段ボール箱を開けて、納品書と宅配便の伝票を見比べます。商品代金は10万円で、送料は5,000円です。会計ソフトに入力しようとして、手が止まります。「この送料、荷造運賃でいいんだっけ」。
じつは、送料には2種類あります。お客様に送る送料と、仕入れ先から自分のところに届くまでの送料です。税金のルールでは、この2つを別々に扱います。前者は、発送した年の経費です。後者は、商品の値段(原価)の一部になります。
この記事では、仕入れの送料、発送の送料、梱包材の3つを、荷物の行き先で仕分ける方法をお話しします。1個あたりの原価の出し方と、「送料無料」と書く前の計算も、数字で見ていきます。2026年10月時点のルールです。
野村證券のリテール営業で全国約7,000名中1位を4度。いまは代理店開拓で中小企業の販路をつくる会社「コミッターズ」を経営しています。川口です。
先に結論:送料は「どこからどこへ」で分ける
送料は、荷物の行き先で分けると迷いません。
- 仕入れ先から自分のところへ(引取運賃):商品の原価の一部。経費になるのは、売れた分
- 自分からお客様へ(発送の送料):荷造運賃。発送した年の経費
- 段ボール、緩衝材、テープ(梱包材):荷造運賃か消耗品費。毎年同じくらい使うなら、買った年の経費
根拠は、法人税法施行令の第32条と、所得税法施行令の第103条です。商品の取得価額(原価)には、購入代金のほか、引取運賃、荷役費、運送保険料、購入手数料、関税など、購入のためにかかった費用を含める、と書かれています。
荷造運賃のほうは、国税庁が「販売商品の包装材料費、荷造りのための賃金、運賃など」と説明しています。
仕入れの送料は、商品の値段の一部です
たとえば、1個500円の雑貨を200個仕入れる会社があるとします(仮の例です)。商品代金は10万円です。仕入れ先から届くまでの送料が5,000円かかりました。
この5,000円を200個で割ると、1個あたり25円です。つまり、この雑貨の原価は1個525円です。500円ではありません。
売値を980円にすると、粗利は455円です。送料を忘れた計算だと480円に見えます。1個で25円の差でも、200個売れれば5,000円の差になります。
次に、年末の在庫で見てみます。200個のなかで120個が売れて、80個が残ったとしましょう。
- 売れた120個分の原価:525円 × 120個 = 63,000円(この年の経費)
- 残った80個分の原価:525円 × 80個 = 42,000円(来年に回る在庫)
送料5,000円の内訳で見ると、売れ残りの80個にくっついている2,000円は、まだ経費になっていません。売れたときに経費になります。仕入れた分が売れるまで経費にならない、という在庫の基本は、こちらの記事で整理しています。
仕入れた商品は「売れるまで」経費にならない。売れ残り在庫のホントのルール
帳簿では、送料を「仕入高」に足す方法があります。「仕入運賃」のような科目を作って、仕入れの仲間として集計する方法もあります。どちらでも、仕入れの一部として扱うことが大事です。海外から仕入れる雑貨の関税も、同じく原価に含めます。
仕入れ先が「送料込み」で請求している場合は、送料がすでに商品代金に入っています。そのままで大丈夫です。伝票に送料が別の行で出ているときが、仕分けの出番です。
1つの荷物に、種類のちがう商品が入っていることもあります。たとえば、500円の雑貨200個と、300円の雑貨100個が1箱で届き、送料が6,000円だったとします(仮の例です)。個数で割るなら、6,000円 ÷ 300個 = 1個あたり20円です。原価は、それぞれ520円と320円になります。金額の比で割る方法もあります。どちらを選ぶかは、自社で説明しやすいほうに決めて、毎回同じ方法を続けてください。迷うときは、税理士さんに確認しておくと安心です。
発送の送料と梱包材は、販売のためのコスト
お客様へ送る送料は、荷造運賃です。送料無料と書いて売る場合でも、自分が払う送料は荷造運賃になります。青色申告決算書にも、荷造運賃の欄があります。
梱包材には、国税庁の通達に便利な取り扱いがあります。事務用消耗品、作業用消耗品、包装材料、広告宣伝用印刷物、見本品などで、毎年おおむね一定数量を取得して、経常的に消費するものは、買った年の経費にしてよい、というものです(法人は法人税基本通達2-2-15、個人事業主は所得税基本通達37-30の3)。条件は、その処理を「継続して」していることです。
