12月の最終営業日。事務所の大掃除で、45リットルの袋が5つできました。古い書類、壊れたプリンターの部品、コーヒーのプラカップ、段ボール。「帰りに、マンションのごみ置き場に出しておくか」。社長がそう考えた瞬間が、この記事の出番です。
意外かもしれませんが、事務所から出たごみは、量が少なくても「事業系ごみ」です。家庭ごみの集積所に、そのまま出すものではありません。しかも、同じ袋の中でも、紙とプラスチックで法律上の扱いが変わります。コーヒーのプラカップは、法律では「産業廃棄物」の仲間です。
この記事では、事業系ごみの基本、区の有料シールで出せる条件、プラスチックや金属の扱い、年末の大掃除の段取りを整理します。2026年10月時点の法令と、東京23区の区のページをもとにしています。
野村證券のリテール営業で全国約7,000名中1位を4度。いまは代理店開拓で中小企業の販路をつくる会社「コミッターズ」を経営しています。川口です。
先に結論:事務所のごみは「会社の責任」で出します
廃棄物処理法の第3条には、事業者は、その事業活動に伴って生じた廃棄物を「自らの責任において適正に処理しなければならない」と書かれています。従業員が1人でも、社長ひとりの会社でも、ここは同じです。
そのため、事務所のごみの出し方は、大きく次の3つになります。
- 区市町村のルールに沿って、有料で区の収集に出す(少量の場合)
- 許可を持つ廃棄物処理業者に頼む
- 自分で処理施設に持ち込む(受け入れるかどうかは施設しだい)
マンションや自宅のごみ置き場に、家庭ごみと同じように無料で出す、という選択肢はありません。新宿区のページにも、事業系のごみ・資源は「すべて有料」と書かれています。
同じ袋でも、紙とプラスチックは扱いが違う
事業活動から出るごみは、法律上、「事業系一般廃棄物」と「産業廃棄物」の2つに分かれます。
産業廃棄物の中身は、廃棄物処理法の第2条第4項と、政令(施行令の第2条)で決まっています。事務所に関係がありそうなものを抜き出すと、次のとおりです。
- 廃プラスチック類:業種に関係なく、産業廃棄物
- 金属くず、ガラスくず、陶磁器くず:業種に関係なく、産業廃棄物
- 紙くず:建設業、紙の製造業、新聞業、出版業、製本業などに限って産業廃棄物
- 木くず:建設業、木製品の製造業などに限って産業廃棄物
つまり、ふつうの事務所なら、書類や段ボールなどの紙くずは事業系一般廃棄物です。一方で、プラカップ、ボールペン、文房具の金具、割れたコップは、事務所から出ても産業廃棄物の仲間に入ります。
ここがいちばん「へえ」となるところです。家庭なら「プラスチック」「燃やすごみ」で終わる物が、会社の机から出ると、産業廃棄物という重めの名前になります。カップ1個で大げさな、と思うかもしれません。ただ、法律の分け方は、量ではなく「何か」と「どこから出たか」で決まっています。
区の有料シールで出せるのは「少量」の会社だけ
東京23区では、少量の事業系ごみなら、区の有料ごみ処理券(シール)を貼って、区の収集に出せる仕組みがあります。条件は区のページに書かれています。
- 目黒区:資源とごみの合計が、1日あたり50キログラム未満の事業者
- 江東区:日量平均50キログラム以下の事業系ごみ
どちらも、家庭ごみの収集に支障がない範囲で、という前提がつきます。シールには店名や会社名を書きます。江東区は「油性ペンで」と書いています。分別やシールの貼り方が違うと、収集されません。
シールの値段は、目黒区と江東区のページで同じです(江東区は令和5年10月1日からの料金)。
- 大(45リットル相当):10枚1セットで3,910円
- 中(20リットル相当):10枚1セットで1,740円
- 小(10リットル相当):10枚1セットで870円
仮の例で考えます。従業員3人の設計事務所が、大掃除で45リットルの燃やすごみを5袋出すとします。45リットル相当のシールは1枚あたり391円なので、5袋で1,955円です(仮の計算)。家庭ごみに出せば0円ですが、そこは会社の経費として払う部分です。
ただし、プラスチックや金属をどこまで区の収集で受け入れるかは、区によってページの書き方が違います。新宿区のページでは、自ら処理できない場合は許可業者に委託する必要がある、と書かれています。産業廃棄物にあたる物を出したいときは、事務所のある区の清掃事務所に先に聞くのが近道です。23区の外では、市町村ごとに仕組みそのものが違います。
例外と注意:パソコン、粗大ごみ、店舗兼住宅
大掃除でつまずきやすい物を、まとめておきます。
- 1パソコン:新宿区のページでは、廃棄する機種のメーカー等に申し込む、と案内しています。詳しくは「パソコン3R推進センター」のサイトで確認するよう書かれています。中のデータは、出す前に消しておきます。
- 2粗大ごみ(机、椅子、棚など):新宿区と江東区のページでは、事業系の粗大ごみは区の収集に出せないと書かれています。業者に頼みます。
- 3エアコン、テレビ、冷蔵庫、洗濯機:新宿区のページでは、購入した販売店などに申し込むよう案内しています。
- 4店舗兼住宅:新宿区のページでは、事業系と家庭系を分けて出すよう書かれています。自宅で仕事をしている個人事業主も、仕事のごみと生活のごみは袋を分けます。
もうひとつ、怖い話も書いておきます。廃棄物処理法の第16条は、何人も、みだりに廃棄物を捨ててはならない、と定めています。これに違反して廃棄物を捨てた者は、第25条で、5年以下の拘禁刑か1,000万円以下の罰金、またはその両方の対象です。マンションのごみ置き場に1袋出すことが、すぐにこの話になるとは限りません。ただ、新宿区のページも、不法投棄は廃棄物処理法違反として処罰される場合がある、と書いています。「ちょっとくらい」で済ませないほうが安心です。
業者に頼むときも、相手が許可を持っているかは確認します。迷ったら、区の清掃事務所や、顧問の税理士・社会保険労務士など、ふだん相談している専門家にも聞いてみてください。
今日からできる最初の一歩:大掃除の前に「ごみの棚卸し」
年末の大掃除は、12月の後半に一気にやる会社が多いはずです。袋が山になってから考えると、収集日も業者の予定も埋まっています。11月のうちに、次の順で手を打っておくと楽になります。
- 1事務所のある区市町村の「事業系ごみ」のページを開き、出せる条件を読む
- 2捨てる予定の物を、紙、プラスチック、金属、パソコン、粗大ごみに分けて書き出す
- 3区の収集で出せる物は、シールを先に買っておく
- 4それ以外は、許可業者か販売店に、年内の日程を聞く
ごみの棚卸しをすると、意外な副産物もあります。使わなかったノベルティ、刷りすぎたチラシ、配らなかった名刺の箱が、たいてい出てきます。それは、営業のやり方を見直す材料です。「誰に配るつもりだったのか」を一言メモしてから捨てると、来年の営業計画が少しだけ具体的になります。
SDGsコーナー全体の歩き方は、こちらの記事にまとめています。
「SDGsコーナー」の歩き方。SDGsで事業がどう変わるかと、事業に合う取り組みの選び方
年末に向けた小さな会社の点検項目は、こちらの記事が参考になります。
10月に見直したい、小さな会社の5つのチェック(2026年版)
運営元:コミッターズ
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参考(外部サイト):e-Gov法令検索、e-Gov法令検索(2)、自治体、自治体(2)、自治体(3)
※一般的な解説です。個別のケースは顧問税理士・社会保険労務士・弁護士などの専門家にご相談ください。