今年の6月に、35万円のパソコンを買いました。少額の特例を使って、全額を経費にしています(仮の例です)。決算でも確定申告でも、処理は済んだはずです。ところが、年が明けると、今度は市町村への申告が待っています。「税務署に出す話では?」と首をかしげるところですが、出す先は税務署ではありません。
じつは、事業で使うパソコン、レジ、陳列棚には、毎年1月1日の持ち物に対して、市町村から固定資産税がかかります。通称は「償却資産税」です。国の税金で全額経費にしたものも、対象になることがあります。申告をしないままだと、あとから5年度分までさかのぼって課税されることもあります。
この記事では、何が対象で何が対象外か、免税点の150万円、年内にやっておくことを整理します。2026年10月時点のルールです。次の基準日は、2027年1月1日です。
野村證券のリテール営業で全国約7,000名中1位を4度。いまは代理店開拓で中小企業の販路をつくる会社「コミッターズ」を経営しています。川口です。
先に結論:1月1日の事業用の持ち物は、1月末までに市町村へ申告します
地方税法の決まりは、次のとおりです。法人も、個人事業主も、対象です。
- 対象:1月1日現在、事業のために持っている、土地と建物以外の資産で、減価償却をするもの(地方税法341条4号)
- 申告先:資産がある市町村です。東京23区は、都税事務所です
- 期限:毎年1月31日までです(同法383条)
- 税額:課税標準額 × 1.4%です。1.4%は標準税率で、市町村の条例で決まります(同法350条)
- 免税点:課税標準額が150万円に満たなければ、課税されません(同法351条)。ただし、申告は必要です(東京都の手引き)
期限の日が休日にあたるときは、翌日になります(同法20条の5)。令和8年分は、1月31日が土曜日でした。東京都も横浜市も、期限は2月2日(月)でした。2027年は、1月31日が日曜日です。同じ考え方なら、期限は2月1日(月)になる見込みです。日付は、自治体の案内で確認してください。
何が対象で何が対象外か:小さな雑貨店の持ち物で判定します
まず、判定の考え方です。
- 1土地と建物以外で、事業に使える資産で、減価償却をするものが、基本の対象です
- 2少額で除かれるのは、2つだけです。取得価額10万円未満で、一時に損金(個人は必要経費)にしたもの。20万円未満で、3年間で一括して償却するものです(地方税法施行令49条)
- 3それ以外は、金額が小さくても対象です。国の税金で認められている、中小企業者等の少額の特例で全額経費にしたものも、対象に入ります
たとえば、従業員3人の雑貨店の会社が、1月1日に次の持ち物を持っているとします(仮の例です)。
- 8万円のタブレット(買った年に全額を経費にした):対象外です
- 15万円のレジ(3年一括償却を選んだ):対象外です
- 15万円のレジ(ふつうに減価償却している):対象です
- 35万円のパソコン(2026年6月に購入、少額の特例で全額を経費にした):対象です
- 賃借した店舗に、自分の費用で付けた内装:対象になることがあります。横浜市は、賃借人が取り付けた内装を、申告の対象に挙げています
- 買ってから10年たち、帳簿の上では償却が終わった什器:対象です。持っているかぎり、申告に残ります
- 使わなくなって、倉庫に置いたままのパソコン:対象です。遊休の資産も入ります
- 会計ソフトなどのソフトウェア:対象外です。無形固定資産だからです
- 売るための在庫の商品:対象外です。減価償却をしないからです
- 社用の軽自動車:対象外です。軽自動車税の対象だからです
35万円のパソコンが、国の税金で全額経費になる理由は、こちらの記事にあります。令和8年4月1日以後に取得した資産から、この特例の上限が、30万円未満から40万円未満になりました。
35万円のパソコン、買ったら全額経費?令和8年4月から変わった「40万円未満」のルール
名古屋市は、この40万円未満の特例を使ったものも、申告の対象と案内しています。東京都の令和8年度の手引きには、40万円の記載がありません。ただ、条文が除いているのは、先ほどの2つだけです。迷ったら、自治体の窓口に聞いてください。
リース中の機械は、貸主が申告するのが基本です。所有権移転外ファイナンス・リースは、リース会社が申告する、と横浜市が案内しています。契約の種類で変わるので、リース会社に確認しておきましょう。
税額と免税点:150万円は「控除」ではありません