次に、発送1件あたりのコストを出してみましょう(仮の例です)。
- 宅配の送料:800円
- 段ボール、緩衝材、テープ:120円
- 発送1件のコスト:920円
先ほどの雑貨を1,980円、送料無料で売るとします。1,980円 - 原価525円 - 発送コスト920円 = 535円です。1,455円の粗利があると思っていたのに、手元に残るのは535円です。
「送料無料」と書く前にこの計算を1回しておくと、値付けの迷いが減ります。
伝票を前にして迷ったときは、次の順に見てください。
- 1伝票の「どこから、どこへ」を見ます
- 2仕入れ先から自分のところへ届く送料なら、仕入れの一部にします
- 3自分からお客様へ送る送料なら、荷造運賃にします
- 4梱包材は、荷造運賃か消耗品費にして、毎年同じ方法で処理します
- 5迷った伝票には付箋を貼って、月末にまとめて税理士さんに聞きます
5番目の付箋作戦は、地味ですが効きます。伝票に「?」とだけ書いておくと、1か月後の自分は、その意味を思い出せません。
発送コストまで引いた粗利から、ネットで売る場合はさらに手数料や広告費も引かれます。その費用の項目と、売上から仕入れ・手数料・送料・広告費を引いた「手残り」での比べ方は、「モール出店か自社サイトか、雑貨はどちらで売る?」にまとまっています。
出典:ポチっと雑貨店長「モール出店か自社サイトか、雑貨はどちらで売る?」
ここに注意:3%の例外と「毎年同じ方法」
「仕入れに関わる費用は、全部原価に入れるの?」と思うかもしれません。ここには、通達に例外があります。
法人税基本通達の5-1-1は、次の3つの費用の合計が少額(購入代価のおおむね3%以内)なら、原価に入れなくてもよいとしています。
- 買入事務、検収、整理、選別、手入れなどにかかった費用
- 販売所から別の販売所へ商品を移すための運賃、荷造費
- 特別な時期に売るために、長く保管する費用
たとえば、10万円の仕入れなら、おおむね3,000円までです。この判定は、事業年度ごとに、種類・品質・型が同じ商品ごとにしてよい、とも書かれています。ここで気をつけたいのは、仕入れ先から届くまでの送料は、この3つに並んでいないことです。また、これは法人税の通達です。個人事業主の場合の扱いは、税務署か税理士さんに確認してください。
そのほか、次の点にも注意してください。
- 年によって処理を変えないこと。仕入れの送料を、去年は荷造運賃、今年は仕入れの一部、と動かすと、説明しにくくなります
- 売れ残りの在庫に、送料をどこまで細かく割り振るかは、会社の規模と税理士さんの方針で変わります。まずは、仕入れの送料を、お客様への送料と分けておくところが出発点です
- 梱包材を「買った年の経費」にできるのは、毎年おおむね同じ量を使う場合です。個人事業主向けの国税庁「青色申告の決算の手引き」では、まだ使っていない包装材料も棚卸しの対象です。通常の年より特に増えていなければ、棚卸しを省略しても差し支えない、とされています。急に大量に買った年は、年末の残りを数えておくと安心です
- 個人事業主も法人も、原価に送料を含める考え方は同じです(施行令の定めが同じ形です)
今日からできる最初の一歩
いちばん売れている商品を1つ選んでください。そして、送料込みの原価と、発送1件のコストを出します。それが、法人のお客様に「送料込みの卸価格」を出すときの土台になります。
在庫の数字を営業の行動に変える方法は、こちらにあります。
売上は立つのに現金が減る会社へ。在庫を週の営業件数に割る4つの手順と3つの数字
送料の仕分けは、一度決めてしまえば、あとは伝票を見るだけです。まずは直近1か月ぶんの宅配便の伝票を、行き先で2つの山に分けてみてください。
運営元:コミッターズ
令和の総合商社では、有形無形問わずに大手商社が行わないマーケティングで貴社の販路を開拓します。本気で販路を拡大したい方には60分間無料で相談に乗らせていただきます。
参考(外部サイト):e-Gov法令検索、e-Gov法令検索(2)、国税庁、国税庁(2)、国税庁(3)、国税庁(4)
※一般的な解説です。個別のケースは顧問税理士・社会保険労務士・弁護士などの専門家にご相談ください。