6万円の施術コースを、お客様がクレジットカードで支払いました。「領収書をください」と言われて、スタッフが引き出しから収入印紙を出し、200円分を貼って消印を押します。5万円を超えたら印紙、と教わったからです。まじめな対応です。ただ、この200円は、貼らなくてよかった可能性が高いお金です。
収入印紙がかかる領収書は、「お金を受け取りました」と証明する紙です。クレジットカード払いは、その場でお店がお金を受け取っているわけではありません。カード会社があとで立て替えて払う「信用取引」です。だから原則として印紙は要りません。ところが、領収書に「カードで払った」と書いていないと、話がひっくり返ります。紙の上では現金の領収書と見分けがつかないので、印紙が必要な文書として扱われます。
この記事では、高額のサービスを売る小さな会社が、キャッシュレス決済や電子の領収書を入れるときに、印紙で損をしないための線引きを整理します。国税庁のタックスアンサー(令和8年4月1日現在の法令等)と質疑応答事例にもとづく、2026年10月時点の内容です。
野村證券のリテール営業で全国約7,000名中1位を4度。いまは代理店開拓で中小企業の販路をつくる会社「コミッターズ」を経営しています。川口です。
先に結論
- 領収書は、印紙税の「第17号の1文書(売上代金に係る金銭の受取書)」です
- 記載された金額が5万円未満なら、印紙は要りません
- クレジットカード払いの領収書は、金銭を受け取っていないので、原則として印紙は要りません
- ただし、領収書にクレジットカード利用である旨を書いていないと、印紙が必要な文書になります
- 即時に口座から引き落とすデビットカードは、クレジットカードと同じ扱いにはなりません
- 紙を作らず、電子データで送る領収書には、印紙税はかかりません
つまり、カード払いのお客様に出す領収書には、「クレジットカード利用」と一言入れておくのが、いちばん手軽な対策です。
印紙が必要な領収書の基本
まず、現金や振込で受け取ったときのルールを押さえます。売上代金の受取書の印紙税は、次のとおりです。
- 5万円未満:非課税
- 5万円以上100万円以下:200円
- 100万円を超え200万円以下:400円
- 200万円を超え300万円以下:600円
- 300万円を超え500万円以下:1,000円
- 500万円を超え1,000万円以下:2,000円
ここで効いてくるのが、消費税の書き方です。領収書に消費税額等をはっきり分けて書いていれば、その消費税額等は印紙税の記載金額に入れません。国税庁の例では、「商品販売代金48,000円、消費税額等4,800円、合計52,800円」の領収書は、記載金額が48,000円なので非課税です。
仮の例で比べてみます。
- 1「金52,800円(税込)」とだけ書いた領収書は、記載金額52,800円で、印紙200円です
- 2「金52,800円(うち消費税額等4,800円)」と書いた領収書は、記載金額48,000円で、印紙は要りません
受け取った額は同じでも、書き方一つで200円の差になります。ただし、免税事業者は例外です。消費税額等を分けて書いても、その金額は記載金額から外せません。
もう一つ、印紙税は「営業に関する」受取書にかかる税です。会社や個人事業主が商売で出す領収書は、基本的に対象になると考えておきます。
クレジットカード払いなら原則不要、ただし一言が要る
国税庁の質疑応答事例では、クレジットカードで支払いを受けた場合について、次のように説明しています。クレジットカードによる信用取引では金銭の受領がないので、「領収書」という題名であっても、原則として第17号の1文書には当たりません。ただし、クレジットカードの利用である旨を領収書に記載しないと、第17号の1文書に当たります。
ポイントは、題名ではなく中身で判断される点です。「領収書」と書いてあっても、カード払いだとわかる記載があれば、印紙は要りません。逆に、カード払いだったのに何も書いていなければ、現金で受け取った領収書と同じ扱いになります。
書き方の例は、たとえば次のとおりです。
- 但し書きの近くに「クレジットカード利用」と書く
- 支払方法の欄を作り、「クレジットカード」に印を付ける
