年末調整の書類を配る季節になりました。去年のフォルダから申告書のファイルを開くと、様式の名前が長くなっています。「例年どおり、配って、集めて、12月に計算するだけ」。ただ、そのつもりでいると、今年は少し違います。
意外なのは、タイミングです。令和8年度の税制改正で、基礎控除と給与所得控除の最低保障額が上がりました。ところが、2026年11月までの毎月の源泉徴収は、これまでの税額表のままです。引き上げ後の数字を使うのは、12月の年末調整の計算から。つまり、払いすぎた分は、12月にまとめて精算されます。
この記事では、令和8年分の年末調整について、変更点を3つの数字で整理します。そのうえで、12月に会社のお金がどう動くかを仮の数字で見ます。2026年10月時点の、国税庁「令和8年分 年末調整のしかた」にもとづいています。
野村證券のリテール営業で全国約7,000名中1位を4度。いまは代理店開拓で中小企業の販路をつくる会社「コミッターズ」を経営しています。川口です。
令和8年分の年末調整、先に結論
- まず、令和8年度の税制改正は成立していて、国税庁が令和8年分の年末調整の案内を出しています。案の段階の話ではありません。
- 変わったのは、基礎控除、給与所得控除の最低保障額、扶養親族などの所得要件です。なお、令和8年分の所得税から適用されます。
- 一方、2026年11月までの給与の源泉徴収は、変わりません。引き上げ後の数字を使うのは、12月の年末調整です。
- また、令和9年1月1日以後に支払う給与からは、新しい源泉徴収税額表を使います。
- さらに、社長1人の会社でも、役員報酬から毎月源泉徴収をして、扶養控除等申告書を出しているなら、年末調整の対象です。
令和8年分の年末調整で変わった3つの数字
まず、小さな会社に関係が大きいものだけを選びました。
- 1基礎控除:給与だけの人は、収入665万5,556円以下が目安で、令和8・9年分は104万円です。改正前は、収入に応じて58万円から95万円まで分かれていました
- 2給与所得控除の最低保障額:65万円から74万円に上がります(令和8・9年分)。関係するのは収入220万円以下の人で、220万円を超える人の給与所得控除は変わりません
- 3扶養親族や配偶者の所得要件:合計所得金額62万円以下(改正前は58万円以下)です。給与だけなら、収入136万円以下(改正前は123万円以下)です
たとえば、合計所得金額が276万円の従業員がいるとします(仮の数字です)。基礎控除は、改正前の88万円から104万円へ、16万円増えます。そのため、課税される所得が減ります。ただし、税金がいくら減るかは、その人の税率と、ほかの控除しだいです。
ここまでは所得税の話です。一方、住民税や、社会保険の扶養は別の基準で動きます。「年収136万円までは扶養のまま」と従業員に伝えてしまうと、話がずれます。
令和8年分の年末調整で、12月に会社のお金はこう動く
預かりすぎた税額を返す流れ
毎月の源泉徴収は、改正前の税額表で計算してきました。そして12月の年末調整で、引き上げ後の控除を使って1年分の税額を計算し直し、1年間に預かった税額の合計と比べます。預かりすぎていれば、その差額(過納額)を従業員に返します。
ちなみに、返すお金は、最終的に会社の負担にはなりません。先に従業員へ返して、あとで国に納める源泉所得税から差し引く順番です。
仮の例です。従業員4人の会社が、納期の特例(半年分をまとめて納める特例)を使っているとします。
- 7月から12月までに預かった源泉所得税の合計:12万円(仮)
- 年末調整で出た払いすぎの合計:5万円(仮)
- 12月の給与にあわせて従業員に返す額:5万円
- 国に納める額:12万円から5万円を引いた7万円
なお、納期の特例を使っていない会社は、12月分の納付から差し引きます。納期限は翌年1月10日ですが、2027年の1月10日は日曜日で、翌11日は成人の日です。したがって、休日明けの1月12日(火)が期限になります。一方、納期の特例を使っている会社は、1月20日(水)です。
年末調整の進め方は5つの順番
年末調整の進め方は、次の順番です。
- 1申告書を配って、会社で期限を決めて集める(12月の給与計算に間に合う日がめやすです)
- 2申告書の内容を確認して、各種の控除額を確かめる
- 312月の給与の支払いに合わせて、1年分の税額を計算する
- 4預かりすぎは従業員に返す。預かり不足は、12月の給与から預かる
- 5納付書に精算の金額を書いて、国に納める
ただし、最後の納付書は、返した額が大きくて納める税額が0円になっても、提出が必要です。また、12月に返しきれない分は、翌月以降に納める源泉所得税から順番に差し引いて返します。
