外注先のデザイナーに、社員が強い口調で作り直しを迫っていると聞いたら、社長はどうするでしょうか。社員向けのハラスメント窓口はあっても、外注先のフリーランスが相談できる窓口は、まだ決めていない会社もあるのではないでしょうか。
実は、フリーランスの相談窓口は、一定の発注側にとって、法律上の義務です。フリーランス・事業者間取引適正化等法の第14条が、発注側に体制の整備を求めています。
この記事では、厚生労働省の資料で確認できた範囲で、フリーランスの相談窓口の要点を整理します。つまり、誰が対象で、何を決めればよいかです。
野村證券のリテール営業で全国約7,000名中1位を4度。いまは代理店開拓で中小企業の販路をつくる会社「コミッターズ」を経営しています。川口です。
フリーランスの相談窓口、先に結論
- 従業員を使う発注側は、外注先のフリーランスが相談できる体制を整える義務があります(第14条)
- まず、対象のハラスメントは、セクハラ、妊娠・出産等に関するもの、パワハラの3類型です
- 次に、決めるのは4つの措置です。方針の明確化、相談窓口の整備、事後の対応、プライバシー保護と不利益取扱いの禁止です
- さらに、従業員向けの窓口を、フリーランスにも使えるようにする方法もあります
- つまり、新しい部署は要らず、決めて知らせることが中心です
なお、この記事は、厚生労働省のパンフレットと、e-Govの条文をもとにしています。パンフレットには、指針が令和8年2月26日に改正されたと書かれています。個別の取引が対象になるかは、都道府県労働局にご確認ください。
フリーランスの相談窓口が要る発注側は?
まず、条文では、義務を負うのは「特定業務委託事業者」です。守られるのは、従業員を使わない個人と、代表者のほかに役員がいなくて従業員も使わない法人の代表者です。
別のサイトのおまかせ係長のコラム「フリーランスへの外注、発注側がやることを5つの手順で整理」では、「ハラスメント対策の体制整備(第14条)も、特定業務委託事業者の義務です」と書かれています。
出典:おまかせ係長「フリーランスへの外注、発注側がやることを5つの手順で整理」
つまり、従業員が数名いる会社なら、外注先にフリーランスがいる時点で、この義務を確認する対象になります。一方、社長ひとりだけの会社は、この義務の対象にはなりません。
フリーランスの相談窓口が守る、3つのハラスメント
対象は、業務委託に関する次の3類型です。なお、パンフレットは、どれも就業環境を害することなどが要件だと説明しています。
- セクシュアルハラスメント:性的な言動で、仕事の条件に不利益を与えたり、就業環境を害したりすること
- 妊娠・出産等に関するハラスメント:妊娠や出産に関する言動で、就業環境を害すること
- パワーハラスメント:取引上の優越的な関係を背景に、必要かつ相当な範囲を超えた言動で、就業環境を害すること
「業務委託に関して」は、どこまで含まれる?
業務を行う場所や場面で起きたものが対象です。たとえば、取引先の事務所、打ち上げ、電話やメールも、パンフレットの例に挙がっています。
また、懇親の場や移動中でも、実質上、業務の延長と考えられるものは含まれます。ただし、判断は、業務との関連性や参加者などから、個別に行います。
フリーランスの相談窓口は、4つの措置で決める
方針を決める
窓口を決める
事後に対応
併せて守る
パンフレットでは、10の項目が4つのまとまりで示されています。そのため、ここでは、まとまりごとに見ていきます。
措置1:方針を決めて、社内に知らせる
まず、業務委託でハラスメントをしてはならない、という方針を、はっきり決めます。そして、契約の担当者、仕事を頼む担当者、成果物を検収する人も含めて、社員に知らせます。
さらに、行為者には厳正に対処する、という方針も、就業規則などの文書に書きます。取組例には、社内報での周知や研修が挙がっています。
措置2:フリーランスの相談窓口を決めて、相手に知らせる
窓口は、あらかじめ定めて、フリーランスに周知します。そのうえで、方法は、外部の機関に委託する、担当者を決める、相談の制度を設ける、のいずれかです。
特に、周知の例は、契約の書面やメールに、連絡先を書くことです。一方、フリーランスが通常見ない場所への掲載は、周知とはいえないとされています。
また、窓口は形だけでは足りません。ハラスメントが起きているときだけでなく、起きそうなときや、判断が微妙なときも、広く相談を受けます。
措置3:相談のあとに、迅速に対応する
まず、相談した人と、行為者とされる人の双方から、事実を確認します。主張が食い違うときは、第三者からも聞きます。
次に、事実が確認できたら、被害者への配慮と、行為者への措置を行います。さらに、確認できなかった場合も、方針を知らせ直すなどの再発防止をします。
措置4:秘密を守り、不利益な扱いをしない
まず、相談した人や行為者のプライバシーを守る措置を決めて、知らせます。また、相談したことを理由に、契約の解除などの不利益な取扱いをしてはならない、と決めて知らせます。
この点は、条文にも書かれています。つまり、第14条は、フリーランスが相談したことを理由に、契約を解除するなどの不利益な取扱いを禁じています。
体制がないと、どうなる?
e-Govの条文によると、厚生労働大臣は、第14条に違反していると認めるとき、必要な措置をとるよう勧告できます。さらに、正当な理由なく勧告に従わないときは、その旨を公表できます。
また、フリーランスは、法律に違反する事実があるとき、厚生労働大臣に申し出て、適当な措置を求められます。つまり、窓口がないことが、外部の窓口への相談につながる場合もあります。
フリーランスの相談窓口でよくある質問
まず、社員向けのハラスメント窓口があれば、足りますかと聞かれます。パンフレットでは、労働法に基づく職場の窓口を、業務委託のハラスメントにも使えるようにする方法も、窓口の設置に含まれるとされています。ただし、フリーランスに知らせていなければ、周知したとはいえません。
次に、契約を結ぶ前の相手は、対象ですかとも聞かれます。契約の前の人は、義務の対象ではありません。ただし、パンフレットは、契約交渉中の人にも同じ方針を示し、相談があれば対応するよう努めることを、望ましい取組としています。例として、オーディションを受けている人が挙がっています。
さらに、社長ひとりの会社でも、窓口は要りますかという質問もあります。従業員も役員もいない場合は、条文の「特定業務委託事業者」に当たりません。個別の判断は、都道府県労働局にご確認ください。
フリーランスの相談窓口、最初の一歩
まず、発注の書面やメールの定型文に、一行を足します。「業務委託に関するハラスメントの相談は、こちらです」と書いて、担当者の連絡先を添えます。
次に、窓口の担当者を、社内で決めます。社員向けの窓口の担当者が兼ねても構いません。ただし、フリーランスに連絡先が届いているかを確かめます。
そして、仕事の条件を文字にして伝える決まりは、こちらの記事に整理しています。
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もちろん、外注先が安心して相談できる会社は、仕事を頼まれやすい会社でもあります。営業や販路の仕事も、頼る相手が増えてはじめて動きます。
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運営元:コミッターズ
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