個人のデザイナーにロゴやチラシを頼んで、請求書が届きました。金額どおりに振り込んでよいのか、迷う社長は多いはずです。デザイナーの源泉徴収は、小さな会社でも避けて通れない手続きです。
じつは、請求額から税金を引いて振り込み、その税金を会社が国に納めるのが、基本の形です。そして、税率と納める日は、国税庁のページで確認できます。
この記事では、小さな会社の目線で、対象になる報酬、税率、振込額の決め方、納付の流れを整理します。なお、国税庁のタックスアンサーは、「令和8年4月1日現在法令等」と書かれたものを読みました。
野村證券のリテール営業で全国約7,000名中1位を4度。いまは代理店開拓で中小企業の販路をつくる会社「コミッターズ」を経営しています。川口です。
デザイナーの源泉徴収、先に結論
まず、要点を並べます。次に、それぞれを順に説明します。
デザインの報酬は、所得税法第204条で、源泉徴収の対象になる報酬として挙げられています。また、税率は、支払金額が100万円以下なら10.21%、100万円を超えると、超えた部分に20.42%です。さらに、納付は、支払った月の翌月10日までです。
一方で、相手が会社(法人)のデザイン会社なら、この源泉徴収は要りません。つまり、まず確かめるのは、相手が個人か法人かです。
デザイナーへの報酬は、どこまで源泉徴収の対象?
では、どんな報酬が対象になるのでしょうか。所得税法第204条には、「原稿、さし絵、作曲、レコード吹込み又はデザインの報酬」と書かれています。居住者に、国内で支払うものが対象です。
ポスターのイラストは「デザインの報酬」です
国税庁の質疑応答事例に、分かりやすい例があります。広告用のポスターを作るために、コピー、イラスト、レタリングを、それぞれ別の人に外注した場合です。
国税庁の答えは、3つとも源泉徴収が要る、です。イラストは、ポスターの重要な要素である構図やイラストにあたるため、デザインの報酬になります。レタリングも、デザインの報酬です。コピーは、出版物などへの掲載を目的としたものなら、原稿の報酬です。
なお、筆者が読んだ国税庁のページには、ロゴやホームページ制作の例は出てきませんでした。そのため、迷う仕事は、税務署や顧問税理士に確認してください。
別のサイト(おまかせ係長)のコラム「ホームページの依頼先、制作会社・個人・自作はどれを選ぶ?」では、制作会社や個人に頼む場合について、「どこまでが相手の仕事かを、依頼前にはっきりさせておきましょう」と書かれています。
出典:おまかせ係長「ホームページの依頼先、制作会社・個人・自作はどれを選ぶ?」
実際、依頼の範囲が決まっていれば、どの部分が源泉徴収の対象かも見えやすくなります。そこで、発注の前に、仕事の中身を文字にしておきます。
法人のデザイン会社なら、源泉徴収は要りません
国税庁のページでは、内国法人に払う報酬で源泉徴収が必要なのは、馬主である法人に払う競馬の賞金だけです。つまり、デザイン会社が法人なら、デザイン料に源泉徴収は要りません。
個人か法人かの見分け方は、こちらの記事に書いています。
デザイナーに5万円払うとき、源泉徴収は必要?「個人は必要、法人は不要」が基本です
名目を変えても、中身が同じなら対象です
「謝礼」「取材費」「車代」などの名目で払っても、中身が報酬と同じなら、源泉徴収の対象になります。また、お金ではなく、物で払う場合も、報酬に含まれます。
交通費や宿泊費は、報酬に含まれます
打ち合わせの交通費や、撮影の宿泊費も、原則として、報酬に含まれます。ただし、通常必要な範囲の金額を、会社がホテルや旅行会社に直接払った場合は、報酬に含めなくてよいとされています。
そのため、デザイナーに立て替えてもらって、あとで精算する形は、原則どおり含めて考えます。会社が直接手配するほうが、計算は単純です。
デザイナーの源泉徴収の税率と、振込額の決め方
税率は100万円で分かれます
税額の計算は、支払金額で分かれます。国税庁のタックスアンサーには、次のように書かれています。
- 100万円以下:支払金額 × 10.21%
- 100万円を超える:(支払金額 − 100万円)× 20.42% + 102,100円
1円未満の端数は、切り捨てます。たとえば、国税庁の例では、150万円の報酬なら、(150万円 − 100万円)× 20.42% + 102,100円で、204,200円です。
消費税の書き方で、引く額が変わります
次に、請求書に消費税が入っている場合です。報酬に消費税が含まれていると、原則として、消費税を含めた金額が源泉徴収の対象になります。
ただし、請求書で、報酬の額と消費税の額が分けて書かれていれば、報酬の額だけを対象にしてかまいません。つまり、税込の金額にかけると、そのぶん多く引くことになります。
振込額の順番は、次のとおりです。
- 1まず、請求書で、報酬と消費税が分かれているかを見る
- 2次に、分かれていれば報酬の額、分かれていなければ税込の額に、税率をかける
- 3さらに、請求額から、その源泉徴収税額を引く
- 4最後に、引いた残りを、デザイナーに振り込む
なお、国税庁は、インボイス制度が始まったあとも、この取扱いは変わらない、としています。そのため、請求書の書き方は、デザイナーに頼んでおくと安心です。
デザイナーの源泉徴収は、いつ、どう納める?
