年が明けると、顧問税理士さんから一通のメールが届きます。「外注先の支払調書を作るので、去年払った相手の一覧と、住所と番号をください」。そこで初めて、社長は1年分の振込履歴をさかのぼる旅に出ます。デザイナーさんの住所が、どこにも書いていないことに気づくのは、だいたい旅の途中です。
支払調書の対象は、外注先の全員ではありません。デザイン料や原稿料、税理士への報酬などを、同じ相手に1年で5万円を超えて払ったときに出す書類です。そして、意外と見落とされるのが、相手が会社(法人)でも対象になる場合があることです。源泉徴収をしていない支払いでも、提出が要るケースがあります。
この記事では、2026年中に払った分(2026年分)の支払調書について、出す相手の線引きと、提出期限、12月のうちにそろえておく3つの情報を、仮の外注先4人で整理します。2026年10月時点の国税庁の資料にもとづいています。
野村證券のリテール営業で全国約7,000名中1位を4度。いまは代理店開拓で中小企業の販路をつくる会社「コミッターズ」を経営しています。川口です。
先に結論
- 正式な名前は「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」です。デザイン料、原稿料、講演料、弁護士や税理士への報酬などが対象です
- 出す範囲は、同じ相手への1年間の支払いの合計が5万円を超えるものです(外交員の報酬など、50万円超が基準のものもあります)
- 相手が法人で源泉徴収をしていない支払いでも、範囲に当てはまれば提出が必要です
- 2026年分の提出期限は、2027年2月1日(月)です。本来は1月31日ですが、この日が日曜日のためです
- 2025年中に提出した枚数が、種類ごとに30枚以上なら、紙ではなくe-Taxなどで出す必要があります
いちばん効くのは最後の段取りです。1月に慌てないよう、相手の正式な名前と住所、番号、年間の支払額を、12月のうちに表にしておきます。
対象になる報酬と、ならない外注
支払調書の対象になる報酬は、所得税法204条1項の各号に並んでいるものです。1号には「原稿、さし絵、作曲、レコード吹込み又はデザインの報酬」や講演料が、2号には弁護士・税理士・社会保険労務士などへの報酬が書かれています。源泉徴収が必要な報酬と、ほぼ同じ顔ぶれです。
逆に言うと、この条文に当てはまらない外注は、この支払調書の対象になりません。たとえば、データ入力や梱包作業を個人に頼んだ代金のように、各号のどれにも当たらない支払いです。どの号に当たるか迷うものは、所轄の税務署か顧問税理士に聞くのが早道です。
デザイン料に源泉徴収が要るかどうかは、こちらの記事にまとめています。
デザイナーに5万円払うとき、源泉徴収は必要?「個人は必要、法人は不要」が基本です
金額の判定は、消費税を含めた額で行うのが原則です。ただし、請求書などで消費税の額がはっきり分かれていれば、税抜きの額で判定してかまいません。5万円ぎりぎりの相手は、ここで結果が変わることがあります。
仮の外注先4人で判定してみる
数字はすべて仮のものです。従業員3人の会社が、2026年中に次の4人(社)に外注したとします。
- 1個人のデザイナー:チラシのデザイン料が年48,000円(税抜き、消費税は区分して記載)
- 2個人のライター:ブログ記事の原稿料が年120,000円
- 3デザイン会社(法人):会社案内のデザイン料が年330,000円。法人あてなので源泉徴収はしていない
- 4個人の事務代行:データ入力の代金が年240,000円
判定はこうなります。
- 1人目:対象外です。デザインの報酬ですが、年5万円を超えていません
- 2人目:対象です。原稿料で、年5万円を超えています
- 3人目:対象です。源泉徴収をしていなくても、デザインの報酬で年5万円を超えているので提出が要ります
- 4人目:対象外です。金額は大きくても、204条1項の報酬に当たらないためです
うっかりしやすいのは3人目です。「法人には源泉徴収をしないから、書類も要らない」と思い込むと、抜けます。国税庁の手引には、法人に払う報酬で源泉徴収の対象にならないものや、源泉徴収をしていない報酬でも、提出範囲に当たれば提出しなければならない、と書かれています。
1人目にも、年末ならではの落とし穴があります。12月に年賀状のデザインを1本追加で頼み、その報酬が10,000円だったとします。年間の合計は58,000円になり、5万円を超えます。10月の時点で「この人は対象外」と決めつけて一覧から外していると、ここで抜けます。判定は12月31日までの合計で行うので、一覧は年内の最後の支払いまで更新しておきます。
もう一つ、相手が「個人事業の屋号」で請求書を出してくる場合です。支払調書には屋号ではなく、個人の氏名を書きます。請求書の宛名や振込先の名義が屋号のままになっている相手は、早めに本名を確認しておくと、年明けに慌てずにすみます。
12月のうちにそろえる3つ
支払調書は、年が明けてから作るものですが、材料集めは年内に終わらせておくと楽です。そろえるのは次の3つです。
- 相手の正式な名前と住所:契約書などで確認します。手引では、屋号だけを書くことがないように、とされています
- 相手のマイナンバー(個人)または法人番号(法人):個人のマイナンバーは、本人確認をしたうえで集める必要があり、日数がかかります
- 1年間の支払額と、源泉徴収した税額:振込の日ではなく、支払いが確定した日の年で数えます。12月分の請求を1月に払う相手は、どちらの年に入るか税理士と確認しておきます
もう一つ、相手に渡すときの注意です。法律(所得税法225条)が求めているのは、税務署への提出です。写しを外注先に渡す会社もありますが、そのときは、マイナンバーを書いた写しは渡せません。
税務署に出すときは、支払調書だけでなく、「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表」と一緒に出します。郵送する場合は、税務署ではなく、その税務署を受け持つ業務センターあてに送ることになっています。送り先は国税庁の案内で確かめます。
ただし、e-Taxが義務になる会社があります
2027年1月以降に提出する法定調書から、e-Taxなど(認定クラウド等、光ディスク等を含む)で出さなければならない基準が変わりました。前々年に提出すべきだった枚数が「100枚以上」から「30枚以上」に引き下げられています。
2026年分(2027年に提出)なら、2025年中に提出した枚数で判定します。判定は法定調書の種類ごとです。報酬の支払調書が30枚以上だった会社は、紙では出せません。
従業員0〜10人くらいの会社で、報酬の支払調書が30枚を超えることは多くないはずです。ただ、ライターやデザイナーを多く抱えるメディア運営の会社などは、一度、去年の枚数を数えておくと安心です。
今日からできる最初の一歩
今日やることは一つです。会計ソフトか通帳から、2026年1月から今日までの外注先を書き出して、「何の報酬か」「年間でいくらか」「正式な名前と住所、番号はあるか」の3列を埋めてみてください。
この表は、支払調書の材料になるだけではありません。誰に、何に、いくら払ったかが一目でわかるので、来年の外注費の見直しにも使えます。売上につながった外注と、そうでもなかった外注を並べると、来年の営業の予算をどこに寄せるか、話が早くなります。
個人に仕事を頼むときの条件の書き方は、こちらの記事にあります。
個人に仕事を頼むとき、「条件」をメールで書いていますか?フリーランス法の最初の一歩
支払調書の要否は、報酬の中身で変わります。個別の判断は、顧問税理士や所轄の税務署に確認してください。
運営元:コミッターズ
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参考(外部サイト):国税庁、国税庁(2)、国税庁(3)、国税庁(4)、e-Gov法令検索
※一般的な解説です。個別のケースは顧問税理士・社会保険労務士・弁護士などの専門家にご相談ください。