年末商戦に向けて、「3,000円以上お買い上げの方に、もれなくマグカップ」のチラシを作りかけているところです(仮の例です)。マグカップは仕入れで1個800円ほど。せっかくなら喜ばれるものを、と選んだ品です。
ところが、お客様全員に配るおまけには、法律で上限があります。景品表示法の「総付景品(そうづけけいひん)」のルールで、3,000円の買い物につけられるおまけは、600円までです。気前のよさが、そのまま違反の入口になることがあります。
この記事では、総付景品の上限の計算、来店者全員に配る粗品、福引きとの違い、上限が外れる例外を、年末の企画に当てはめて整理します。2026年10月時点のルールです。
野村證券のリテール営業で全国約7,000名中1位を4度。いまは代理店開拓で中小企業の販路をつくる会社「コミッターズ」を経営しています。川口です。
先に結論:もれなく配るおまけは「取引額の2割」まで
消費者庁が示している、総付景品の上限は次のとおりです。総付景品とは、くじや抽選によらずに、買った人や来店した人に、もれなく渡す景品のことです。
- 取引の価額が1,000円未満:おまけの最高額は200円
- 取引の価額が1,000円以上:おまけの最高額は取引の価額の10分の2
冒頭のマグカップに当てはめると、3,000円の購入が条件なので、上限は3,000円の2割で600円です(消費者庁の景品に関する質問と回答集、問96と同じ考え方です)。800円の品なら、条件を4,000円以上にすれば、上限は800円になります。
ここで大事なのは、条件にした「いちばん安い買い物」で計算することです。「3,000円以上」なら、3,000円ちょうどで買った人も、同じマグカップを受け取ります。2万円買う人がいても、上限は3,000円をもとに決まります。
なお、景品の値段を仕入れ値と店頭の値段のどちらで数えるかにも、決まりがあります。仕入れ値で計算して安心せず、迷ったら消費者庁や都道府県の相談窓口に確認してください。
年末の企画4つを、上限で判定します
従業員3人の雑貨店が、年末に次の4つを考えているとします(すべて仮の例です)。
- 1「3,000円以上で、もれなくマグカップ(店頭価格800円)」:上限600円を超えるため、このままでは違反になるおそれがあります。条件を4,000円以上にするか、600円以内の品に替えます
- 2「ご来店の方全員に、ハンドタオル(店頭価格250円)」:購入が条件ではない来店者全員への景品は、取引の価額を原則100円として考えます(問111)。上限は200円なので、250円は超えます。店で売っている最も安い商品が100円を超えるなら、その額を取引の価額にできます。この店の最も安い品が300円のポストカードでも、1,000円未満なので上限は200円のままです。社名入りのハンドタオルにして、宣伝用の物品として考える手もありますが、適当な範囲かどうかは品物しだいです
- 3「2,000円ごとに福引き1回、1等は2万円の加湿器」:抽選なので、総付景品ではなく「懸賞」のルールです。取引の価額が5,000円未満なら、景品の最高額は取引の価額の20倍で、2,000円なら4万円まで。景品の総額は、懸賞の対象になる売上予定総額の2%までです
- 4「お買い上げの方に、次回使える500円引き券」:自分の店で使える、金額が決まった割引券は、上限の対象から外れることがあります(問122)
3番の福引きは、総額の線を忘れがちです。たとえば、年末の福引き期間の売上予定が100万円なら、景品の合計は2万円までです。1等の加湿器1台で、総額の枠を使い切ります。商店街などで共同して行う懸賞なら、最高額30万円・総額は売上予定総額の3%の別ルールになります。
例外:上限から外れるもの、外れないもの
消費者庁の質問と回答集(問116〜問128)では、次のようなものは、正常な商慣習に照らして適当な範囲であれば、景品の上限の対象から外れると説明されています。
- 買い物に必要なサービス:駐車料金の負担、ネットショップの配送や、期間を決めた送料無料など
- 見本品:最小単位の商品を、見本だとはっきり示して渡すもの
- 宣伝用の物品:社名入りのカレンダーやメモ帳など、適当な範囲のもの
- 自分の店で使える、金額の決まった割引券
- 開店披露や創業記念で、来店者に配る記念品
ただし、外れそうで外れない例もあります。
- 「30%割引券」:割引額が買う金額で変わるため、上限の対象になります(問123)。最高額は200円で考えます
- 「ドリンク1杯無料券」のような引換券:割引券ではなく、景品として扱われます(問122)
- 改装後の「リニューアルオープン記念」:開店披露と同じに見られるのは、休業が長期にわたった場合などに限られます(問127)
- 「来店者全員」のつもりでも、実際には買わないと受け取れない仕組みなら、購入条件つきとして見られます(問114)
年末の挨拶で配る社名入りカレンダーは、宣伝用の物品として外れる例に近い品です。カレンダーやノベルティを配るときの経費の分け方は、こちらの記事にあります。
ノベルティは経費?「広告宣伝費」と「交際費」の分かれ道は、配る相手です
なお、上限の金額そのものについては、物価の上昇を受けて、消費者庁が引き上げを検討していると2026年8月に報じられています。早ければ2027年中の改定という報道で、2026年10月時点では、まだ決まっていません。今年の年末商戦は、いまの上限で考えます。
チラシを刷る前の確認4つ
違反すると、消費者庁や都道府県から、表示や提供をやめるよう命令を受けることがあります。年末のチラシは、刷ってから直すのが大変です。入稿の前に、次の4つを見ておきます。
- 1もれなく配るのか、抽選なのか(総付景品か、懸賞か)
- 2条件にした最も安い取引の額は、いくらか
- 3おまけの値段は、その額の2割(1,000円未満なら200円)に収まっているか
- 4割引券なら、金額が決まった自店用か、率の割引や引換券ではないか
判断に迷う企画は、景品表示法の窓口がある消費者庁や都道府県に、事前に相談することもできます。
最初の一歩:おまけの値段から、条件の金額を逆算します
上限の式は、営業の道具にもなります。おまけの店頭価格を5倍すると、条件にできる最低の購入額が出ます。600円の品なら3,000円、1,000円の品なら5,000円です。
客単価が2,500円の店なら、「3,000円以上で600円の品」は、あと1品買ってもらう理由になります。たとえば、1か月のレジの記録から、客単価と「あと少しで3,000円」だった会計の数を数えます。2,000円台の会計が多い店ほど、条件の線を3,000円に置く効果が見込めます。逆に、客単価がもともと4,000円の店で「3,000円以上」にすると、ほとんど全員に配ることになり、おまけは売上を増やす道具ではなく、ただの値引きに近くなります。まず、いまの客単価を確認して、その少し上に条件の金額を置いてみてください。おまけは「誰に、何をきっかけに渡すか」で効き方が変わります。配る相手を決める話は、こちらの記事にあります。
ノベルティ数百個より、配る相手を決めた1人。名刺1000枚で学んだこと
運営元:コミッターズ
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参考(外部サイト):消費者庁、消費者庁(2)、消費者庁(3)
※一般的な解説です。個別のケースは顧問税理士・社会保険労務士・弁護士などの専門家にご相談ください。