建設工事の請負で、工事は年内に終わったのに、元請の検収が年明けにずれました。請負の収益計上時期は、この検収のずれで動くのでしょうか。年末の工事台帳を見ながら、迷う場面です。
実は、収益を入れる年は、入金の年でも、請求書を出した年でもありません。そして、決め手は、引渡し等の日です。つまり、検収の日が引渡しの日になるかどうかが分かれ目です。
この記事では、請負の収益計上時期の決め方を整理します。引渡しの日の候補、同じ決め方を続ける決まり、大きな工事の例外、年末の点検までをまとめます。
野村證券のリテール営業で全国約7,000名中1位を4度。いまは代理店開拓で中小企業の販路をつくる会社「コミッターズ」を経営しています。川口です。
請負の収益計上時期、先に結論
先に結論です。請負の収益は、原則として、引渡し等の日の属する事業年度に入れます。法人税法第22条の2が、その原則を示しています。
- 収益を入れる年は、引渡し等の日で決まります
- 引渡しの日は、契約の内容などから合理的な日を決めます
- 決めた日は、継続して使います
- 大きな工事には、進み具合で分ける例外があります
工事が終わる
引渡しの日を決める
年を決める
つまり、検収が年をまたいでも、入れる年が自動で決まるわけではありません。自社がどの日を引渡しの日にしているかで、答えが変わります。
引渡しの日の候補
まず、引渡しの日の考え方です。国税庁の法人税基本通達では、引渡しの日の判定で、いくつかの日が候補に挙がっています。候補の中から、種類や性質、契約の内容に照らして合理的な日を選びます。
候補になる日は、次のとおりです。
- 作業を終えた日
- 相手方が検収を終えた日
- 相手方が使用できる状態になった日
- 目的物を引き渡した日
契約で、検収が終わることが引渡しの条件になっている工事では、検収を終えた日が軸になります。一方で、検収の定めがない工事では、引き渡した日や使用できる状態になった日が軸になります。
そのため、最初に見るのは契約書です。検査と引渡しの定めがどう書かれているかで、軸になる日が変わります。
契約書で確かめる点は、検査の言葉があるか、引渡しの時期と方法が書かれているかです。検査の言葉がある契約は、検収を終えた日が軸になりやすいです。逆に、検査の定めがない契約は、引き渡した事実の日が軸になります。
また、元請との口頭の約束だけが現場に残っている工事もあります。その場合は、約束の内容を工事台帳に書いて残します。書いていないと、年末の判定で、どの日を軸にしたか思い出せません。
検収を終えた日を軸にする場合
検収を軸にする工事では、検収の日の残し方が大事です。具体的には、検収の連絡や検収書の日付を、経理へ渡す流れを決めます。
また、検収書の作成が遅れる場合もあります。その場合は、実際に検収が終わった日と、書類を作った日を分けて残します。つまり、分けて残すことが、年をまたぐ判定の説明をしやすくします。
別のサイトのはじめて商店街のコラム「店舗の内装工事、手順と契約前に確かめる点」では、内装工事の進め方で「完成したら契約どおりか検査し、引き渡しの時期と方法に沿って受け取ります」と書かれています。
出典:はじめて商店街「店舗の内装工事、手順と契約前に確かめる点」
税の判定でも出発点は同じです。検査と引渡しの日が、記録に残っていることが要ります。
決めた基準は継続して使う
次に、継続の決まりです。引渡しの日は、法人が継続して収益計上を行うこととしている日で判定します。通達でも、その考え方が示されています。
つまり、年ごとに都合のよい日へ変えることはしません。今年は検収の日、来年は作業を終えた日、という変え方は、判定の土台を崩します。
なお、決め方を変える必要が出た場合は、理由を記録に残します。そのうえで、顧問税理士に相談する形にします。さらに、変えた年は、前の年との違いも説明できる形にします。
また、工事の一部ずつを引き渡す定めの工事もあります。その場合は、引き渡した部分ごとに収益を入れる場面があります。契約の定めを確かめてから、工事台帳に書き分けます。
さらに、決めた基準は、社内で共有します。現場の担当と経理の担当が、同じ日を引渡しの日として見ていることが要ります。基準が社長だけの頭の中にあると、引き継ぎのたびに判定がぶれます。
基準は、工事台帳の先頭に書きます。どの工事も、同じ基準で日を見る形です。新しい工事が始まるたびに、基準を当てはめる場所が決まっている状態にします。
請負の収益計上時期、大きな工事の例外
次に、例外です。法人税法第63条には、長期大規模工事の定めがあります。工期が1年以上で、請負の対価の額が10億円以上の工事が対象です。
対象になる工事は、工事の進み具合に応じて、収益と費用を各事業年度に分けて入れます。完成を待って一度に入れる形とは、別の扱いです。
小さな会社のふつうの工事は、この規模に当たらないことが多いです。ただし、規模の大きな元請の工事を受ける場合は、対象かどうかを先に確かめます。言い換えると、確かめる先は、契約の期間と対価の額です。
請負の収益計上時期、年末の点検
最後に、年末の点検です。点検は、工事台帳から始めます。
- 1年内に作業が終わった工事を並べます
- 2工事ごとに、検収の日と引渡しの日を書きます
- 3自社が決めた基準と合っているかを見ます
- 4基準からずれる工事は、顧問税理士への相談に残します
たとえば、作業が年内に終わり、検収が年明けになった工事を考えます。自社の基準が検収を終えた日なら、入れる年は翌期の側です。一方で、自社の基準が引き渡した日なら、当期の側になる場合があります。
この違いは、基準を先に決めている会社だけが説明できます。そのため、請負の収益計上時期の点検は、決算の計算の前に、基準の確認として置きます。個別の工事の判定で迷う場合は、顧問税理士に相談する形にします。
なお、点検の結果は、現場と経理で共有します。現場は、来年の工事で検収の記録をどう残すかが分かります。経理は、年をまたぐ工事を先に知ることができます。つまり、共有までが、年末の点検の終わりです。
また、点検で分かったずれる工事は、決算の直前まで残しません。相談に残した分は、早い時期に顧問税理士へ渡します。渡す資料は、契約書と工事台帳と検収の記録です。この順番で渡すと、判定の相談が短く済みます。
さらに、この点検は来年の工事にも効きます。来年の年末は、今年書いた工事台帳の並びから始められます。検収の日と引渡しの日が最初から書かれている台帳は、点検の時間を短くします。今年の点検で直した書き方が、来年の段取りの土台になります。
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参考(外部サイト):e-Gov法令検索、e-Gov法令検索(2)、国税庁
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