年末調整の流れと提出する書類を整理した記事として、「令和8年分の年末調整、流れと必要書類を整理」があります。申告書の受け取りから精算、源泉徴収票の交付までの手順と、控除ごとの申告書と添付する証明書類が表で並べられています。
出典:控除さがし探偵団「令和8年分の年末調整、流れと必要書類を整理」
令和8年分の年末調整で、見落としやすい例外
- 新しく扶養の要件を満たす親族がいる場合:令和8年12月1日以後に支払う給与から、新しい所得要件が使われます。たとえば、昨年まで収入130万円で対象外だった配偶者(仮の例)は、収入136万円以下という要件を満たします。新たに要件を満たした親族について控除を受けるには、従業員から扶養控除等(異動)申告書などを出してもらいます。ほかの条件もあるので、従業員本人の所得なども確認が必要です
- 年末調整の対象外の人:年間の給与の総額が2,000万円を超える人や、扶養控除等申告書を出していない人は、対象になりません。年の途中で退職した人も、一部の場合を除いて対象外です。本人が確定申告をします
- 年末調整のあとに気づいた場合:扶養親族の異動や、保険料の支払いなどは、源泉徴収票を渡す翌年1月末までなら、年末調整をやり直せます
- 令和9年分の準備:令和9年1月1日以後に支払う給与からは、新しい源泉徴収税額表を使います。従業員には、令和9年分の扶養控除等(異動)申告書を、最初の給与の支払日の前日までに出してもらいます。今回の配布のときに一緒に渡すと、手間が1回で済みます
防衛特別所得税のはじまり
令和9年からは、防衛特別所得税が始まり、復興特別所得税の税率が1.1%に下がります。合計の税率は2.1%のままで、源泉徴収税額の計算方法は変わりません。そのため、給与ソフトの更新だけ、確認しておきましょう。
社長1人の会社と、預かり不足の人
実は、社長1人の会社でも、年末調整はあります。役員報酬から毎月源泉徴収をしていて、扶養控除等申告書を会社に出していれば、社長本人も対象です。つまり、自分で自分の年末調整をする形になります。役員報酬の決め方は、こちらの記事にあります。
社長の給料、気分で上げると損をする。役員報酬は「年1回」のイベントです
社長1人の会社の社会保険の考え方は、こちらの記事にまとめています。
社長1人の会社でも、社会保険は入る?「法人」だと答えが決まっています
反対に、預かり不足が出る人もいます。その場合は、12月の給与から不足分を預かります。ただし、預かると12月の手取りが、1月から前月までの手取りの平均の70%未満になってしまう人は、税務署の承認を受けて、不足分を翌年1月と2月に分けて預かる方法があります。
令和8年分の年末調整、今日からの最初の一歩
配る書類は、3種類です。令和9年分の扶養控除等(異動)申告書、令和8年分の基礎控除申告書など(1枚にまとまった様式です)、保険料控除申告書。まず、配る日を、今週の予定に入れてください。
さらに、配る日に、12月に入る予定の売上の一覧を1枚つくります。特に12月は、従業員への払い戻し、源泉所得税の納付、年末年始の支払いが重なります。たとえば、取引先ごとの入金予定日を、11月のうちに確認しておくと、営業の年内の追い込みにも役立ちます。個別の判断が必要な場合は、顧問税理士や社会保険労務士にご相談ください。
ほかのコラムも、あわせてどうぞ
お金の学び(ウハウハ高等学校):副業で確定申告するなら、ふるさと納税のワンストップ特例はどうなる?
営業・販路のコラム:コミッターズ コラム
筆者の記事:川口忠大のnote
蓄電池を知る(ENERGY BANK):系統用蓄電池の充電コストを読む|調達契約と託送料金
導入先を比べる:系統用蓄電池の低圧・高圧比較|法人が費用と接続条件で選ぶ方法
お金の面を読む:系統用蓄電池メーカー比較|法人が製品・導入支援・保守を同じ条件で見る方法
情報サイトのトップ:ENERGY BANK(系統用蓄電池の情報サイト)
運営元:コミッターズ
令和の総合商社では、有形無形問わずに大手商社が行わないマーケティングで貴社の販路を開拓します。本気で販路を拡大したい方には60分間無料で相談に乗らせていただきます。
参考(外部サイト):国税庁、国税庁(2)、国税庁(3)、国税庁(4)、国税庁(5)、国税庁(6)
※一般的な解説です。個別のケースは顧問税理士・社会保険労務士・弁護士などの専門家にご相談ください。
税理士選びで迷ったら、無料の診断から
決算や経費の進め方は、今の税理士との付き合い方で結果が変わります。まずは無料の「税理士・士業マッチング診断」で、顧問の見直しどきかどうかを整理してみてください。
会社の現場の工夫や取り組みは、みんなの企業新聞の記事「スマホだけで商談相手を探す方法」でも紹介しています。あわせてご覧ください。