- 決済端末やレジのレシートに、カード決済である旨が印字されているか確かめる
仮の例で、効き目を数えてみます。従業員3人のリフォーム業の会社で、5万円以上100万円以下のカード払いの領収書を、月に15枚出しているとします。カード利用の記載がなく、毎回200円の印紙を貼っていたなら、月3,000円、年36,000円です。記載を入れるだけで、この印紙代が要らなくなる計算になります(数字はすべて仮のものです)。
ただし、デビットやコード決済は扱いが違います
「キャッシュレスなら全部同じ」ではありません。ここが、いちばん間違えやすいところです。
- 1即時決済型のデビットカード:国税庁の質疑応答事例では、支払いと同時に口座から引き落とされるデビットカードについて、代金の受領を証明するレシートや領収書は第17号の1文書に当たるとしています。5万円以上なら、印紙の対象です。クレジットカードと似ていても、即時決済が前提なので性格が違う、という説明です
- 2コード決済:国税庁のサイトに掲載されている経済産業省キャッシュレス推進室の整理(令和2年7月)では、利用代金をあとからまとめて支払う方式は、金銭の受領事実がないことを明記すればクレジットカードと同様とされています。一方、前払い方式や即時払い方式は、決済事業者との契約の仕組みや規約の定めによって、課税されるかどうかが分かれます。導入したサービスの規約で、いつ代金を受け取ったことになるのかを確認しておきます
- 3銀行振込:振込を確認してから出す領収書は、お金を受け取った証明なので、通常どおり5万円以上で印紙が要ります
印紙を貼り忘れたときの負担も知っておきます。貼らなかった場合の過怠税は、納めるはずだった印紙税の3倍です。税務調査の前に自分から申し出れば1.1倍に軽くなります。貼っても消印をしなかったときは、その印紙の額面と同じ額がかかります。しかも、過怠税は法人税の損金にも、所得税の必要経費にもなりません。
電子の領収書なら、そもそも紙がありません
もう一つの手は、領収書を紙で渡さず、PDFなどの電子データで送ることです。国税庁の質疑応答事例は、印紙税の課税対象は課税物件表に掲げる「文書」であり、電磁的記録で送ったものは課税されない、という考え方を示しています(注文請書をメールで送った事例)。
ただし、送ったPDFを印刷して手渡せば、それは紙の文書です。また、電子で送った領収書や受け取った請求書は、電子取引のデータとして、電子のまま保存する必要があります。保存の注意点は、こちらの記事にまとめています。
メールで届いたPDFの請求書、「印刷して紙で保管」はじつはNGです
キャッシュレス決済や電子の領収書を入れるときは、次の4つを確かめておくと安心です。
- 手書きの領収書の様式に、支払方法の欄があるか
- 決済端末のレシートに、決済の種類が印字されるか
- コード決済の加盟店規約で、代金の受領の時点がどう決まっているか
- 電子で送った領収書を、電子のまま保存できているか
今日からできる最初の一歩
今日やることは、手元の領収書の控えを3枚だけ見直すことです。
- 15万円以上の控えを選ぶ
- 2支払方法がカードなら、「クレジットカード利用」と書いてあるかを見る
- 3現金や振込なら、消費税額等を分けて書いているかを見る
もし様式に欄がなければ、次に印刷するときに支払方法の欄と、消費税額等の欄を足します。小さな紙の話ですが、高額のサービスほど効いてきます。営業の現場では、見積りの段階で「カードでのお支払いもできます」と伝えておくと、お客様が支払方法を決めやすくなり、領収書の書き方も最初からそろいます。
請求書を送ったあと、入金まで含めて整える話は、こちらの記事にあります。
決済サービスの仕組みによって結論が変わることがあります。迷うときは、所轄の税務署や顧問税理士に確認してください。
運営元:コミッターズ
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参考(外部サイト):国税庁、国税庁(2)、国税庁(3)、国税庁(4)、国税庁(5)、国税庁(6)
※一般的な解説です。個別のケースは顧問税理士・社会保険労務士・弁護士などの専門家にご相談ください。