引いた税金は、会社が預かったままにせず、国に納めます。国税庁によると、期限は、支払った月の翌月10日までです。
方法は、2つあります。1つは、所得税徴収高計算書データをe-Taxで送信して、キャッシュレスで納める方法です。もう1つは、納付書を添えて、金融機関か税務署の窓口で納める方法です。
また、国税庁は、原稿料や講演料などは、納期の特例の対象にならない、としています。そのため、支払った月ごとに、翌月10日が期限になります。
なお、国税庁のページには、令和9年分以後は、所得税、防衛特別所得税および復興特別所得税を源泉徴収する、と書かれています。年をまたぐ支払いは、国税庁の最新の案内で確認してください。
デザイナーの源泉徴収でよくある質問を3つ
「少額でも、源泉徴収は要る?」と聞かれます。答えは、国税庁のページで少額なら免除とされているのは、懸賞応募作品の入選賞金などの、1回5万円以下だけです、です。デザイン料に、その免除は書かれていません。
「請求書に消費税が書いてあります。税込にかけるの?」と聞かれます。答えは、報酬と消費税が分けて書かれていれば、報酬の額だけでよい、です。つまり、分けて書いてもらうだけで、引く額が減ります。
「現金ではなく、物でお礼をしたら?」と聞かれます。答えは、金銭ではなく物でも、報酬に含まれる、です。そのため、名目や渡し方で、源泉徴収の要否は変わりません。
デザイナーの源泉徴収、今日からできる最初の一歩
今日できることは、1つです。いま頼んでいるデザイナーの請求書を、1通だけ開きます。そして、相手が個人か法人か、報酬と消費税が分かれているかを、確かめます。
確かめる点は、次の3つです。
- まず、相手が個人か、法人か
- 次に、仕事の中身が、イラストやレタリングなどのデザインか
- さらに、報酬と消費税が、請求書で分かれているか
この3つが分かれば、税率と振込額は、国税庁の計算式に当てはめるだけです。
営業の道具(チラシ、名刺、提案資料)を外注するときは、見積りの段階で、源泉徴収をした後の振込額も伝えておきます。そうすると、請求書の食い違いが減り、次の依頼もしやすくなります。
税の線引きは、こちらのコーナーで整理しています。
「節税コーナー」の歩き方。節税商品を扱う理由と、「どこまでOKか」の線引き
ほかのコラムも、あわせてどうぞ
お金の学び(ウハウハ高等学校):副業で確定申告するなら、ふるさと納税のワンストップ特例はどうなる?
営業・販路のコラム:コミッターズ コラム
筆者の記事:川口忠大のnote
蓄電池を知る(ENERGY BANK):系統用蓄電池の充電コストを読む|調達契約と託送料金
導入先を比べる:系統用蓄電池の低圧・高圧比較|法人が費用と接続条件で選ぶ方法
お金の面を読む:系統用蓄電池メーカー比較|法人が製品・導入支援・保守を同じ条件で見る方法
情報サイトのトップ:ENERGY BANK(系統用蓄電池の情報サイト)
運営元:コミッターズ
令和の総合商社では、有形無形問わずに大手商社が行わないマーケティングで貴社の販路を開拓します。本気で販路を拡大したい方には60分間無料で相談に乗らせていただきます。
参考(外部サイト):e-Gov法令検索、国税庁、国税庁(2)、国税庁(3)
※一般的な解説です。個別のケースは顧問税理士・社会保険労務士・弁護士などの専門家にご相談ください。
税理士選びで迷ったら、無料の診断から
決算や経費の進め方は、今の税理士との付き合い方で結果が変わります。まずは無料の「税理士・士業マッチング診断」で、顧問の見直しどきかどうかを整理してみてください。
会社の現場の工夫や取り組みは、みんなの企業新聞の記事「中小企業経営者がマッチングサイトを選ぶときの確認点」でも紹介しています。あわせてご覧ください。