠の数え方は一人ずつです。年末の確認では、まず自分の口座の数字を確かめます。その後に、世帯の置き場所を並べます。
NISAの年間投資枠、年末に確かめる順番
まず、今年使った年間の枠の合計を確かめます。次に、総枠の残りを確かめます。さらに、来年の会社の資金の見通しと、家庭で使う予定のお金を並べます。
手順は、次のとおりです。
- 1まず、口座の案内で、今年の利用額を確かめます
- 2次に、総枠の残りを、買った金額の合計で確かめます
- 3次に、使う予定のあるお金を、投資の置き場所から分けます
- 4最後に、来年の積立の進め方を、無理のない範囲で決めます
なお、口座は一人につき1つだけ開けます。金融機関の変更は、年単位でできる仕組みです。変更を考える場合も、年末の慌ただしさの中で決める話ではありません。
よくある質問
まず、「使い残しは損ですか」と聞かれます。答えは、損ではありません、です。枠は上限であり、使い切る約束ではありません。
次に、「売れば枠はすぐ戻りますか」と聞かれます。答えは、戻りません、です。総枠の空きが戻るのは翌年以降で、年間の枠は売っても戻りません。
最後に、「年末までに何か買うべきですか」と聞かれます。答えは、この記事では決めません、です。買うかどうかは、置き場所の分け方と本人の判断で決めます。
NISAの年間投資枠、今日からできる一歩
まず、口座の案内を開いて、今年の利用額と総枠の残りを書き出しましょう。具体的には、年間の枠と総枠を、別の行に書きます。次に、使う予定のあるお金に印を付けます。さらに、来年の進め方を、会社の資金繰りと並べて決めます。
なお、税金の扱いの個別の判断は、顧問の税理士や税務署で確かめます。制度の数字は変わることがあるため、金融庁の案内で最新の内容を見ます。
このように、年末の備えの確認は、枠の数え方を分けることから始まります。数え方が分かっている社長は、営業の誘いにも、備えの誘いにも、落ち着いて答えられます。
また、書き出した数字は、記録として残しておきます。年が替わった後に見返すと、去年どこまで使ったかがすぐ分かります。記録があると、来年の年末も、同じ迷いを繰り返しません。備えの確認も、商売の振り返りと同じで、記録が次の判断を速くします。
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参考(外部サイト):金融庁
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会社の現場の工夫や取り組みは、みんなの企業新聞の記事「経営者マッチングアプリの安全な使い方」でも紹介しています。あわせてご覧ください。