課税標準額は、取得価額そのものではなく、年々減らしていった評価額をもとにします。評価額は、取得価額の5%より下がりません(横浜市の手引き)。たとえば、取得価額100万円の什器は、何年たっても、評価額は5万円までしか下がりません。償却が終わった物を持ち続けても、申告に残るのは、このためです。
税額を、仮の数字で見てみます。
- 課税標準額が140万円:免税点の150万円に満たないので、課税されません。納税通知書も届きません
- 課税標準額が150万円:150万円 × 1.4% = 2万1,000円です
- 課税標準額が200万円:200万円 × 1.4% = 2万8,000円です
150万円は、超えたぶんにだけかかる線ではありません。150万円に届くと、全額にかかります。免税点は、同じ市町村の区域内にある資産の合計で見ます(同法351条)。
年内にやること:4つ
1月1日現在の持ち物で決まるので、年内に整えておくと、あとが楽です。
- 1会計ソフトか決算書から、減価償却をしている資産の一覧を出します。法人なら固定資産台帳、個人事業主なら決算書の「減価償却費の計算」の欄が、出発点です
- 2一覧の資産が、いま本当にあるかを、現物で確認します。壊れて使えない物、使っていない物も、持っているかぎり対象です
- 3手放す物は、年内に、実際に手放します。1月1日に持っていなければ、その年の対象になりません(賦課期日は1月1日です。同法359条)。1月2日以降に手放した場合は、その年の分を、1月1日に持っていた人が納めます
- 4申告書を用意します。東京都は、主税局のホームページからダウンロードできます。書類が必要なら、都税事務所の償却資産班に連絡すると送ってもらえます。電子申告の地方税ポータルシステム(エルタックス)を使うには、電子証明書などを用意して、利用の届出をします
12月に買ったものも、事業に使える状態で1月1日に持っていれば、今回の申告に入ります。1月5日に買ったものは、次の年です。
資産がまったくないときは、「該当資産なし」と申告します(東京都の手引き)。
売ったり捨てたりしたときの税金の扱いは、別の話です。顧問税理士にも確認してください。
ここに注意:書類の上だけの処分は、虚偽の申告です
- 使っているのに、申告から外すために、書類の上だけ「処分した」ことにするのは、いけません。虚偽の申告をすると、1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金になることがあります(同法385条)。本当に手放した物だけが、外れます
- 申告をしなかった場合、正当な理由がなければ、市町村の条例で、10万円以下の過料が定められていることがあります(同法386条)
- 申告もれが調査でわかると、資産を取得した翌年度から5年度分さかのぼって課税されます。偽りその他不正の行為があったときは、7年度分です(東京都の手引き)。さかのぼった分は、納期が1回になります
- 免税点に届かなくても、申告は必要です(東京都の手引き)。「どうせ課税されない」と考えて出さずにいると、あとで、資産の増減がわからなくなります
ここまでの内容は、地方税法などの条文と、東京都・横浜市・名古屋市の案内をもとにしています。自治体ごとに、様式や提出方法、期限の日付は違います。事業所のある市町村の案内を、いちど読んでおいてください。
今日からできる最初の一歩
今年の暮れの備品の棚卸しを、在庫の棚卸しと同じ日にやってください。在庫は償却資産ではありませんが、同じ日に数えると、いちどに済みます。売れるまで経費にならない、という在庫の基本は、こちらの記事に書いています。
仕入れた商品は「売れるまで」経費にならない。売れ残り在庫のホントのルール
数えながら、固定資産の一覧の1行ごとに、「今年、売上を作る役に立ったか」を考えます。毎日使っているレジや陳列ケースは、残します。倉庫で眠っている棚やカートは、手放すかどうかを決めます。催事や卸先の店頭など、新しい売り場を試すときも、手持ちの道具でどこまでできるかを先に数えておくと、買い足す物が絞れます。
備品を数える日は、売上を作る道具を見直す日でもあります。まず、倉庫のいちばん奥にあるパソコンを、1台、見てきてください。
運営元:コミッターズ
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参考(外部サイト):e-Gov法令検索、e-Gov法令検索(2)、自治体、自治体(2)、国税庁、自治体(3)
※一般的な解説です。個別のケースは顧問税理士・社会保険労務士・弁護士などの専門家にご相談ください。